「魂をむき出しにして生きる熱さ。」宮本から君へ ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
魂をむき出しにして生きる熱さ。
宮本という人間の真っ直ぐさ。
宮本という人間のどうしようもなさ。
宮本という人間の全力さ。
ドラマ未視聴・原作未読だけど、この映画だけで充分伝わってきた。
お金はないし、金魚の水槽の水はカルキ抜きしないといけないことも知らない。
でも宮本は自分の保身とか利益のために感情を押し込めたり、他人を意識して打算的に立ち振る舞ったりしない。
腹を立てれば歯をくいしばって怒り、哀しかったり悔しければ涙を流し、激情のままに自分を痛めつけ、相手に忖度せず言いたいことを言う。
魂をむき出しにするってこういうことなんだと本作を観て思った。
そして徹頭徹尾「自分の(信念や正義の)ため」というエゴを貫く宮本がとても良かった。
拓馬にリベンジをしかけたのも、宮本が言うように靖子のためじゃないんだろう。
傷つけられた靖子を守れなかった自分がふがいなくて、そんな許せない自分を倒しに行ったのだ。
靖子が傷つけられた事実は消せない。
自分がその時何もできなかった事実も消せない。
宮本はそれをわかって、そんなふがいない自分を乗り越えに行ったのだ。
靖子と一緒にいるために。
「誰かのため」なんて、傲慢だしそんなの嘘だと私は思うから、宮本の行動はとても信頼できる。
でも、そんな宮本がラストシーン、「自分の血液も内臓もすべて使っていいから靖子と子どもを助けてほしい」と叫ぶ。
エゴを貫いた宮本が走りぬけた先があのラストの境地だったんだと思うとあの結末の持っていき方もすごく腑に落ちるし、素晴らしい。
そして、宮本役の池松さん、靖子役の蒼井優さん、すさまじかった…。
魂と魂のぶつかり合いとはこういうことなんだろう。
そして力強いシーンばかりではなく、例えば宮本と靖子が道端でキスするシーン。
なんて儚く美しいシーンなんだろう。あそこでも泣いた。
あと素晴らしいのが宮本浩次の主題歌。これは泣く…。劇場で爆音で流れる激しく優しいロック。エンドクレジットが流れてボロボロ泣いたわ。
暴力シーンが観てて途中とても辛かったけど、観て良かった。すさまじいエネルギーが込められた作品だった。