劇場公開日 2019年9月20日

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「これから楽しみな才能」おいしい家族 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5これから楽しみな才能

2019年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

20代のふくだももこ監督はとても才能豊かな人だと思う。この映画の豊かな詩情とユーモアがそれを証明している。人間関係に対する感性が自由で新しい。父は母が亡くなった後、女装をするようになる。しかし、父にトランスジェンダー願望はない。男性と再婚するが、同性者というわけでもない。異性愛、同性愛、女装癖、トランスジェンダー、どこにも属さないような浮遊感のある存在として父が描かれている。そんな父は役割のとしての妻を引き受けている。妻や主婦という概念をジェンダーでなく役割と捉え直しているのが面白い。LGBTという言葉が定着したが、定着したことによってそこには新しい固定観念が生まれた。クィアは元々性的少数者を指す言葉だが、概念的には「規範から外れる」という意味合いだったのではないか。その意味で本作は新しい規範からもクィア的に立ち振舞い、自由であろうとしているように感じられた。これからが楽しみな監督だ。

杉本穂高