野性の呼び声のレビュー・感想・評価
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CG犬の演技力に感銘
ソーントン役の初老の域に入ったハリソン・フォード、野趣に富む本作のような舞台設定には、にじみ出る渋みが効果満点。物憂げな立ち振る舞いは台詞がなくても何かを訴えかけてくるようだし、時折見せる少年のような笑顔がまたいい。
本作の実質的な主人公とも言える名犬バック。映画の振り付けも行うシルク・ドゥ・ソレイユのダンサーがパフォーマンス・キャプチャーで演じており、わくわくするようなダイナミックな動きから、胸を締め付けられる繊細な表情まで、CG描画の精妙な仕上げのおかげもあり見事にバックに命を吹き込んでいる。ソーントンとバックの“対話”場面は、もちろんフォードしか話さないが、バックの豊かな表情でしっかり成立している。
そうそう、野性を象徴する黒い狼はウェス・アンダーソン監督作「ファンタスティック Mr.FOX」でオマージュされていた。これが元ネタだったか。あとカレン・ギランの使い方がもったいない!
ビジュアルが嘘くさい。行動が不自然
いろいろ言いたいことがある。でもひと言で言ってしまえば「満足できない」内容だった。表面的にはよくまとめ上げたとは思うものの、雑なほころびが目立つ。一番のポイントは犬の演技だ。
今回、なぜかパンフレットが購入できなかった。販売自体がないのか、劇場で売っていなかっただけなのか事情は分からないが、内容についての疑問は解消されないまま、もやもやとしたものが残る。
犬の演技というのは、映画の製作的に、一番重要な決断の部分だ。優秀なトレーナーを起用して、極力本当に犬に演じさせる方法や、全部をCGで作ってしまう方法など、ある程度の方向性を決めなければならない。『キャッツ』などは、舞台のミュージカルをあんなヴィジュアルにしてしまったがゆえにかなり悲惨な出来上がりになってしまった。どれほど美しい歌声や魂のこもった踊りを俳優が演じても、「CGでどうにでもなるんでしょ?」と思われてしまえばおしまいだ。
この映画では、基本はCGで犬を作り上げたように見える。ネタバレになるので予告編の映像のみに絞っても、本物の犬が演じているようには見えない。クレジットにも、犬の名前が出ない。オオカミや熊、野鳥の群れなどはほぼ全部がCGであろう。
『ライオンキング』『ジャングルブック』『ダンボ』など、アニメーションを実写化したものは、本物の動物を出すことははじめから考えにくい。『ベイブ』では仔豚がしゃべるし、『ライフ・オブ・パイ』では、虎が救命ボートで少年と漂流し、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』では、アライグマが宇宙船の操縦をこなす。それぞれに完成形を描いたうえで方法を模索し、映画が製作されていく。
この映画では、犬をCGで作るという決断が下されたわけだ。
厄介なのはこの作品の趣旨である。人間が野生に挑み、厳しい自然に翻弄されるさまを描写している。その中間にいるのが、犬のバックであり、ハリソン・フォード演じる孤独な老人だ。このペアは人間の「群れ」を離れ、ギリギリの辺境で暮らす。てっきり人嫌いをこじらせてそうなったのかと思いきや、実はそうでもないようだ。とにかく人間の営みと、厳しい自然の関係性が昔ながらの語り口で広がっていく。
そうすると、大切なのは映像のリアルさだ。犬は人間と最も近い動物と言ってもいいかもしれない。多くの人が犬を身近に知り、飼っている。それだけ映像のウソが見破られるリスクが高い。とにかく完成した犬の映像は、本物には見えない完成度だった。それがすべて。この映画を決定づける要素と言っていい。
もうひとつ気になったことがある。20世紀スタジオとして初の映画リリースという触れ込みで、力が入っているようだが、犬と人間の関係性は、映画会社の意向が強く影響したようだ。主従関係が、当時の時代背景からしたらあり得ないような描写があちこちに見られる。まるで友達のように犬と接している。女性の社会的役割や、黒人の行動など、細かな関係性が現在の価値観に沿って修正されているように見える。そこはストーリーの本筋に関係のない部分なのかもしれない。しかし、この映画の時代は昔だ。昔話で、昔じゃないみたいなちぐはぐなことが起きれば、当然違和感が生じる。原作を読んだことがないので、どこまでが原作に従って犬を描いたのか分からない。
ビジュアルのウソっぽさと、脚本段階での登場人物の行動の不自然さ。いずれも映画製作者の妥協の産物だ。決定的にこの映画をダメにした原因だと思う。
やっぱり本物の犬が良い。
CG 感が ややリアリティを削ぐ
CG犬は表情豊か
バックはいい奴!
ワンちゃん映画、いろいろ過酷であっても最後は感動で終わるのだが、今...
う~ん、ワイルド
大自然は我々の戻るところ
ベックはカルフォルニアのある家から盗まれカナダのユーコン準州に売り飛ばされてしまった。驚くほど賢くて、犬の表情を見てこの映画を終わりにできるほどだった。それに、ユーコン準州の大自然。自然と一体になって生きている人々。ゴールドラッシュが始まっているから、もちろん、一攫千金を狙って来ている人々も多いが、この話では、一人が主な悪党として扱われているが、きっともっといたに違いない。郵便配達をしている時大雪崩が起きるが、あれは鉄道建設を試みている工夫が爆発物を仕掛けたように思われた。雪崩の中を猛烈に通り抜けるベックたち犬ぞりに気を取られあまりよくきいていなかった。
好きなところはジョン(Harrison Ford)がベックにユーコン準州の地図を見せて、ここを超えて大自然の中で自由に住めるところに行こうというシーン。二人はアラスカ方面に向かって(当時、まだ開発されていなかったのかも?)歩き出す。これは、二人が自然に帰るということで、土に帰ることを意味すると思った。かれは、他の金目当てで、ここに住んでいる人とは違うとわかるが、結局、自然より強大なものはないから、目先の利益より自然とどう付き合うかが、大事なんだね。現在もそうだと思うけどね。
あと、フランス系カナダ人の郵便配達人(Omar Sy )が徐々に、ベックの才能に気づくシーンが好きだし、最後、ベックに、別れ際に『自分たちのこの仕事は人に愛をあげること』だとかいうシーンが好き。ベックはこの意味を理解してくれるから、彼に、ゴールドラッシュで人間が人間であることを失いそうになっている人々に向かって、理解できるベックにその本質を話したかったんだと思う。
映像美に圧巻
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