「ファンタジーとリアルのボーダー」ボーダー 二つの世界 まろさんの映画レビュー(感想・評価)
ファンタジーとリアルのボーダー
友人のレビューに背を押され、隣の県まで行って、最終日に鑑賞。
パーフェクトな描かれ方で、内容のことだけに思いをはせられる、稀有な映画でした。
というのも、
ここのところ、リアルでは映画として成立しないので、設定にちょっと無理をしたため、これ、あくまでファンタジーだよ、となっている映画を多く観ていて。
しかも、綺麗なシーンを撮るため、「細かいことは気にしないでね、だってファンタジーなんだもん」みたいなの、ばっかりだなぁ、と思っていたところ。
北の世界ですから、地味な色合い、暗いトーンの会話。
犬の吠える声もうるさくて、なんとか短い会話を逃さないようにしますが、全くこの短い会話で、状況がちゃんと表れている。いるだろうな、あんな同居人。北欧の男性あるある。そう、以外と綺麗なんだよね、金髪の長髪で、髭の。自分の趣味に走る自由人。結構マメな人。ww
そこからの展開は、無駄なくたるまず、ちゃんと進んでいきます。
こういう映画は、観る人の見る力が、求められるよね。
で。
二人のあれこれのシーンが、気持ち悪い、という人もいるようですが、私は、かえって、そちら側にどんどん引き込まれて、それこそが普通に美しく思えました。
とにかく、美の基準も、性別の概念も、人間という枠も、いろんなことが、ひっくり返されていきます。
少数民族の迫害は、今でも、実はあちこちで起こっていて、これもリアル。
彼らのその特性が、児童ポルノの摘発に生かされる、というのも、ストーリーとして実にイマドキ。しかし、これが、実は別のトロールの特性、ここに及ぶとは! (トロールは、子どもを取り替える、と北欧の昔話で有名 ※「取り替え子」でググってみてください)
(日本でいうと、河童かなぁ、でも、河童が一族として生存しているようなものではないし、ちょっと違うなぁ。。。と思ってみたり)
パパに愛されようと、おいしくない食事でも、人間的な生活にも、順応しようと努力してきた彼女だったのだけど、色々なことが起きて、事実を知り、やはり、自分のアイディンティティに揺らいで、ひとりになって、どんどん荒廃した家になって、服装も動物的になって・・・ あぁ、もう仕事はしてないのなかぁ、なんて、その才能を惜しんでしまいますが、仕方ないのかなぁ、なんて思ったり。
そして、予想どおり、一族としての子どもが授かって、これから、という終わりなんですが、頼むから、そっち側に完全に行ってしまわないでほしいな、というのが私の気持ち。
復讐という理由で、特定の子どもを不幸にするのはやめようよ。きっとしないよね。彼に謝りながらも、ちゃんと連行に協力したわけだし。コミュニティに行っても、彼女なりの良心を持ち続けてほしい。だって、ある意味、取り替えは、本人にも起こっていたのだから。
なんて、内容の感想をかけるのも、この映画が本当に、リアリティを持っているから。
なかなか、こういう映画はないと思います。