ある町の高い煙突のレビュー・感想・評価
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地味だが良質な社会派ドラマ。高い注目度も喜ばしい
新田次郎原作、仲代達矢出演など注目されるポイントはあれど、明治の山村で日立鉱山の出す煙害と闘った人々という基本的に地味なテーマ。それでも、公開2週目の週末(6/30)時点で注目作品ランキングで27位は頼もしい。こういう社会派の良作に観客が足を運ぶと、邦画の底上げにつながるはず。
松村克弥監督の前作「サクラ花 桜花最期の特攻」を観たときは少ない予算での苦労を感じてしまったが、今作はぐっと予算規模が大きくなり、キャストも絵作りもスケールアップしていて嬉しい。話としても、住民対企業という二項対立に単純化するのではなく、鉱山会社の中の良識派と住民のリーダーが認め合って協力する筋や、村人も一枚岩ではなく多様な思いがあるなど、より複雑で豊かなドラマとなっている。
教育番組のようなナレーションと、演技が大きいこと、煙突建設の工程の描写が少ないことは、個人的に難点だと感じた。
☆☆☆★★ ほんの少しだけ加筆改定しました。 原作読了済み。 流石...
☆☆☆★★
ほんの少しだけ加筆改定しました。
原作読了済み。
流石に昭和の文豪、新田次郎が描く明治時代の話は重厚で。最近読んだ小説の中では1番読み応えのある内容でした…中盤までは(-_-)
読み始め。最初の20ページ辺りで、「これ…この時点で、早くも連続ドラマ1話分あるんじゃないか?」と思わせる程に、熱量が溢れる内容でした。
「これを映画にしたら一体どうなってしまうのだろう?」
中身のスカスカな映画と違い、どこまで2時間とゆう尺の中で収められるのだろうか?…と。読み始めた時に、本気でそう考えたくらい( ゚д゚)
「お国の為に尽くしたい。でもそれが叶わない」そんなこの主人公が、あの名作『素晴らしき哉、人生』のジョージ・ベイリーと重なり、ワクワクしながら読み進めたのでした。
それにしても昭和の文豪の筆力は凄い!とゆうか、実に手強い!
普段、小説を読む時には。1ページ辺りの目安として、大体1分を目安と考えているのですが。この小説は凡そ1・5倍増しくらいに、読み込むのに苦労したのでした。
情景描写や周りの人間関係。細かな人間描写等、とにかくこちらが普段、読み易い小説を好んでいた事もあり。かなりヘトヘトになりながらの読了となりました。
ただ、小説として秀作であるのは間違いは無いのですが。歴史的な事実を曲げて描く事はならないわけで…序盤はワクワクした内容ではあったのですが。中盤から徐々に(悪人が登場しないだけに)勧善懲悪劇としては成立しなくなるにつれて、その面白味が薄れて行ってしまったのが大きな問題だったと思います。
これが映画オリジナルな脚本で。例えば、マキノ映画の様な勧善懲悪劇として。仮に主人公が高倉健の様な無骨で実直な男。会社側の社長が、金子信雄や山形勲の様な、素晴らしき悪役俳優による勧善懲悪劇だったならば、エンターテイメントとして成立していたのでは?…と、思わずにはいられない。
それだけに、中盤辺りからは。千穂とゆう女性が登場し、主人公との関係に於いて重要な意味を持つのですが。終始、プラトニックな関係のままで。(当時の恋愛模様とすれば、おそらく普通の状況なのでしょうが)
寧ろ、義理のお祖母さんの存在こそが。千穂を丑の刻参りで呪い殺そうとする辺り、悪役として相応しいのでは…と、思ってしまうくらいヽ( ̄д ̄;)
肝心要の高い煙突も、小説だといつのまにか出来てしまっていて。歴史的な事実だとそれまでに様々な困難や紆余曲折あったのでしょうが…。
…と。ここまでが、取り敢えず原作を読んだ簡単な感想。
以下、鑑賞直後に於ける映画の簡単な感想になります。
先ずは原作自体が、外国人技師オールセン(映画ではヨハンセン)との長年に渡る友情の物語であるのですが。肝心のオールセンは最初にほんの少しだけ登場するだけ。
だからか?原作に描かれたラストシーンでの再会も無い。それにより許婚者のみよの存在は全てカット。
と…なると、お祖母さんのいねの存在もカット…と。なんだか尺の関係を考慮した結果か?最低限これだけは必要と考える人物・エピソードから逆算して、苦心して割り出した…様に見える脚本に見えました。
そしてオールセンより。会社側でありながらも、三郎を始めとする農民側に寄り添う加屋淳平との友情。その妹の千穂との恋愛模様に重点を置いた話になっている。
その結果と言えるのかどうか?残念だったのが、(原作では)孫作に殴られそうになる三郎を助ける為の、みよの薙刀場面は無くなり。当然の様に、千穂の存在を疎ましく思ういぬが、千穂を丑の刻参りで呪い殺そうとする場面もカット。何しろいねは、結核で千穂が死んだ事を知ると、「ざまあみろ!」と罵るくらいに強烈な人物像だっただけに残念無念。何せ2人共に存在自体が無くなっちゃいましたからね〜(-_-)
そして原作で1番重要と思っていた、千穂が弦月に乗って峠を越える場面。
映画版では実にあっさりと描かれていたのですが。本来ならこの場面。結核に冒された千穂は。三郎を愛しながらも、許婚者のみよが居る為に自身の願いが叶わないのを知りながら。昔からの儀式として、花嫁は馬に乗って嫁ぐ村へ行く…その願いが叶わないからこそ、その想いを胸に秘めての弦月に乗っての峠越えであり。その想いを胸に余命を生きる決意をする。
でも映画では。千穂はまだこの時に、その様な想いを持ってはおらず。2人の恋愛感情のあり方、千穂の三郎への想いの強さが薄まってしまったのは実に残念でした。
この場面が有るからこそ、終盤での茅ヶ崎の療養所での別れの辛さに繋がっているだけに…。
原作だと、あっという間に出来あがってしまう高い煙突。
オールセンとの、長年に渡る往復書簡からヒントを得ての煙突建設だったのですが。映画版では、美穂との報われなかった愛の想いからヒントを…と、ここは(歴史的な事実は不明ですが)原作と変えており。より映画全体が、恋愛劇として観客に提示されている気がしました。
映画版では多少は困難な工事だった(様に見える)のが伺われるものの、原作での終盤の失速感。映画版では原作同様に悪役が居ない事によるアッサリ感…と。
「悪くは無い…」とは思うものの、満足感を感じるにはもう1つ…と言ったところでしようか。
出演者の中では渡辺大が良い。
はっきりと意識したのは『RUN3』の頃からでしたが。何しろ父親があの渡辺謙だけに、色々と苦しみも有るでしょうが、今後ともに注目して行きたい。今なら親子共演をしたとしても、充分に観客の期待に応えてくれるのでは?と思っている。
そしてもう1人、伊嵜充則。
子役時代からそつのない演技で印象に残る顔でした。ただ残念ながらこれまでに代表的…と言える作品が無いのも事実。寧ろ、ドラマ「味いちもんめ2」がそれにあたるか?と言った感じで…。
この作品での恒吉は、久しぶりに目立った役だっただけに。是非とも今後に生かして欲しいところです。
2019年6月27日 スバル座
映画としては楽しめない
日立鉱山の公害とその対策初期の物語で、先人の業績に敬意を評します。史実とは異なる部分も有りますが、日立鉱山創立後数年で世界一高い煙突という当時の最新公害対策を成し遂げた事は素晴らしいです。しかし、会社側が良く描かれすぎているのと、鉱山の出す公害の実態が軽く描かれているのが釈然としません。
日立鉱山が出来るまでの約300年間この地の鉱山は休止したりして発展しませんでした。主たる理由は採算性と鉱毒が農業に与える損害で有り、農業が重視されてきた結果です。
映画の初めに「農業従事者が虐げられていた」とナレーションが入りますがウソです。この地の農村は何度も日立鉱山に申し入れや、補償金増額交渉をしています。日立鉱山は設立時から補償金で対応してきました。公害対策をしたのは補償金が膨れ上がったのが主たる理由です。
銅の増産とムカデ風道の結果公害が酷くなった時に、農村は国に請願をして、国は日立鉱山に改善命令を出しています。農村側は鉱山の操業停止は殆ど要求せず保証金に関する要求が主でした。ただし、ムカデ風道竣工後は主人公の住む地域の公害が酷くなり、集団移住が検討されたのは史実です。
日立鉱山の黎明期は、鉱員に対してはブラック企業でした。人員確保が増産に追いつかなかったのでしょうが、社員は登場しても鉱員は登場しないのも不満です。
史実に関する苦言はここまでにして、映画としてはどうだったか?
途中でしんどくなる映画でした。主人公が大根。ラブロマンスは無駄。各シークエンスが退屈(地上波の2時間ドラマのよう)でした。
シナリオとカメラと編集に芸が有りません。
当時の公害の被害は酷く、先人の達成は色褪せるものでは有りません。だからと言ってこの映画が素晴らしいと感じませんでした。
環境問題
日立鉱山とその高い煙突はこの作品を通して初めて知りました。環境破壊問題は人類の永遠の課題であることを再認識させられる。
作品としてはメリハリに欠ける内容で俳優陣を含めてもう一工夫が欲しかった。環境問題に関するテキストとして価値あり。
2019-137
この~木何の木、気になる木~♪
日立関連会社でアルバイト経験があるのですが、朝礼のとき小林亜星作曲のCMソング「日立の樹」が流れていたことを思い出しました。「いつでも夢を」を流してる場合じゃありません!「日立の樹」を流さなきゃ・・・。その樹はやっぱり桜の木。せっかく伊豆大島の桜を植樹するんだから、もったいない。
元村長であった祖父兵馬(仲代達矢)の遺志を継ぎ、進学して国のために働く夢を捨て、村のために青年団長、煙害対策委員長を引き受ける関根三郎。合格通知は一高というから今の東大。もう、この時点で凄いことです。東大を蹴って、450人の村人のために・・・
煙突工事のために、ここまで葛藤があったことなど知りませんでした。しかも156mの高さを誇るんです!ピラミッドよりも高いんです!かつて足立区にあった、映画『煙突の見える場所』にも登場する“お化け煙突”でさえ80mなんです。建設用重機もなく、ほぼ人力で完成させた煙突に感激してしまいます。
もっと企業と村人が対決する物語だと思ってはみたのですが、暴力は使わず、禁酒禁煙、あくまでも話し合いで敵同士が和解するストーリー。前半はそうした暴動とかもあるのかと興奮気味に構えてしまい、途中は恋愛物語となり、最終的には大団円となる。現日立市の象徴とでも言うべき巨大煙突の歴史をしみじみと感じ取りました。
社会派ものとしても成立してはいるのですが、会話劇が続く中盤までがちょっと長く感じてしまいます。加屋純平(渡辺大)と関根三郎との対話も最初から穏やかだったため、もう少し盛り上がりも欲しいところでした。自殺した村人、猟銃事件など、いいエピソードも終わってみると、霞んでしまうのが残念。ただ、企業が悪ではなく、国策と称して何もかも規制する政府の方針や、第一次大戦で銅を量産して儲けようと企む大株主(斎藤洋介)など、そんな状況と闘う木原所長(吉川晃司)と村人の姿がとても良かった。
100年前の史実に感動
予備知識なく何となく観賞。それが却って良かったのか、史実に基づく物語であったことと昔懐かしい昭和の風景に結構感動。
当時、産業振興と経済発展に必要だった国策としての銅山開発。当時の知見では煙害対策もサイエンスとしては技術的には難しく、人里からできるだけ遠くにという発想は容易に理解できる。
しかし、驚くのは高さ180mもの煙突を建てたという建築技術。風雨対策を考えたら逆にリスキーな選択とも思うのだが、実際に建てたのだから、100年前の建築技術には畏れ入ります。
その後の100年の間のサイエンス技術の発展はもっとすごいですが。
仲代達矢と吉川晃司以外は、主人公含め出演者はほとんど知らない役者ばかりでしたが、新鮮味もあり、特にストレスなく見ることができました。
たまには史実に基づくこういう映画もいいかも。
大煙突を子供のころから見ていたので
大煙突の身近に住んでいたものです。(3歳までは日立にも住んでいました)
今は亡き父親の車に乗って入四間から日立の本山に抜けてから見上げる大煙突は子供のころの遠い記憶に残っています。新田次郎は「孤高の人」や「芙蓉の人」「八甲田山死の彷徨」など好きな作品でしたが今回初めて「ある町の高い煙突」を読んで,それからの映画鑑賞でした。
映画の出来はまあまあだと思いますが,題材となった史実はやはり素晴らしい。常磐炭鉱が舞台となった「フラガール」もそうでしたが,日立銅山を舞台とした「ある町の高い煙突」も地元としてはぜひたくさんの人に見てもらいたいと思ってしまいます。
主役以外すばらしい
主役以外は、素晴らしい演技でした。主役の人は、下手で棒読みで、見てる方が恥ずかしくなるほどでした。
それから、農作物は小松菜しかないのか?山の木が枯れかけているカットが必要ではなかったか?など、突っ込み処、満載でした。
内容は良いけど描き方が…❗
星🌟🌟🌟内容と言うか題材は凄く良い作品だと思います❗ただちょっと全体的に演技が大袈裟過ぎてあんまりハマって観ることができませんでした❗なんだか舞台の演技を観ているようで…映画だとオーバーリアクションになってちょっと白けてしまいます❗主役の井手麻渡が舞台の人なので合わせたのかも知れないですが…彼は撮られる演技にまだ慣れてなくて拙いですが普通の演技をしてるので他の人特に村人達のオーバーな演技が目立って引いてしまいました❗たぶん演出が良かったら感動する作品になっていたと思うのでちょっと残念です❗吉川晃司は凄く良い演技していたのに…❗
冷静に、合理的に
茨城県に実在した日立鉱山の煙害問題を題材にした1910~1915年の話。
煙害問題があったことは既知だったけど見識はほぼ皆無の状態で鑑賞。
建設的な話し合いで鉱山側と協力して煙害を解決しようとし結果に結びつけたとのことで、興味深い話でストーリーそのものは非常に興味深く良かった。
しかしながら、ど素人の自分が考えても煙道や阿呆煙突が上手く行く訳がないようなふざけた構想で建設された様な描かれ方がされていたし、大煙突にしても兎に角頭ごなしみたいな描かれ方で、そんなことあるのか?と疑問に。
(鑑賞後調べてみたら理屈は一応理解できた)
他にも疑問に感じたり余りにも大袈裟だったりする演出や脚本が多くて白け気味。
昭和の時代に作られた映画をみている様な感覚になった。
本当に昭和の映画だったらもっと高評価したけど…もうちょい何とかならなかったかね。
公害克服のドラマ
原作の同名小説を今回 映画化されたとのことで 日立市の100年も前にこのようなことがあったことに驚きを隠せませんでした
そして 世界一高い煙突が立てられたこと ドラマの中での企業と住民との 一青年の情熱 まわりの人とのつながり 大感動の映画です
対話を通して 諦めないで 生きる為の情熱は 必ず通じていくし 実現させていくことの大切さを 学ばせて頂きました
煙害に苦しむ農民と国策を推進する企業側が確執を乗越え煙害対策に取組む高潔高邁な姿に明治時代の日本人の気骨を感じた
現代でも深刻な様々な環境問題。100年以上前、富国強兵の国策により銅山開発に携わった会社側と煙害に苦しむ農民たちが様々な軋轢を乗越え、煙害問題解決に真摯に取り組む姿が心に響いた。
出演されている役者さんたちの凛とした表情、セリフ(特に吉川さん演じるこの会社の経営者が口にする言葉の崇高さ)、佇まいがとても良い。
<淡く哀しい恋愛なども効果的に盛り込まれたストーリーは良く練られており、上質な社会派エンタメ作品だと思います。>
桜の街、日立市
日本では大気汚染や公害がほぼ克服されていますが、50年前は深刻な問題でした。新田次郎が原作となった小説を書いたのがその頃。何と、更に遡ること50年前に銅山からの煙害を克服する努力が企業と市民の対立を乗り越えた協力の下になされていた。
映画では淡いラブストーリーを伏線に、若者達の熱意が描かれています。当時、公害対策に種々の植林も行われて居ました。特にサクラは煙害に強くいく種類もの苗が植えられ、今も、阿武隈山地の尾根から海岸にかけてヤマザクラ、オオシマザクラ、ソメイヨシノなどがピンクや白の桜が咲き乱れます。映画のエンディングでその映像が流れ、日立市在住者として思いを新たにしました。
新田次郎さんの原作を合わせて読むのも良いと思います。
茨城県の劇場は超満員!
先行上映で見るため茨城県で見ました。さすが地元の作品なのか高齢者の方々で満員です。
JXTG、日産、日立のルーツ作品。
お国のための時代に民との共存を望んだ企業精神(社長ひとりですが)と
結果として環境対策の先駆けとなった実話作品です。
日本が世界に誇りたい作品のひとつだと思います。
初めての評価5でした。
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