「FRISTと言わずSECONDにTHIRDと続いてほしい」ルパン三世 THE FIRST mokusin takataniさんの映画レビュー(感想・評価)
FRISTと言わずSECONDにTHIRDと続いてほしい
予告の時点でまず観て大失敗はないであろう感触は感じていました。
ルパン三世が誕生したあたりの60年代後半あたりを舞台にしてるので
ノスタルジー感あふれる時代(第二世界大戦時とか戦後とか)を作らせれば
まず外れない当監督の手腕と、少し前の例の【ドラクエのあれ】とは違い
ルパン三世のデザイン変化の激しさには個人的に慣れている点を加味しても
CGになった彼らには違和感どころかむしろカッコいいと思っていました。
さて内容はというと、正に教科書の様な“ルパン三世”って感じで音楽は勿論
大野雄二氏が手掛け、迫力の演出にキャラの動きは見事にルパン、狙うお宝は
オーバーテクノロジーで荒唐無稽な存在なのもらしさが出ております。
声優に関しては多分に漏れず特別出演って事で俳優やアイドルが声を当てており
正直本業の人で良いんでは無いかと思ったもののキャラデザインは上記で言及した通り
ルパンらしい動きとも相まって非常に良かったです。すべからく全ての登場人物は
高品質の見た目ですがとりわけ次元とヒロインへの気合の入りぶりは一塩です。
ストーリーは【インディジョーンズ】と【天空の城ラピュタ】の要素に
ルパン三世を加えた感じでして、かつてナチスが探していた古代兵器を巡り
ナチス残党とルパン一味+ヒロインが争奪を繰り広げるアドベンチャー映画
って感じです、マニアックな話をすれば【墓標・血煙・嘘】に存在する
血生臭くダークで大人向けというよりカリオストロ系列の義賊的ルパン
の傾向が強いです。監督もカリ城大好きと公言してましたが然もあろうと
思わせる好きっぷりが随所で感じます、“昭和一桁”発言とか。
敬意を持って制作している故、我と個性は抑えめで新しさは無いものの
何事も初めの掴みは大事ですし、スピーディかつダレのない展開で
もっと見ていたいと思う内に終わってしまう位に引き込まれます。
尤も気にならなかった部分が無かった訳ではなく、個人的に引っかかりを
覚えたのは敵サイドの老人学者の人間性が複雑すぎだったという点です。
この老人
①間接直接含めヒロインの家族を死に追いやった仇役
②数年後に何故かヒロインを引き取る(思惑があるらしいがそれが分からない)
③これまた何故かヒロインに泥棒めいた汚れ仕事をさせる(思惑ってこれ?)
④その一方でヒロインの生来の考古学センスに嫉妬
⑤昔の優秀な研究員だった頃の栄光に縋り付いている
⑥ヒロインに情が移ってる(にしては彼女の希望を踏みにじる様な事をする)
⑦人類史に残る発見を成したら自分が偉大な存在になったかの如く突然増長
⑧色々あって撃ち殺されそうになったヒロインを助けて死ぬ
など欲張り設定を入れすぎて、最後の庇って死んでゆく所では走馬灯のように
幼少期のヒロインを引き取った時の記憶を思い出しながら死んでゆくのですが…
正直、深みのある感動シーンなのかもしれませんが、ヒロインの祖父と両親を
死なせ、ヒロインが行きたがっていた大学への推薦手紙は破り、劇中での態度は
功名心と傲慢さばかりが前面に出ていて、そこに優しさを突然出されてもと
思ってしまい、私には半端な敵にしか見えず、いっそ優しい部分を取っ払って
すがすがしい位の外道で良かったのではと考えてしまいました‐‐‐ただ昨今では
悪党にも一概には分けきれない複雑な人間性を付随させる傾向が多くなった気がしますし
私の好みの問題でしょう、これだけ一人のキャラについて長文で語っている時点で
この感情は「これが~だったらもっと良くなる」の心理かもしれません。
とにかく、見た目も上々で内容も手堅く小気味の良いストーリーですから
かなりの興行収入が見込めるポテンシャルは本来ありそうです‐‐‐が
現状、あの『ユアストーリーズ』の悪評の影響でかなり苦戦しているようです。
是非ともFRISTといわずSECONDにTHIRDOと見たいものです。