「メカだけでなく心もハードSF」アド・アストラ bionさんの映画レビュー(感想・評価)
メカだけでなく心もハードSF
小学生の頃、宇宙飛行士入門を読んだ。宇宙飛行士になるためには、頭脳、体力を高めなくてはならない。そして最も必要なものは冷静沈着であること。ところが、宇宙飛行士が冷静沈着だと、ケンカも揉め事もおこらないから物語としては難しい。だから、映画やドラマでは、感情的な役柄が多くなってしまう。Netflixのアナザーライフにいたっては、船長自らが顔を真っ赤にしてキレまくっている。
宇宙飛行士は冷静沈着であるという事実を動かさずに物語が進んでいく。それでも、観ている方は、全然退屈しない。むしろ、ブラピ扮するロイが1人称で、淡々と自分の心の内を語っていくので、かえって感情移入がしやすく、自分が主人公ではないかと錯覚が起きるくらい。
メカの造形、映像がすばらしい。色々なSF小説で想像されている近未来の宇宙開発の姿がまさにこれだ、きっとこんな感じに違いない、と思わせる仕上がりで見とれてしまった。冒頭の宇宙ステーションの造形美もすごいし、月面の基地もリアリティがあり、月面を走るビークルでの戦闘シーンも新鮮味があってよかった。
火星ステーションでは、ロシアンドールのナターシャ・リオンが例のダミ声で出てきて、思わず笑ってしまった。
ブラピは冷静沈着で寡黙な宇宙飛行士を見事に演じている。そして、ロイが寡黙であるがゆえに静謐な宇宙の美しさとマッチしていて、火星を飛び立ってからは木星、土星と続く映像は圧巻だった。ストーリー、映像、設定、メカ、SF好きにはたまらない映画だった。
かなりちゃんと考証はされてると思ったのに、あんまり伝わってないんだなあといろんな方のレビュー見て感じます。
言葉による説明情報を出さなすぎた弊害でしょうか。