「眠いのはレイトショーのせい…だけじゃない。」アド・アストラ しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
眠いのはレイトショーのせい…だけじゃない。
レイトショーで鑑賞(字幕)。
予告編を観て「観に行かねば!」とピンと来ました。
地球外生命体の探索のために、銀河系の遥か彼方へ消えた父親(トミー・リー・ジョーンズ)。父を救出するために宇宙へと旅立つ息子(ブラッド・ピット)。
父と子の物語を壮大なスケールで描き、宇宙の果てで彼らが見た驚愕の真実とは何か?―しかもアクション大作であると云う…。めちゃくちゃそそるじゃありませんか!
個人的に名作だと思っている「インターステラー」を越えるかもしれないと云う期待を抱いて鑑賞しました。
ところがどっこい。正直、全然面白くなかったです…
勝手に期待した方が悪いと言われればそれまでかもしれませんが、なんにしてもこれはちょっと酷いな、と…。劇場全体がなんじゃこりゃ感に包まれていた様な気が…
冒頭からしばらくはすごく良かった。近年宇宙空間の描写が発達したことで得られるリアリティーが炸裂して、落下するブラピを追体験。宇宙の静謐を感じさせる場面もありました。
父親の生存が明かされ、極秘ミッションに赴くまでに語られる葛藤と父への想いには共感しかない。始まるぞ、父子の物語が…。パーソナルな関係性がSFへ昇華される瞬間が…
ここからがいけなかった。
月面での戦闘やクレージーモンキーとの戦いを挟みながら、延々主人公の苦悩を(同じ内容を言葉を変えて繰り返し)聞かされ、うんざりして来たところで緩急をつけてくれるアクションは無く、だらだら進むストーリー。宇宙空間なのに音のあるシーンまで出て来てリアリティーの基準があやふやに…
身勝手さで多くの犠牲を出しながらも辿り着いた海王星にいる父の元でも、特にエモーショナルな感慨に浸る出来事は起こらず…。ふたりの関係が掘り下げられることも無く、生命について思索されることもないまま終わってしまいました。人間ドラマを重視しているとしても弱い。
そもそも、伏線かなと思わせておいて、実はなんの意味も持っていないと云うシーンがかなり多かったです。元妻(リヴ・タイラー)とのことでさえ、最後の最後でちらっと決着的な場面が挿入されるだけと云う始末でした。
人間はひとりでは何も出来ない。他者との繋がりがあってこそ、生きていける。誰かを想い遣り、想われることで人生は素晴らしいものとなると云うテーマが最終的に語られていましたが、結局はそこかいと思いました。
※修正(2023/01/29)