劇場公開日 2019年10月4日

  • 予告編を見る

「頭に深い傷を残す作品」ジョーカー 水陸両用水戸黄門さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0頭に深い傷を残す作品

2019年10月8日
Androidアプリから投稿

これは爪痕と言うよりも傷跡と言いたい。

何が良くて何が悪いのか、誰が正しくて何が間違ってるのか
今作ではその境目をどこに見出すのかという問いを突きつけられた気がする。
劇中でジョーカーは善悪に区別はない、主観次第だと口にしている。
ジョーカーは道徳的に間違った存在であり、神格化する人々もただの暴徒に過ぎない。
これらは決して正しい行為ではないし、それを肯定することには繋がらない。

ただ、それでもどこかで共感し、扇動される人々の気持ちを理解できてしまう自分がいる。
社会から弾き出され、鬱屈した思いを抱えながら、先の見えない道を彷徨う中でジョーカーのような象徴的なアイコンが現れれば…
だからこそラストシーンにおいてジョーカーを讃える人々の輪に自らを重ねてしまった。
決して善ではない。しかしそこに救いを見出している人々がいるとするならば、悪と言い切ることもできなかった。

だが、そう思えるのはアーサーという人間がジョーカーになるまでを徹底して描ききったからだと思う。そこを描くことで受け手に奥底での共鳴を与えてくる。
そこを抜きにしていれば単なる宗教的に映ってしまい共感へはたどり着かない。

作品自体の丁寧な構造がテーマをきちんと浮き彫りにしており、それらを含めて強い衝撃を与えられる作品だった。

nazionale
こまさんのコメント
2019年10月9日

レビュー拝見して、同じ思いでした。
>これらは決して正しい行為ではないし、それを肯定することには繋がらない。ただ、それでもどこかで共感し、扇動される人々の気持ちを理解できてしまう自分がいる。
 本当に丁寧な構成と演出で、唸らされました。

こま