「クライムサスペンス、ファンタジーそして私たちが生きる世界」ボーダー 二つの世界 redirさんの映画レビュー(感想・評価)
クライムサスペンス、ファンタジーそして私たちが生きる世界
北欧の奥深さというか、負の遺産を感じる作品。
最初は、孤独に生きる女性が人情に触れる話かいや凄腕検査官みたいだからクライムサスペンスか、と思いながら、森の生き物達が寄り添い集まってくる、北欧ファンタジーか、となり、なんとトロルの物語に。
いかにもティーナを利用してるとしか思えないようなローランドにはなぜ羞恥心を感知して鼻をピクピクさせないのか、など疑問に思いながらも、とにかくファンタジーとしてトロルの2人の話が進み人間が絡むと犯罪が存在する。空港検査官として、ここでは酒やなんかは大目に見てあげるけど日本より厳しくしっかり取締まりの児童ポルノ問題が重く絡んでくるあたりはさすがヨーロッパだ。近所の夫婦の分娩のため夜車を走らせるティーナ、それがトロルの未受精児にすり替えられて、最後は自分の子どもであろうトロルベビー、という小さな命という伏線があり、犯罪という伏線があり、なんとなく福祉国家でおおらかなイメージが日本にはあるスウェーデンで、サーミの血で紹介されたように、トロルにもマイノリティとしての検査研究検体それに起因する死亡という悲惨な歴史、マイノリティいじめ、差別、そして優生思想という人間社会にどこにもいつでもある魔物があるのだ。野生動物たち、美しい苔むす森、生きた昆虫を食べるトロル、。と様々な角度で、愛と生命について多角的に考えさせられた。特殊メイクがすごい。素朴な暮らしぶりも良くて善良そうな人達が個人レベルでは児童ポルノなどの卑劣な犯罪、社会単位ではマイノリティ差別迫害をしていて、かたや、圧倒的な自然の神秘に畏れとトロルの存在も感じる。ティーナが、自分がやっぱり妖精だった、違和感感じていた人間じゃなかったということに本能的に喜びを純粋に感じるあたりがとてもよかった。