沈没家族 劇場版のレビュー・感想・評価
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家族のあり方の新鮮な問い方
共同保育という試みによって育てられた監督自身が、その育った環境を振り返るセルフドキュメンタリーなのだが、家族というもののあり方について、非常に考えさせられる作品だった。シングルマザーとなり、生活のために共同保育という形を思いついたのは、監督の母親なのだが、この母親が破天荒で非常に面白い人物だった。特異な環境で、特異な人たちに育てられた、当の監督本人はわりと常識人なのも面白い。
映画は、母親をはじめ、監督が小さい頃にお世話になった人々に会いに行き、沈没家族と名付けられた共同保育の試みを紐解き、自身の人格形成のルーツを探る旅のように描かれる。そして、離婚した父との再開によって、血の繋がりと家族とはどのように関係があるのか自問してゆく。この父とのエピソードは因縁の相手の邂逅という赴きではなく、昔の知り合いに会いに行くみたいな感じの微妙な気まずい距離感が漂っているのだが、沈没家族のメンバーとの親しい距離感とは対照的で面白い。変わった生育環境だが、すくすくと健全に育った監督の人柄がよく出ている素敵な作品だ。
感想は難しい
こういう家族の形にトライしてみる人もいるのかと、感心して観ていた。そしてその5年間強にもすくすく育つ子供に、人間の、子供のか、順応力の高さを感じた。
うまくいかなかった父親の、もっていきようのない思いもリアルに感じるし、いろいろなことを感じる映画であった。
最初に書いたように、彼がすくすく育ち、この映画を自分で撮ろうと思ったことが、母親ばかりか、彼に関わったみんなが思うことではなかっただろうか。
同じ時期をいっしょに過ごした彼女との、姉弟のような、友人のような関係も、いい感じに思えた。
大掛かりな実験といえるが、すでに誰の中でも、忘れられない思い出ではあるが「そういう時期もあったな」という普通の思い出になっているところを見ると、実の父親にとってだけ、非常に過酷な実験だったのだろうか。
妻と仲良くして、ちゃんと父親をやろうね、ということだろうか?
人に頼る才能
親は子どもの手本であるべきだと勝手に思っていました。
その固定概念を事実をもって打ち砕いてくれる映画でした。
母親である穂子さんは、母親である前に、一人の人間として生きていました。
意外だったのが、ひと昔前の話ではなく、ほんのつい最近まで取り組まれていた話だということ。
自分が土くんを育てた世代とそんなに離れていないということがわかり、驚きとともにさらに興味が高まりました。
舞台挨拶で、監督である土くんが、「母には人に頼る才能があった」と語りました。
初めて聞く言葉です。
育児放棄や虐待などがニュースになって久しいです。
今の時代だからこそ、この言葉が子育てに行き詰まっている方々に届いて欲しいと思いました。
わからないが、、、
最後までよく分からない世界だが、子供は幸せでイイ青年に育っている。本人も幸せだという自覚がある。
お母さんは、淋しがりやで一生孤独とは無縁の人でしょう。愛のあるファンキーな女性に見えました。淋しがりやだからこそ人と繋がりたがり成功したのではないでしょうか?これが無駄に気が強かったりしたらこうは行かない。
人の懐に入れる人で良かったのと、善人な大人が集まり時代が良かったね。
お父さんはお父さんなりに土君と母を愛していた。お父さんも淋しがりやだけど、人間関係が下手なだけで。
出てくる人々の歯が皆なくて何かもうファンキーだった。うん!幸せだ。中野らしい!
誠実な記録
今の時代でこそ「シェア」なんて言葉が当たり前になって、子どもをみんなで育てる沈没家族の試みは、多くの人の興味の対象となると思う。でも、今の人たちがシェア◯◯なんて言葉から想像するようなそれとは全然ちがうということは、映画を観たらわかると思う。一人のシングルマザーがサバイブするために、それも悲壮感なく明るく楽しく生きてくために、とにかくやれることをやった、とてもワイルドな世界だった。見る人がみたら危なっかしいと眉をひそめるかもしれない。でも一見カオスにみえるそこには希望がありユーモアがあり小さきものへのリスペクトと思いやりがあった。この小さきものを触媒として、大人たちはとても暖かな、でも時に(土くんへの接し方についてなど)激しい議論を交わすような、大人同士の深い交流も生まれていた。血縁や婚姻によらない、会社などの組織でもない、何も縛るものがない、なんの利害関係もない、ニュートラルな関係の中で、そういった濃い関係性が生まれ紡がれていたことはとても興味深い。そんな中で育った子どもたちが大人になりそこで育ったことが自分の人生に与えた意味を語っているシーンは、淡々としているけれどとても感動的だ。
土くんの生物学上の父のシーンには多くの人が複雑な気持ちになり心乱されるのではないかと思う。感情的になる山くんに対して、あそこまで食いついて必死に問いかける土くんのその姿勢は映画監督としても、一人の人の子としても、ある覚悟を感じた。自分では選べないひとりの特別な人の存在をどう捉えたらいいのかという葛藤に本当に誠実に向き合っている。それがどれだけ勇気あることか、伝わってくるからその誠実さに心が痛むとともに、その勇気をあっぱれと思い本当に泣けてくる。この映画における大事なシーンだと思う。
土くんの子ども時代には本当にたくさんの大人が関わっていて、その責任のなさゆえの自由さと、責任もないのにそこまでコミットするんだということの不思議さと、色々な気持ちが見る人の中には湧き上がると思う。私は沈没家族に何年か関わった者として、その硬直しない感じがとてもいいなとおもっている。そして、やはり、そこにいた大人たちに好感をもっているし、そこで育った子どもたちには「友達の子ども」以上の思い入れがある。その子の力になりたいといつでも思うし、幸せになってほしいと心から願っている。そんなわけで、昨日の公開初日の上映をみて、全然客観的に見れないと思ったが、とりあえずレビューをこんな風に書いてみました。
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