ボーダー 二つの世界のレビュー・感想・評価
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私は心の匂いを嗅ぎ分ける!
いや~正直どんな映画なのかが全く想像ができなかったのですが、予告みて一瞬で鑑賞してみたいという気持ちになりました。
謎々…の物語です。人とは違った容姿の税関職員ティーナの正体は?彼女はなぜ匂いで人間を嗅ぎ分けれるのか?突如現れた彼女と同じ容姿の奇妙な旅行客のボーレの正体は?そんな謎ばかりの前半でしたが、二人が会った瞬間に惹かれあって関係性を深めていくにつれ、謎は中盤過ぎくらいでようやく明かされます。
ですが、正体をしった時点では、「あ~、え!?そうきたのか!」というのが正直な感想でした。全く予想は出来ませんでしたが、個人的に二人の正体が知った瞬間は期待外れの感情も湧き出し複雑な気分でした。
しかし、本作は正体が分かってからの展開が面白く、ティーナの葛藤や行動は興味深い展開でもありました。恋愛物っぽい要素も含むのですが、決して恋愛で簡単には語れない、ティーナの複雑で純粋な心情が描かれています。
本作はラスト直前で画面が暗くなるシーンがあります。てっきりそこで映画が終わりエンドロールと思いましたが、続きがありました。いったいここから何を描くのかと思ったら…。観終わった後の感情は表現できないが正しいかもしれません。凹むとか嫌悪感という感情でもないのです。ただ一番に思ったの何か観てはいけないものを観てしまったという感情が近しいのかもしれません。
それは何か、「グロテスクな美しさ」という相反する言葉が当てはまっているかもしれません。これは容姿の意味だけでなく心情的な意味でも当てはまる映画でした。想像できない世界観を体験した映画です。なんだか映画の新しい世界観や深さを改めて知ることができた作品に出会えた気持ちになりました。
寓話でもアナロジーでもない、ファンタジーの延長線として見るべき
ギレルモ・デル・トロが絶賛しているように、これはファンタジー世界の存在が現在にも存在したら、というifを描いた作品。
色々な仕掛けからルッキズム、LGBTへの差別、マイノリティーへの迫害、自然破壊などのテーマに結びつけたくなるが、気を付けなければいけないのはそもそもの舞台がファンタジーなのだからそれを基に現世でのひずみをあれこれ言うのは軸が外れている、ということ。もう少し言葉を足すなら、そういう話の展開をしたくなるように、「炎上」しやすい設定をちりばめている作品なのだから、衒学的にそれに踊らされてはいけない。
トロルという存在は北欧に伝わる怪異であるが(ムーミンもトロルだね)、そもそもは旅人を襲う異形の山賊だった。彼らは垢にまみれ、毛皮で身を囲い、山や橋で人を襲うので、人間とは違うそういう種族がいると思われていたが、実のところは単なるアウトローだった。
しかし、そうではない世界、本当にトロルが存在した世界の延長線上にこの映画の舞台は存在する。
トロルにとって人間は別種なわけだから、ネコの仔が生まれたらさっさと里子に出すように、人間は彼らにとって倫理の埒外に存在する。なので児童ポルノに加担してもそこに呵責は無い。
主人公は人間世界で育ったので人間世界のルールが染みついているが、ファンタジーの世界なのでそれすらも「君は人間界で育ったからね」と一蹴される。
そういうifの世界の話。リアリティを持たせるために現世の歪を倍増して意図的にちりばめているけど、それは作り手の意図だということを意識すべき。
(進撃の巨人を読んで現代社会の不均衡を嘆くのと同じこと)
そんなファンタジー作品として、リアリティあるなあと楽しく観ました。カタルシスは無かったけど、トロルがまだ存在して世代がつながったという表現があったので、監督はそれを以てカタルシスとしたかったのだろうなあ。
共存は難しい
結論から言うと、良くあるといえば良くある話かなと思った。もののけ姫的な感じ?
森の中の動物や傘や湖の描写は主人公の純粋さ、特異な体質を受け入れている寛容さ、醜い容姿を誰も咎めない自分だけの世界という感じがしてよかった。気持ちいいだろうな。
周りとは異質な存在として見られていても人間社会の中でそれなりに人間として生きてきたティーナは、自分の正体がトロルだとわかった時安堵し、そして自分と同種のヴォーレが自分を受け入れてくれたことに初めは歓喜したんだろう。
誰だって自分が何者か教えてくれて、受け入れてくれる人が現れたらそりゃ嬉しいわ。
でもやっぱりトロルとして生きてきたヴォーレと、人間として生きてきたティーナには価値観に大きな溝があった。ティーナは人間のことを恨んではいなかったし、自分らしく生きて行きたかっただけだと思う。
いくらトロルが迫害された種別だとしても、育ての父親にアタリがキツすぎない?とは思った。そのまま病院にいたらティーナはおそらく殺されてただろうし、奪ったのではなくて育てることを申し出たから今あなた生きてるでしょ?思春期か?と思ってしまった。
虫を食べたり、生々しい描写があったり度々顔を顰めながら見ていたけど、これがちょっと風変わりな美女設定だったら、話に重みがなかっただろうと思う。演者さんすげえ〜に尽きる。
ティーナには争わず、森の中でひっそりと種を育んでほしい。
人間か否か
スウェーデンの税関職員ティーナは何らかの罪に関する事柄を匂いとして嗅ぎ取るという特殊能力を持っているが、と同時に自分の容姿にコンプレックスも抱いていた。
いつものように税関職員として違法物所持を検挙するが、それが児童ポルノだったことからルート摘発のために捜査に協力をする。
そんな折、いつもの税関にて自分と非常に容姿の近い怪しげな男ヴォーレから何かを嗅ぎ取るが、成り行きで親しくなって行くうちにヴォーレに恋心を抱き、さらに自分のルーツを聞かされることでティーナの運命は翻弄されていく。
前半の動物と触れ合うティーナを見ていると、もっと牧歌的なストーリーなのかと思ったが、ヴォーレ登場後の展開がまさかのクライムサスペンスとは恐れ入った。
もちろん動物との触れ合いもある意味伏線なんだが、ティーナやヴォーレがまさに人間ではない種族であり、ティーナ自身の生態や出生の謎までがサブストーリーの展開と上手く重なることでより見応えのある作りになっていると思う。
もちろん予算的な都合や原作との兼ね合いもあるだろうが、後半からラストまでをより壮大なホラーやファンタジーなどの感覚で描かず、あくまでティーナとヴォーレの運命的な出会いと別れ、そして彼女たちの近辺で起こった幼児誘拐事件上のストーリーで描いている点がすごく面白くて好印象だった。
クライムサスペンス、ファンタジーそして私たちが生きる世界
北欧の奥深さというか、負の遺産を感じる作品。
最初は、孤独に生きる女性が人情に触れる話かいや凄腕検査官みたいだからクライムサスペンスか、と思いながら、森の生き物達が寄り添い集まってくる、北欧ファンタジーか、となり、なんとトロルの物語に。
いかにもティーナを利用してるとしか思えないようなローランドにはなぜ羞恥心を感知して鼻をピクピクさせないのか、など疑問に思いながらも、とにかくファンタジーとしてトロルの2人の話が進み人間が絡むと犯罪が存在する。空港検査官として、ここでは酒やなんかは大目に見てあげるけど日本より厳しくしっかり取締まりの児童ポルノ問題が重く絡んでくるあたりはさすがヨーロッパだ。近所の夫婦の分娩のため夜車を走らせるティーナ、それがトロルの未受精児にすり替えられて、最後は自分の子どもであろうトロルベビー、という小さな命という伏線があり、犯罪という伏線があり、なんとなく福祉国家でおおらかなイメージが日本にはあるスウェーデンで、サーミの血で紹介されたように、トロルにもマイノリティとしての検査研究検体それに起因する死亡という悲惨な歴史、マイノリティいじめ、差別、そして優生思想という人間社会にどこにもいつでもある魔物があるのだ。野生動物たち、美しい苔むす森、生きた昆虫を食べるトロル、。と様々な角度で、愛と生命について多角的に考えさせられた。特殊メイクがすごい。素朴な暮らしぶりも良くて善良そうな人達が個人レベルでは児童ポルノなどの卑劣な犯罪、社会単位ではマイノリティ差別迫害をしていて、かたや、圧倒的な自然の神秘に畏れとトロルの存在も感じる。ティーナが、自分がやっぱり妖精だった、違和感感じていた人間じゃなかったということに本能的に喜びを純粋に感じるあたりがとてもよかった。
予定違い
まさかのトロル!
容姿で色々抱えた主人公かと思っていたら
人間ではなくトロルだったんですね!!
初めてあの人が前から歩いてきた時から
2人とも顔そっくりじゃん、同じじゃんなってたら
同じトロルでした。
そしてまさかの、女性かと思ったら男性だし
男性かと思ったら女性だし、逆でした!!
だからずっと同棲してる人からの欲求を拒んでいて
わたしは子供ができないと言っていたんですね。
2人が出会えて幸せになってると思ったけど
人間への復讐心から
定期的に生まれる自分の子供を
チェンジリングして、人間の子供打ってた犯人でした。
だからにおいがしていたのか、どうなのか。
けど主人公はトロルだけど
人間の心を持ってましたね。
最後はあの赤ちゃんをさずかって
どんな日々を過ごすんだろう。
枠が変わると視点が変わる
主人公が何者か分かった後と前で物語の見え方がかわる。
前半の何か分からない不快感を伴うシーンが理由を知った時点からは不思議と自然な姿に見えてくる。
この人(いや、この生物)はこれが自然な姿で1番良い状態なんだと人間という枠が外されたとたんに思えてしまった…
自分の潜在的な差別意識をこうも具体化させられるなんてと強い力を感じざるを得ない作品でした。
先入観とはこうも私たちの受取る感性や印象に作用しているのかと実感すると偏見を拭う事がいかに大変な事か考えざるをえない。
映画って綺麗に見栄え良く作られてるものが大半で、それを当たり前に期待して見に行く人が殆どだと思うので、お勧めするのに人を選ぶ〜見終わった後に独自の美しさを感じさせる良作だと思うけれど見てもらわないと説明できない。
人によっては嫌悪感だけで終わってしまう可能性を考えてしまう。この感覚も差別が消えない一因なんだろうな。
ああ〜でも、自然や異界の近さを感じられて思いの他楽しみました!
今一歩…
結局何を訴えたかったのか?自分たちと異なる人々=マイノリティの人たち、映画ではトロール、を差別してはならない、互いを認めるべきと言いたかったのだろうか。ヴォーレという、ようやくわかり合える、愛する仲間に出会えたティナだが、完全に裏切られ、本当の両親も精神病院に収容され、そこの守衛に育てられた真実を知り、失意でいるのつかの間、ヴォーレから子供が届くと母親の顔に変わり終わる、めでたしなのか。確かに化け物の様な顔なので、辛い人生を送ってきたことは容易に想像できるが、その描写がないため、育ての親へ辛く当たることや、彼女自身に感情移入できなかった。ヴォーレも人間に仕打ちされても感じないと言いながら、結局は子供を拐うなど復讐していることから人間への憎悪を感じるが、唐突感があった。彼らが不当な扱いを受けてきたことがもっとわかりやすく描いていれば、もっと訴えかけるものがあったと思う。虫食うシーンはグロい。
北欧らしい作品でした。
昆虫食は日本にもあるので分かるのですが、蚯蚓は…。
栄養価は高いみたいですが、下処理をしないと多分、臭いもきつく美味しくないと思うんですが、彼らにとっては違うんでしょうか?
それは兎も角、不可思議なお話ですね。
彼らの正体については最初から隠すつもりが無かったらしく、何となく想像がついてしまったのですが、その後の展開は予想出来なかったです。
終わり方は短編小説が元になっているだけあって、視聴者にその後の想像を任せるような、希望が滲むものなのが良いですね。
ただ、育ての親にたいして冷淡過ぎるのが気になりました。
僕の推測に過ぎないですが、お義父さんが引き取ってくれなかったら、ティナもどうなっていたか分からないですし、非難するのはどうかと思ってしまったのですが…。
お義父さん、ちょっと可哀想。
原作は未読なのですが、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト、人間界に存在するかもしれない異形の存在の悲しみや喜び、救いを巧く表現される作家さんですね。
機会があったら、リンドクヴィストさんの作品も読んでみようと思います。
誰も傷つけたくない。そう思うのは人間みたい?
映画「ボーダー 二つの世界」(アリ・アッバシ監督)から。
久しぶりに、衝撃的な作品と出会った。
個人的な好き嫌い・・は抜きにして、インパクトが強く、
自分の固定観念を完璧に崩された、と言ってもいい。
何度も何度も「人間とは?」を考えさせられたし、
この作品を説明する言葉が見つからない。
「染色体異常」などに関する映画も、何作か観たが、
これほどの頭の中を掻きまわされた作品も珍しい。(汗)
「border」は「縁(ふち)・境目・国境」という意味だけど、
いろいろな角度から「境」を見る必要性を教わった。
「人間とみなされる人」と「人間としてみなされない人」の境は、
予想以上にハードルが高くて超えることは難しい。
彼らから見た人間の定義は、手厳しいことが台詞でもわかるし、
虐げられたその復讐に燃えているのもわかる。
「人(人間)と違うのは優れているってことだ」
「人間は我々を怖がる」「人間みたいに弱くない」
「人間は地球上の全てを自分のために使う寄生動物だ。
自らの子供すら利用する、すべての人間は存在自体が害毒だ」
「我々を苦しめた人間に復讐を」
「人間ならイカレてるが幸い僕はそうじゃない」など。
ただ救いだったのは、ラストにこんな会話が待っていた。
「人間でありたいのか?」
「誰も傷つけたくない。そう思うのは人間みたい?」
ものすごい映画を見てしまった気がする。
深い映画
なんか色々考えさせられる映画でもあり
不思議な感覚になる映画でもあり
引きこまれる映画でもあった。
もちろん特殊メイクだけど
実際にいそうで自分がもし彼らのような姿だったらってぞっとしてしまうくらい
リアルだった。
どんな言葉を選んでも、正しく感想を伝えられない気がします。
「北欧」というキーワードに引っ張られて鑑賞しました。
タイトルにも書いたのですが、
この作品をどう言い表せるのか非常に悩んでおります。 うーん。。
明るい内容でしたか?
いいえ。
楽しかったですか?
いいえ。
人・風景など、綺麗なものが見れましたか?
いいえ。
北欧神話の世界でも期待しましたか?
…はい。
…うーん。
なんかダメな反応しかでません(汗)。
この作品の意味・意義を見つけ出すには、まだまだ時間がかかりそうです。
すいません。 一度沈没します。
☆
トロル
「となりのト・ロ・ル♪ ト・ロー・ル♪」 …じゃなくて
ドラクエのモンスターではないですか。懐かしい。
北欧が原産地だと初めて知りました。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
二つの世界
現代社会とフォークロア、二つの世界が思った以上に重なっていてドキドキする。
美醜、性差、善悪、自分の価値観が疑わしくなってくる。
思えば主人公の容姿はムーミンに似ているし、住まいの森はムーミン谷に見えてくる。
仲間より正義を選択するところはデビルマンを思い出した。
ファンタジーとリアルのボーダー
友人のレビューに背を押され、隣の県まで行って、最終日に鑑賞。
パーフェクトな描かれ方で、内容のことだけに思いをはせられる、稀有な映画でした。
というのも、
ここのところ、リアルでは映画として成立しないので、設定にちょっと無理をしたため、これ、あくまでファンタジーだよ、となっている映画を多く観ていて。
しかも、綺麗なシーンを撮るため、「細かいことは気にしないでね、だってファンタジーなんだもん」みたいなの、ばっかりだなぁ、と思っていたところ。
北の世界ですから、地味な色合い、暗いトーンの会話。
犬の吠える声もうるさくて、なんとか短い会話を逃さないようにしますが、全くこの短い会話で、状況がちゃんと表れている。いるだろうな、あんな同居人。北欧の男性あるある。そう、以外と綺麗なんだよね、金髪の長髪で、髭の。自分の趣味に走る自由人。結構マメな人。ww
そこからの展開は、無駄なくたるまず、ちゃんと進んでいきます。
こういう映画は、観る人の見る力が、求められるよね。
で。
二人のあれこれのシーンが、気持ち悪い、という人もいるようですが、私は、かえって、そちら側にどんどん引き込まれて、それこそが普通に美しく思えました。
とにかく、美の基準も、性別の概念も、人間という枠も、いろんなことが、ひっくり返されていきます。
少数民族の迫害は、今でも、実はあちこちで起こっていて、これもリアル。
彼らのその特性が、児童ポルノの摘発に生かされる、というのも、ストーリーとして実にイマドキ。しかし、これが、実は別のトロールの特性、ここに及ぶとは! (トロールは、子どもを取り替える、と北欧の昔話で有名 ※「取り替え子」でググってみてください)
(日本でいうと、河童かなぁ、でも、河童が一族として生存しているようなものではないし、ちょっと違うなぁ。。。と思ってみたり)
パパに愛されようと、おいしくない食事でも、人間的な生活にも、順応しようと努力してきた彼女だったのだけど、色々なことが起きて、事実を知り、やはり、自分のアイディンティティに揺らいで、ひとりになって、どんどん荒廃した家になって、服装も動物的になって・・・ あぁ、もう仕事はしてないのなかぁ、なんて、その才能を惜しんでしまいますが、仕方ないのかなぁ、なんて思ったり。
そして、予想どおり、一族としての子どもが授かって、これから、という終わりなんですが、頼むから、そっち側に完全に行ってしまわないでほしいな、というのが私の気持ち。
復讐という理由で、特定の子どもを不幸にするのはやめようよ。きっとしないよね。彼に謝りながらも、ちゃんと連行に協力したわけだし。コミュニティに行っても、彼女なりの良心を持ち続けてほしい。だって、ある意味、取り替えは、本人にも起こっていたのだから。
なんて、内容の感想をかけるのも、この映画が本当に、リアリティを持っているから。
なかなか、こういう映画はないと思います。
CGに頼らない生粋のダークファンタジー。
事前情報ゼロで見ましたが、先読みが全くできずにゾクゾクした。
あーーでも、これ、フィンランドからクレーム来ると思うんですよね。「辺境地扱いすんな!」って。トロルが裸でキャッキャ走り回ってても違和感がない「イメージ」としては、日本の俺らから見ればスウェーデンもフィンランドも大差無いけど。スウェーデンで良いじゃん、デンマークでも変わらんじゃん、さして、多分。
不穏な雰囲気でダークな幕開け。容姿の醜さに反し、結構可愛いとこもあったりするティーナ。と言うか、名前、無茶苦茶可愛らしいやん。彼女の不遇と不幸によって色付けされた「暗さ」に、少しづつ「不穏」が重ね塗りされて行き、ダーク振りが更に暗くなります。
謎に包まれていたヴォーレと関係を結んだ前後に、そこはかとなく漂う不思議な「暗い幸福感」で上向き気分も、冷蔵庫を開けた瞬間から再び暗転。と言うか奈落の底への垂直落下開始。だがだが。「おそらく我が子」を抱いたティーナの心や、さていかに。このラストが衝撃的過ぎて。いや、マジでやばいくらい。
私達が嫌悪するモノを小出しにし、遡上に並べながら、徐々にダークサイドへ導いて行く物語にはゾクゾクしか無いです。CG全盛の時代、画とビビらせる演出に走りがちになるダークファンタジーに溢れる映画界。北欧ものって、ミステリー小説もそうだけど、斬新。いや、エグイ。
作り手の狙い通り、嫌悪感でゲロゲロになりながら、ダークな世界に引きずり込まれちゃったのよ、ランラン。つか、トロルの特殊メイク、やば過ぎだって。
ゾクゾクした。ものすごく。
とてもよかった
主人公がひどい顔だけど特殊能力の持ち主で、染色体異常と言われて育ったのだが実はそういう種族で、実は里子だった。キャラが立っていて、一緒に暮らすクズみたいな男もいい。もう一人の同じ種族の男みたいな女性器を持った人が、実は幼児ポルノ犯罪にかかわっていたのは、ドラマとしてちょっと安い。
老人ホームで暮らすお父さんが「とげとげしい話し方はやめろ」と拒絶するところは共感する。「普通に話すんだったらいいけど」と言っているところがよかった。
途中までいろいろ予想していたが
正体がわかってからの穏やかに進むと思いきや鬼畜展開、そして主人公の選択とこちらを振り回すストーリー。
「精霊」「天使」のようなもっと観念的な存在かと思ったらあまりに生々しく、むしろ生物としてその生態に興味が湧く。両性具有で男性/女性の度合いが変化する感じか。さらに取り換えっ子であると。罪の匂いを嗅ぎ分けるというか、罪悪感からの緊張や高揚による発汗の匂いを検知しているのかな。主食は…虫?
特殊メイクはすごかった。役者さんも大変だったろうに。
股から何か出てきてますよ!
ボーダーの意味は、税関職員として働く女性ティーナがスウェーデンの国境線上にいることや、人間とトロルという違った生物の境界線上にいること、さらに彼らは半陰陽のようであるためトランスジェンダー的な境界にも立っていることなのでしょう。
違法な所持品を素早く嗅ぎ分ける特殊能力を持つティーナ。醜い顔であっても、この技術は重宝されているし、職場のみんなや警察とも仲良し。しかも普通に結婚していて、ブリーダーにハマってる旦那も普通に接している。ある日、昆虫採集が趣味であるヴォレと出会い、彼が身体検査を受けたときにチ〇コがないと同僚から伝えられた。臭覚が鋭すぎるために、どこか仲間であるような気がしていたティーナだったが・・・
ドラクエに登場するモンスターのイメージが一番強かったのですが、『ロード・オブ・ザ・リング』に登場するトロルによって怖いイメージしか残っていません。その後でムーミンがトロールだと知り、トトロだってトロールだという噂もあるため、徐々に可愛いトロール族もいるんだな・・・と妙に一人合点しちゃったものです。
二人とも幼児虐待とか幼児ポルノに対する嫌悪感を持ってることがとても良かった。トロルの心は美しいんです。尻尾は勝手に切っちゃったけど、育てた父ちゃんも心が広いし、旦那だって浮気はしてるみたいけど、悪いことはしていない。ただ、悪人だけは許せないという正義感からつい殺人も・・・。二人の将来はどうなるんだ?などと、終盤にはモヤモヤしてしまいました。
造形は鼻がたかくて額とくっついている感じで、狼男が変身する途中段階の顔に似ています。そのため満月の夜にオオカミになっちゃうのかと思っていたら・・・トロルだもんな。これがムーミンとかトトロに変身するのなら、それはそれで楽しかったのですが、メッセージだけを残して終わってしまった感があります。今晩は、ムーミンとノンノンが楽しそうにセックスする夢を見てしまいそうです。そりゃやばいって・・・
ネトッとした余韻に浸れる稀有な作品かとw
予告編を観て、興味が湧き、なかなかタイミングが合わなかったけど、やっと鑑賞しました。
で、感想はと言うと、…なかなか難しい感じですが、ネトッとした余韻が残る作品でw、パンチもあり、北欧映画特有(個人的に感じます)の閉鎖感が漂い、全体的に同じカテゴリーに入る感じの「シェイプ・オブ・ウォーター」を観た時と同じようなインパクトがあり、ミニシアター系のちょっと変わった作品で、こう言った作品を観賞した満足感はあります。
結構ガツンと来て、面白い・面白くないと言う話では単純に片付けられないし、主人公のティーナの容姿はインパクトがあるし、中盤辺りからの様々な描写が結構エグい。
ファンタジーと言う言葉から連想するイメージからは結構程遠い感じ。
好みは分かれる作品かと思います。
ダークファンタジーミステリーと言うカテゴリーで良いかと思いますが、いろんな物が生々しく、それでいて種としての在り方や存在意義や本能。根本的な物ではマイノリティーの本質も問うてます。
様々な感情を嗅ぎ分ける異形の容姿のティーナが事件を解決しながら、自身の出生や秘密に迫っていく様なストーリーかなぁ〜と思っていたら、あながち間違ってはいないけど、いろんな事件の解決は程々でw、ボーレの登場辺りから、ガッツリと自身の立ち位置や生き方、トロルとしての苦悩、この世界との共存について割りと確りと描かれています。
虫やミミズを食べる描写は割りとエグい感じだし、ティーナとボーレの性交シーンも人間での男女の特徴が入れ替わっていて、生々しくもショッキング。
特にボーレが出産するヒルシットと呼ばれる赤子を出産するシーンはインパクトがあります。
本来のトロルの性別や身体的特徴はそうなのかも知れませんが、ティーナもボーレも容姿がたるんたるんでw、違う意味でインパクトがあり、…美しくないんですよね~w
全裸で森を駆け回るシーンや池での沐浴なんかも動物映画みたいで、そこを気にしだすと、ティーナは気の強いオバちゃんで、ボーレは変り者の変なオジさんに見えだしてしまいますw
そういう作品ではないんですが、いろんな事にインパクトはやっぱりありますw
この辺りがこの作品の好みが分かれる所かと。
難点があるとすると、空港税関員として働くティーナが持ち前の嗅覚で様々な事件を解決していくと言う点が少なく、ティーナのトロルとしての出生や秘密の件が後半は多く占めてた点。
異形の容姿の為、様々な迫害を受けてたティーナですが、空港税関員として働く姿は同僚や近所の住人とも普通に接しられていて、特異な能力で一目置かれる存在で警察の特殊捜査にも依頼がくる程で、犬飼いの同居人にも営みを求められる事もあるし、どちらかと言えば、表面的なだけかも知れませんが、迫害を受けてる感じではなく、むしろ必要とされてる感じです。
勿論、容姿から距離を置かれる事も多々あるかと思いますが、迫害を受けたり、疎外されてるシーンが殆ど無い事で、逆にティーナの苦悩や魂の高貴さを感じさせる共感が薄くなったかと。
あと、性交シーンでティーナの股の間からニョキニョキと出てきたぺニスやヒルシットの造型はちょっとチープな感じでなんか興醒めですw
ティーナはトロルでありながら、人としての心を持っているけど、自身の本能のまま、人間界でトロルとして生きようとしている。
ボーレはトロルとしての本能に従い、人間界で生きる為に手段を選ばない。
トロルと言うファンタジー世界の異種ではなく、いろんな点が少し違う(大きく違う点もありますが)だけで、人としてのカテゴリーに属するのであれば、小民族の民として生きるトロルの民の二人は互いの倫理観の違いだけで、人間界で順応しているティーナは人としての価値観を持っているからこそ、結局ボーレとはそぐわないが、ボーレから送られてきたトロルの赤ん坊を育てる事で人の世界でトロルとして生きようとしている。
このラストは真理かも知れませんが、結構来る物があって、観る側にいろいろと考えさせられます。
トロルと言うと、有名な「ムーミン」を連想しますが、個人的には2012年の怪作「トロール・ハンター」を思い出しましたw
劇中にフィンランドに流浪の民として少数のトロルがいると言う台詞がありましたが、北欧の地にはなんとなくいてもおかしくない様なイメージも雰囲気もあり、そんな事を思わせてくれる稀有な作品でもあります。
興味があって、未観賞の方は機会があれば、如何でしょうか?
変な感じの余韻に浸れますよw
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