「広大で、同時にちっぽけな自分探しの旅」アド・アストラ MPさんの映画レビュー(感想・評価)
広大で、同時にちっぽけな自分探しの旅
宇宙の彼方で消息を絶った父親を探すため、遙か彼方の海王星まで飛んでいく。それは、父の失踪以来、人間らしい感情が麻痺してしまった主人公の宇宙飛行士にとって、"自分探しの旅"と言えるもの。何と広大で、同時に、ちっぽけな話であることか!?だが、本作は描き尽くされ、開発し尽くされた宇宙映像に新たなアップデートを試みている。それは、映画の冒頭に訪れる。また、地球から月を経由し、さらに火星から海王星へと向かう宇宙旅行の楽しさは格別だ。まるで、旅客機での旅と見紛う笑える演出が途中に用意されているし、何よりも、俳優ブラッド・ピットが披露する、彼としては珍しい熱量のグラデーションが明確な演技が新鮮だ。昨今、俳優引退が囁かれるブラピだが、それを見ると、「今後も魅力的な企画があれば出演するつもり」という本人のコメントに嘘はないと思う。だが、勿論、それは「今後は必然的に俳優の仕事は減していく」(ニューヨーク・タイムズのインタビューで)というのと同義語。それでも、前作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」ほどではないが"サービスショット"も少し用意されている。ここしばらくは、スター、ブラッド・ピットを堪能しようではないか。
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