「フォードの宣伝にはならない」フォードvsフェラーリ Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
フォードの宣伝にはならない
楽しいの。男の子が熱くレースやってんの。ベクデル・テストは余裕でパスしない。いまどき、こんな映画作るんだっていう。
最初の小さなレースシーンでケン・マイルズの性格を描くんだよね。優秀だが扱いずらいっていう。自分にこだわりがあって、それを貫いて、勝つ。かっこいい。
フォードがレース参入決める理由もフォード会長が「あいつはフォード2世だ」って言われて、プライドを傷つけられたからなんだよね。実際はもう少し複雑だったろうけど、企業の戦略云々よりプライドが優先してくの。
そういうプライドの塊みたいな男たちを邪魔する役にフォード副社長のレオ・ビーブをあてるんだよね。マーケット優先で、ケン・マイルズを外そうとしてくんの。
しかし、キャロル・シェルビーがフォード2世を落として危機回避。ここの「親父に味あわせてやりたかった」も結構いいんだよ。
で、ル・マン。ケン・マイルズが圧倒的な強さで勝ってるのに「二位と同時ゴールインさせろ」ってレオ・ビーブが言い出すのね。それでフォード2世も間抜けだから「うん」って言っちゃうの。
どうすんだ、言うこと聞くのか? ってところで、ケン・マイルズが全速でぶっ飛ばしてコース・レコード更新! スカッとするね。
しかし、スカッとするのは、ここまで。結局、ケン・マイルズは減速して二位と同時ゴールを選ぶの。「引き分けで優勝か?」ってところで、「二位の車の方が、後方からスタートした」って理由で、ケン・マイルズが優勝逃すのね。レオ・ビーブがケン・マイルズに優勝させたくなかったみたいな描写になってたけど。
キャロル・シェルビーが最悪なんだよ。なんだかんだ言ってんだけど、結局、保身を優先してケン・マイルズを守れてないの。
ビジネスの判断とか、トータルの判断では、キャロル・シェルビーは間違ってないんだよね。自分の会社と人生を賭けてフォード2世を説得して、ケン・マイルズをル・マンに出してるところも偉い。でも、最後の最後で、負けちゃった。
自らのプライドのためにも「フェラーリに勝つ!」としてフォード2世もいいんだけどね。でも、最後は現場が見えなくて、どうでもいいレオ・ビーブに任せちゃうのね。トップと現場は解り合えないの。
ラストはそういう辛さが出てて「結局、これ、フォードがダメダメなんじゃねえか」という気分になるから、フォードの宣伝にはなってないね。
日本の車企業もF1に参入したりやめたりしてるけど、こういうロマン、プライドの部分と、ビジネスの部分で色んな葛藤あるんだろうな。