「うっかり感動してしてしまった、けれど....」宮本から君へ RONさんの映画レビュー(感想・評価)
うっかり感動してしてしまった、けれど....
原作は連載時、飛び飛びで読んでた。だいたいのあらすじは知ってる。
「もっと楽に生きろよ宮本ぉ...暑苦しいんだよ」読むたびにそう呟いてた。
新井英樹、好きな作家ではない。ただ、物語に惹き込む力は物凄い。
さて、今頃の映画化である。池松壮亮かぁ。自分のイメージだと市原隼人なんだが....
まぁそれはいい。余りの熱量にうっかり感動させられてしまったが、ちょっとまてよ、と思い出したので書いてる。
宮本が本当に直情バカだったら、靖子からレイプされたと聞いた瞬間、出刃包丁か金属バットか、とにかく身近な武器になるもの持って走り出してるはずだ。
住所知らない? 顔覚えてない? そんなの、走ってる途中に気がつくはずだ。
そしてとにかく父親の連絡先は知ってるんだから、まず父親のところに怒鳴り込むだろう。
ラグビーの練習時まで待ち、ユニフォームまで着て待ってる????
宮本が知能犯ならそれでもいい。ニコニコ笑いながら、タクマが後ろ向いた瞬間バットで殴るとか、ガソリンぶっかけて火を付けるとか、それとも自動車かバイクで引き倒すか....
そうでもしなけりゃ収まらない怒りだろ?
最悪の胸糞の悲劇を描きながら決着の付け方がファンタジー、そこが気に入らない。
マンション非常階段での死闘。あんな上手い事いくわけない!
両者、あるいはどちらかが地面に落下して死亡、もしくは半身不随とか。そして宮本が助かったとしても刑務所行き.... それがリアルだ。
そんな救いのない映画誰が観るかよ、自分だってそんなもの観たくないよ。
もちろん映画の嘘はあったったっていい。
だったら事件の発端の彼氏が酔いつぶれてる横で彼女が巨漢男にレイプされるなんて、胸糞な設定描かなきゃいい。
その矛盾が気にならない人には感動作になったかもしれない。
明らかに新井英樹「宮本から君へ」に絶大な影響を受けて描かれたと思われる花沢健吾「ボーイズ・オン・ザ・ラン」の映画化作品を、気になって昨日見直してみた。
とても納得がいった。主人公、田西の感情、行動に嘘がない。そしてこちらには都合のいいカタルシスがない。だよなぁ...な、苦い苦いオチしかない。
だから感動してしまう。
自分は「ボーイズ...」の」ほうが断然好きだ。それだけ。