「横顔の向こう側を、伺え知ることは出来ない…」よこがお 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)
横顔の向こう側を、伺え知ることは出来ない…
“ ひまわり ” で知られる画家、
フィンセント・ファン・ゴッホ
とかくゴッホと比較されがちなもうひとりの画家、
パブロ・ピカソ
作風も年代も違うのに
なぜ我々はふたりの天才画家を関連づけて
またどちらかを連想してしまうのか?
それはふたりの歩んだ人生が対照的で
それぞれを側面的に捉えたほうが
よりドラマティックに
ヒトが感じるのに他ならないからでしょう…
ピカソがキャンパス上の平面において
立体的に表現しようとした “ ゲルニカ ” よろしく
女性の知られざる側面を
複数の角度からあぶり出し描いた本作『よこがお』
ピカソの絵画的手法〈キュビズム〉の代わりに
深田 晃司 監督の映画的手法で表現された《ふたつの時間軸》が
主人公・市子を多角的な女性像にかたちづけていく…
そう、彼女自身も知り得なかった側面、よこがおを…
事件の発端を担ってしまった罪悪感
真実を語れなかったうしろめたさ
過剰な反応をみせる報道陣
周囲を取り巻く不信感
信じていた者からの拒絶感
社会からの疎外感
他人に膨らむ猜疑心
それら転じて、基子に収束する復讐心…
その行き着く先に彼女はなにを想うのか?
そして鑑賞者はなにを受けとるのか?
「芸術とは人生の予行演習である
芸術を享受していくことで
少しずつ野蛮で理不尽な現実に
心を慣らしていくのだ」
本作・深田 監督の言葉です。
「芸術とは我々に真理を悟らせてくれる嘘である」
パブロ・ピカソの言葉です。
でも最終的にヒトの行き着くところは
フィンセント・ファン・ゴッホの
「考えれば考えるほど、人を愛すること以上に
芸術的なものはないということに気づく」
…という言葉に、
人生が集約していると、わたしは信じたい!
実年齢以上に若々しく綺麗な筒井真理子さん!
複雑で様々な感情を豊かに体現してらして
女優としての円熟味とスゴ味を感じた!
市川実日子さんの恋愛感情と同等の憧れと
その裏切られたような憎しみが同居する…
今思えばそんな二面性の顔を表していた
そこはかとない演技!
彼女にぜひ助演女優賞をわたしは送りたい!
本作の池松 壮亮さんの役柄が、近作のなかで
素の彼に一番近い印象を受けました。
わたしも見えているであろう表面上の顔を
取り繕うのをやめて、内面を見つめ直し
感性の赴くまま芸術論を語りたい…
まぁ、引かれるでしょうが!(笑)