「短編映画から長編映画化の幸福な成功例」おいしい家族 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
短編映画から長編映画化の幸福な成功例
板尾創路が同じ父親役を演じたふくだももこ監督の短編「父の結婚」が、商業映画の製作体制を得て日活配給で実現したのが本作。元の短編も配信サイトで視聴したが、板尾は本作と変わらぬ役作りで中性感を醸し出し、ソニンのふてくされた雰囲気もいい。冨永昌敬監督作で撮影を多数務めた月永雄太が、流れるようなカメラワークで作品の洗練に貢献している。
さて、長編化にあたり大筋は変わらないが、舞台を離島に変更したのが大きなポイント。現実の常識や偏見とはかけ離れた、多様性を優しく受け入れる理想のコミュニティーにぴったりの、美しい海に囲まれたロケーションが活きた。モトーラ世理奈と三河悠冴が演じる若者2人のエピソードも新たに追加され、2人に関わることで主人公の心情の変化に説得力が増した。原作の魅力の肝をきちんと残しつつ、追加した要素でテーマをより効果的に伝える。長編化の理想的な成功例だと感じた。
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