「Hiisit = an unfertilized egg」ボーダー 二つの世界 Naakiさんの映画レビュー(感想・評価)
Hiisit = an unfertilized egg
この作品は、自分が何者かを知らずに育ったトロールと呼ばれる一族のある女性の物語で、大人向けのファンタジーともfairy taleとも言われている映画で、トーベ・マリカ・ヤンソンの描くムーミントロールは、設定や内容の受けとめ方が異なる。
冒頭で若者が税関で足止めを食い挙句には、彼女に投げかける言葉.....。
Ugly bitch.
I can't stand that kind.
話が進むにつれて、スウェーデンの自然と彼女の風貌がなぜか溶け込むようで、動物たちとの触れあうさまを観ていると、その姿かたちを超えて、彼女の純粋なこころが美しくさえも感じてしまう。
しかしながら、その反対に人間という生き物の醜さがさらけ出されている。
途中、同じトロールのヴォアが出てきてからは、テイストが変わり、生々しく、凄惨な部分も出てくる。
Who am I ?
You're a troll......Like me.
............
You're crazy.
スウェーデン映画はSami Blood (2016)以来久しぶりとなっているが、この映画もある意味、社会福祉の成熟した北欧の国でまさかの少数派民族を差別していた歴史があったことを思い出させるものとなっている。確か、ドラゴンタツーの女も生産国の一つにスウェーデンもあったか?
この映画を通じて若干、ギミックの稚拙な部分も散見するが、逆にどうやってこのシーンを撮ったのかわからないところもあり、個人的には、不思議というか主人公のティナ役のエバ・メランデルの女優魂が、垣間見ることが出来る。ラストのシーンはどうやって撮ったのか謎と言えて、知りたい気持ちが強く感じる自分がいる。
全体を通して、映像は青味がかかり、薄暗く、重くのしかかるように描かれているが、ティナの純粋な心根に触れると、人のこころの醜さは改めて外見を超えていると再確認ができる。
カナダの新聞紙Toronto Starの記者がこのように言っている。「我々が、いつも持っている物差しが、それにそぐわない人々に対してどのように接しているか潜在意識のメッセージとしてそれが我々を悩ますものとなっている。」この人の言うところの意味はあながち間違ってはいない気がする。
単純に良い映画、悪い映画と片付けられないものとなっているのかもしれない。
楽しみにしていた監督の映画です。主人公の正体について、パッと目に入ってしまって少し残念に思いました。これから公開の映画ですし、ネタバレ表記をお願いしたいです。