劇場公開日 2019年9月20日

  • 予告編を見る

「近年の流れのなかで浮いてしまったか」アド・アストラ marumeroさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 近年の流れのなかで浮いてしまったか

2025年9月19日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

『ゼロ・グラビティ(2013)』や『インターステラー(2014)』など圧倒的なリアリティに驚かされ、その後には『ファースト・マン(2018)』ときてまさしくリアルなものとして観ることになり、なんだろう、最近は、SFをフィクションというよりもっとリアルに感じさせるような流れにあるように思います。
観る側も、映画を通して宇宙空間のリアリティというものに目が肥えてきたとでも言えるんじゃないかと思います。
そういう流れの中にあって、本作はなんだか浮いてしまった感があります。
少し空想的過ぎたのかもしれません。
素人がわかる範囲の理屈で、それはおかしいんじゃないかと思えてしまうことの連続です。
しかし、それでも、本作の映像体験は紛れもなく素晴らしいし、瞑想的な音響もまた素晴らしいと思います。娯楽性という点で本作が描こうとする静謐な世界観は個人的には好きでした。
物語の根幹にある、感情、尊厳、孤独、探究或いは衝動といったテーマが、常に人間的な繋がりというところに向かって描かれていく様は個人的には力強く感じました。
非常に強い緊張感を保ったまま進んだ先の終盤の描かれ方が秀逸です。こここそが最大の魅力だと思います。
まさに感覚の奔流です。水の重み、樹木の深い緑、土の生々しい感触。そして、何よりも圧倒的なのが轟音と人の声です。ヘリコプターの唸り、車のクラクション、そして無数の人々の雑踏。これは、ロイが長い旅の途中見つけられなかった、或いはずっと見つけようとしなかった「生」のエネルギーそのものが、爆発的に彼を取り囲む瞬間でしょう。
震えました。物語の完璧な完結を、私の五感に訴えかける傑出した描写だと感じました。

余談ですが、リブ・タイラーが『アルマゲドン』の頃からあまり変わっていなくて驚きました(勿論実際は全然違うのでしょうけど)。これリブ・タイラーだよな!?いやでもまさか、とエンドロールを観るまで半信半疑でした。

marumero
PR U-NEXTで本編を観る