劇場公開日 2019年4月6日

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「家族のあり方の新鮮な問い方」沈没家族 劇場版 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5家族のあり方の新鮮な問い方

2019年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

幸せ

共同保育という試みによって育てられた監督自身が、その育った環境を振り返るセルフドキュメンタリーなのだが、家族というもののあり方について、非常に考えさせられる作品だった。シングルマザーとなり、生活のために共同保育という形を思いついたのは、監督の母親なのだが、この母親が破天荒で非常に面白い人物だった。特異な環境で、特異な人たちに育てられた、当の監督本人はわりと常識人なのも面白い。
映画は、母親をはじめ、監督が小さい頃にお世話になった人々に会いに行き、沈没家族と名付けられた共同保育の試みを紐解き、自身の人格形成のルーツを探る旅のように描かれる。そして、離婚した父との再開によって、血の繋がりと家族とはどのように関係があるのか自問してゆく。この父とのエピソードは因縁の相手の邂逅という赴きではなく、昔の知り合いに会いに行くみたいな感じの微妙な気まずい距離感が漂っているのだが、沈没家族のメンバーとの親しい距離感とは対照的で面白い。変わった生育環境だが、すくすくと健全に育った監督の人柄がよく出ている素敵な作品だ。

杉本穂高