「ネトッとした余韻に浸れる稀有な作品かとw」ボーダー 二つの世界 マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
ネトッとした余韻に浸れる稀有な作品かとw
予告編を観て、興味が湧き、なかなかタイミングが合わなかったけど、やっと鑑賞しました。
で、感想はと言うと、…なかなか難しい感じですが、ネトッとした余韻が残る作品でw、パンチもあり、北欧映画特有(個人的に感じます)の閉鎖感が漂い、全体的に同じカテゴリーに入る感じの「シェイプ・オブ・ウォーター」を観た時と同じようなインパクトがあり、ミニシアター系のちょっと変わった作品で、こう言った作品を観賞した満足感はあります。
結構ガツンと来て、面白い・面白くないと言う話では単純に片付けられないし、主人公のティーナの容姿はインパクトがあるし、中盤辺りからの様々な描写が結構エグい。
ファンタジーと言う言葉から連想するイメージからは結構程遠い感じ。
好みは分かれる作品かと思います。
ダークファンタジーミステリーと言うカテゴリーで良いかと思いますが、いろんな物が生々しく、それでいて種としての在り方や存在意義や本能。根本的な物ではマイノリティーの本質も問うてます。
様々な感情を嗅ぎ分ける異形の容姿のティーナが事件を解決しながら、自身の出生や秘密に迫っていく様なストーリーかなぁ〜と思っていたら、あながち間違ってはいないけど、いろんな事件の解決は程々でw、ボーレの登場辺りから、ガッツリと自身の立ち位置や生き方、トロルとしての苦悩、この世界との共存について割りと確りと描かれています。
虫やミミズを食べる描写は割りとエグい感じだし、ティーナとボーレの性交シーンも人間での男女の特徴が入れ替わっていて、生々しくもショッキング。
特にボーレが出産するヒルシットと呼ばれる赤子を出産するシーンはインパクトがあります。
本来のトロルの性別や身体的特徴はそうなのかも知れませんが、ティーナもボーレも容姿がたるんたるんでw、違う意味でインパクトがあり、…美しくないんですよね~w
全裸で森を駆け回るシーンや池での沐浴なんかも動物映画みたいで、そこを気にしだすと、ティーナは気の強いオバちゃんで、ボーレは変り者の変なオジさんに見えだしてしまいますw
そういう作品ではないんですが、いろんな事にインパクトはやっぱりありますw
この辺りがこの作品の好みが分かれる所かと。
難点があるとすると、空港税関員として働くティーナが持ち前の嗅覚で様々な事件を解決していくと言う点が少なく、ティーナのトロルとしての出生や秘密の件が後半は多く占めてた点。
異形の容姿の為、様々な迫害を受けてたティーナですが、空港税関員として働く姿は同僚や近所の住人とも普通に接しられていて、特異な能力で一目置かれる存在で警察の特殊捜査にも依頼がくる程で、犬飼いの同居人にも営みを求められる事もあるし、どちらかと言えば、表面的なだけかも知れませんが、迫害を受けてる感じではなく、むしろ必要とされてる感じです。
勿論、容姿から距離を置かれる事も多々あるかと思いますが、迫害を受けたり、疎外されてるシーンが殆ど無い事で、逆にティーナの苦悩や魂の高貴さを感じさせる共感が薄くなったかと。
あと、性交シーンでティーナの股の間からニョキニョキと出てきたぺニスやヒルシットの造型はちょっとチープな感じでなんか興醒めですw
ティーナはトロルでありながら、人としての心を持っているけど、自身の本能のまま、人間界でトロルとして生きようとしている。
ボーレはトロルとしての本能に従い、人間界で生きる為に手段を選ばない。
トロルと言うファンタジー世界の異種ではなく、いろんな点が少し違う(大きく違う点もありますが)だけで、人としてのカテゴリーに属するのであれば、小民族の民として生きるトロルの民の二人は互いの倫理観の違いだけで、人間界で順応しているティーナは人としての価値観を持っているからこそ、結局ボーレとはそぐわないが、ボーレから送られてきたトロルの赤ん坊を育てる事で人の世界でトロルとして生きようとしている。
このラストは真理かも知れませんが、結構来る物があって、観る側にいろいろと考えさせられます。
トロルと言うと、有名な「ムーミン」を連想しますが、個人的には2012年の怪作「トロール・ハンター」を思い出しましたw
劇中にフィンランドに流浪の民として少数のトロルがいると言う台詞がありましたが、北欧の地にはなんとなくいてもおかしくない様なイメージも雰囲気もあり、そんな事を思わせてくれる稀有な作品でもあります。
興味があって、未観賞の方は機会があれば、如何でしょうか?
変な感じの余韻に浸れますよw