ボーダー 二つの世界のレビュー・感想・評価
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人のセックスを笑うな
予告から凄まじい獣臭を感じてしまったので、シェイプオブウォーターのような感じかな?と思ってはいましたが、ずっと上です。
ギレルモデルトロもコメントを出していますが、テーマ的にギレルモデルトロは完全敗北では?
絵面が酷いので、途中までは趣味の悪い映画だなぁと観ていましたが、後半に巻き返していく展開や、自然を生きる姿、人の生きる世界、そして双方の持つ残虐性など、バランスが良かったと思います。
私はシェイプオブウォーターに不満があったので、本能的に惹かれ合う事や、おとぎ話のその先は?という部分が良く描かれて満足しました。
ただ趣味は悪いです。
タイトルは、観てて思い出した言葉です。
またやった!ジャンル映画の新境地開拓!
「ぼくのエリ 200歳の少女」の限定再上映に続けて見ました。
まずは映像の美しさだ!
「ぼくのエリ」は辺り一面の雪景色がとても印象に残っているが、
本作「ボーダー二つの世界」では、森林の緑!緑!緑!の美しさがとても印象に残った。
また、ところどころで差し込まれる停泊中のフェリーの映像。主人公の勤務先だが、その情景はまるで主人公の船出をずっと待っているような演出でとても好きだ。
そしてジャンル映画としての新境地開拓!
伝説上の存在であるトロールの語り継がれている特徴「特徴的な鼻と嗅覚」、「人間の家に忍び込み、子を取り替える」などはキチンと抑えつつ、うまく人間の日常に溶け込せている。(「ぼくのエリ」でもヴァンパイアの特徴はしっかり抑えつつ、芸術的であり文学的でもあり、リアリティをももった演出になっていて、ジャンル映画としてのヴァンパイア映画において革命的だった。)
ボーダー(境界線)というテーマがもたらす文学性!
主人公は性別や人というあらゆる境界を越えていく。
人間の価値観をもったトロールが、人間の価値観とトロールの価値観の境界線に立った時、観ている側のこちら側の価値観まで非常に揺さぶられる。
正しいこと、悪いこと、気持ちの良いこと、気持ちの悪いこと、その境界線を引いたのは誰なのか?
なんの疑いもなく人間の文明社会に生きている私にとって、この作品が突き詰めるテーマなど考えたこともない視点で正直驚いた。自分が今まで信じてきたものは果たして本当に信じられるものなのか。
トロールに対しては(当たり前だが)人間の価値観が一切通用しない。トロールと人間に境界に立った時、どちらが正しくてどちらが悪いのか判断することなど不可能なのだ。ラストで主人公が人間側に立ち、ヴォーレを倒す展開にならなかったことが素晴らしい。
こんなことを想像できてしまう作者の視点はとても貴重である。
そして、その映像化作品を妥協せず無修正版のまま配給した日本の映画業界は「ぼくのエリ」の時より少し前進したんじゃないかと嬉しく思っている!
*「ぼくのエリ」では作品の非常に重要なシーンでボカシを入れて配給されてしまい、あらゆるところから大ブーイングを浴びていたが、本作ではリベンジ果たしましたね笑
境界 - 避けられない痛みと御伽話と
ミステリー、ファンタジー、ホラー、サスペンス、全てがジャンル映画の枠を超えているように思えた。『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』にみた新たな北欧映画の境地がこの映画にも。北欧ファンタジーノワール(サスペンス・ホラー)とでも表現したら良いのか... トロル(北欧の伝承に登場する森の妖精)の寓話と現実の世界と(或いは妖精と人と、善と悪と)の「境界」を物語として描き、その美しい映像の中にある「避けられない痛み」が波のように押し寄せて来る。正直、かなり衝撃を受けた。劇中で象徴として現れる「雷」が鳴り始めた時、トロルと同じように観客もゾクッとしてしまったのではないかと思う。主人公ティーナがすべての異形なモノ、価値、差別、倫理の境界(ボーダー)を越える時、胸の奥がツンと痛んだ。
Hiisit = an unfertilized egg
この作品は、自分が何者かを知らずに育ったトロールと呼ばれる一族のある女性の物語で、大人向けのファンタジーともfairy taleとも言われている映画で、トーベ・マリカ・ヤンソンの描くムーミントロールは、設定や内容の受けとめ方が異なる。
冒頭で若者が税関で足止めを食い挙句には、彼女に投げかける言葉.....。
Ugly bitch.
I can't stand that kind.
話が進むにつれて、スウェーデンの自然と彼女の風貌がなぜか溶け込むようで、動物たちとの触れあうさまを観ていると、その姿かたちを超えて、彼女の純粋なこころが美しくさえも感じてしまう。
しかしながら、その反対に人間という生き物の醜さがさらけ出されている。
途中、同じトロールのヴォアが出てきてからは、テイストが変わり、生々しく、凄惨な部分も出てくる。
Who am I ?
You're a troll......Like me.
............
You're crazy.
スウェーデン映画はSami Blood (2016)以来久しぶりとなっているが、この映画もある意味、社会福祉の成熟した北欧の国でまさかの少数派民族を差別していた歴史があったことを思い出させるものとなっている。確か、ドラゴンタツーの女も生産国の一つにスウェーデンもあったか?
この映画を通じて若干、ギミックの稚拙な部分も散見するが、逆にどうやってこのシーンを撮ったのかわからないところもあり、個人的には、不思議というか主人公のティナ役のエバ・メランデルの女優魂が、垣間見ることが出来る。ラストのシーンはどうやって撮ったのか謎と言えて、知りたい気持ちが強く感じる自分がいる。
全体を通して、映像は青味がかかり、薄暗く、重くのしかかるように描かれているが、ティナの純粋な心根に触れると、人のこころの醜さは改めて外見を超えていると再確認ができる。
カナダの新聞紙Toronto Starの記者がこのように言っている。「我々が、いつも持っている物差しが、それにそぐわない人々に対してどのように接しているか潜在意識のメッセージとしてそれが我々を悩ますものとなっている。」この人の言うところの意味はあながち間違ってはいない気がする。
単純に良い映画、悪い映画と片付けられないものとなっているのかもしれない。
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