テリー・ギリアムのドン・キホーテのレビュー・感想・評価
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人は選ぶが良くできたファンタジー
テリー・ギリアムの真骨頂。若干の難解さ、癖の強い悪夢的ビジュアル、際どいギャグセンス。受け手を選び、評価のバックリ分かれる作品だろう。
灰汁の強さも難解さも、この監督にしては比較的マイルドと思えたのだが…。
今映画を見ている現実の我々、映画の中で作られる映画作品、作品中のフィクション世界。幾つもの階層が交錯し侵食し合うような劇中劇の仕掛け。
『ネバーエンディングストーリー』を読んだ事のある人には、理解しやすいかと思う。重なる世界を、奥へ奥へと深く潜っていくような感覚。今自分が見ている光景が、どの階層のものなのか、混乱と曖昧さの内に、やがて物語世界に取り込まれてしまうような。不安定で恐ろしく、でも何処か蠱惑的な、この酩酊感がいい。キャラクターや展開に垣間見られる、神話や心理学的ファクターも、ファンタジー好きには堪らない。
現在と回想が代わる代わる繰り広げられ、現実と幻想が入り交じり、敢えてなのか、時に不親切に唐突に切り替わる。それらを繋ぐ、芝居の役柄を真実と思い込んでしまった老人と、映画制作というまやかしのスペシャリスト達。
社会規律や常識に対し、端迷惑で滑稽なものとして描かれている老人の奇行が、やがて、それを見せ物にして嘲笑う大衆の下劣さと、勇気と自己犠牲をもって弱者を守ろうとする高潔な騎士道精神へと、反転して見えてくる。醜悪な現実が、美しい虚構に喰われていく。
やがて夢は覚めるが、ドン・キホーテは死なない。偽りの武器と鎧で、理想を掲げて、無謀に巨人に立ち向かう結末は、テリー・ギリアム自身の、映画という幻想世界への愛と信念にも思えてくる。
何度もトラブルに見舞われ、キャストも二転三転したというこの作品だが、アダム・ドライバー、ジョナサン・プライスの主演陣が素晴らしかった。終わりよければ全てよし。
B級感があってらしいと言えば言えるが、邦題と予告編は、もうちょっとどうにかできなかったものか。ファン以外全く興味をそそられなくない?これ…。
こんなに待ってたのにいざ公開されることになると見るのが本当に気が重かった
ドン・キホーテの映画作成の話は、テリー・ギリアムの作品を公開されたら見にいく程度のファンでもかなり長い間知ってたと思う。
いざそれが実際出来上がって公開されるとなった少し前に、監督からMeToo運動に関する暴言ともとれる発言が飛び出してきた。曰く、権力を持つ者は乱用するし、MeToo運動は魔女狩りだし、世の中の全ての悪が白人男性によるものだといわれることにウンザリなんだそうだ。(他のもっとショッキングな発言は多分検索すれば探せる。)
テリー・ギリアムの作品には多くの権力を持ち乱用する者と、多くの不幸な白人男性(主人公)が登場するし、救いはない。そういったストーリーを語り続けてきた監督から、そのような発言が出るのは実際そんなに違和感があるわけではない。でもファンだった私はそれらを肯定していると思って見ていたわけではないのでやはりかなりショックだった。
そんなわけで公開されたドン・キホーテを殺した男だが、なぜ今ドン・キホーテそのものを作るのか正直よくわからない。今までもあの映画のあの人とかあの人とかほぼドン・キホーテだ。(正気を失い騎士道にはまって馬にのって槍を持って巨人と戦って幻想の姫を守る)
感じたのはテリー・ギリアムが40年くらい前から更新できていないこと。(特に笑いの感性に関しては顕著で本当に笑えない。「それモンティ・パイソン時代すでに見たが、まだ好きなの?」が頻繁に起こる。) 現状は変化しない、改善はない思っており、同じ結末を繰り返す映画を作り続けていること。もし次作があっても結論は一緒だろう。だから見ないと思う。
いつものテリーギリアム映画
ジョナサン・プライス、アダム・ドライバーの演技、最高、圧巻。
内容はいつものテリーギリアム映画。
個人的にテリーギリアムのビジュアル、映像が好きなので満足。ただ今回はいつもよりちょっと押さえ目な印象を受けた。
個人的にはテリーギリアム映画が持っとみたいが、現代で高く評価されるような映画はこの人は作れないのでは?とちょっと古さと、限界を感じた映画でもあった。
想像をいくつも超えた
・単純にドン・キホーテの世界で話が展開していくなんて浅はかな想像を大きく超えていった。映画撮影現場から色々すぎる世界への展開が凄かった。
・映画の撮影が原因で自らをドン・キホーテと思い込んでしまった靴修理のお爺さんというのが怖かったけど、発想が面白かった。加えて主人公を好きになった女の子が女優になれると村を飛び出すも、まったく成功できず娼婦になっていたりしていたのが辛かった。映画製作を含めた創作に関する闇部分が切なかったけど、そういう側面ももちろんあるわなと思った。
・どこから空想でどこから現実でっていうのが徐々にわからなくなっていくのが夢を見ているような感覚になっていくのが良かった。終始、主人公である監督がドン・キホーテの思い込みを解きたいと良心の呵責による行動があるためシーンで混乱はするも動機はわかるから大きく展開から離れなかったのかなと思った。思ったよりまとまった形で驚いた。
・ラストで主人公がドン・キホーテと思い込む末路が面白かった。悲惨といえば悲惨な末路と思えるけど、どこか幸せに見えた。女の子にとってはこれから不幸っぽいけど。
・前半で初監督の卒業制作のDVDを販売していた男は一体どこで手に入れたのだろう。意外と後半まで出てきて驚いた。それと、どうしてドン・キホーテを初監督作に選んだんだろう。
我こそはドン・キホーテ、デ・ラ・マンチャ!
ヨーロッパの時代遅れの片田舎。こんな場所、よく見つけてきたものだ。そして、気狂いした老人。イカれているのか、正気なのか、ただ、愚かで惨めな老人であることは代わりない。どこまでが現実で、どこからが夢なのか。そのあいまいな夢と現を交互を行き交うように、アダム・ドライバーがほうほうの態で大立ち回りを演じるから面白い。女にはだらしなく、けっこう見栄っ張りな男。それでいてどこか憎めない、そんな役をアダムが好演。
なんだか、訳がわかないが、これだけは言おう、デ・ラ・マンチャ、永遠に生き続けるのだ、と。
スランプ中の若手監督が再開したのは昔の作品の主役である10年間も...
スランプ中の若手監督が再開したのは昔の作品の主役である10年間もドン・キホーテになりきったままのハビエル。夢に生きる男に巻き込まれた、現実に生きる若手監督の遍歴の旅の物語。とにかく狂ってる!
ジョアナリベイロ可愛い
あー、アダムの役がジョニデなんですか。ジョニデ番見たかったなぁ。オルガキュレンコって何かこー悪女役やっても似合わないですね。
自虐教とか業者の言い間違えとか騎士とか、エリックぽいジプシー(ロマ)とか空飛ぶ遊戯団見たいなネタと、ボスズワイ~フ~~は笑えた。
創造力と狂気の違いはなんだろう
映画は才能溢れるクリエイターが作る芸術なのか、ただ大人数で作る幻覚なのか。何度も幻覚と現実がどっちかわからなくなって頭がボーッとなりました。
ドンキホーテのお話自体がアイロニーの効いた大人のおとぎ話で、さらに時代背景や映画づくりのメタ台詞も加わって、一回観ただけでは消化しきれない感じでした。
公開に感謝
『ロスト・イン・ラ・マンチャ』でこの未完の作品を知った身としては、その後稀に上がってくる情報に一喜一憂しつつ、遂にこの日を迎えられたことに感謝しています。
勿論当時とのプロット、出演者も変わり、ギリアム自体も歳を重ねた今、本来の作品ではないのだろうなと心の中で思いつつ、その相変わらずの映像美を堪能し、ツッコミどころもあるストーリーを愛おしく感じていました。
主人公のトビーは天才CM監督ながら、リアルへの拘りが半端ない、これはギリアムそのものかと思わされ、ドン・キホーテを殺したのはあなただったのねと。
途中、二人が立ち去った後にパトカーがやってくる展開を見て、まさかホーリーグレイルオチなのか?とか、中盤虚空と現実が入り混じる様を見て、夢落ちはやめてよ!などと思ってましたが(あの展開が現実というのもすごい。まさに、おそロシア!)最後はアダム・ドライバー繋がりではないですが、スカイウォーカーの夜明け的な終わりとなり、ドン・キホーテの話しは永遠に続いて行くのだなと変に納得させられ劇場を後にしました。
『そして遂に挫折を超えて・・・』
テリー・ギリアム監督と言えば、鑑賞済作品としては『12モンキーズ』、『ゼロの未来』、そして一番の印象作『未来世紀ブラジル』であろう。ディストピアSFの面白さを教えてくれた“エヴァンジェリスト”である監督の作品には“権力への抵抗”というメッセージを発信していると信じている自分がいる。
しかし、そんな監督が祟られている作品に悩まされていた事には詳しくは知らなかった。構想から30年という途方もない因縁の作品がこうして令和の時代に完成したという自体に、その執念の凄みを感じ震えてしまう。映画化の企画等はそれこそ泡沫のようにパチパチと破裂するものが殆どであろう。その中にある表現したい内容に強い固執があればある程、執念が宿るのが映画監督の本分なのかもしれない。それは不肖の子供程、溺愛することと同じなのか・・・
キャスティングにも救われた面も大きい。やはりここにもアダム・ドライバー。元々ジョニデが演ずる筈だった役を、若手注目株に代えたことは大きい。まるでNBAの選手のようなガタイとそれに呼応するかのおとぼけ顔の馬面は、圧倒的にスクリーンに映える。
モンティパイソン節(スペイン語の字幕を手で払いのけることや、電流ビリビリのVFX等)も差し込みながらのギャグセンスは、とまれ古くささも感じながらもノスタルジーに浸れる面も否定できない。ファン目線だがトータルでよく練られているのではないだろうか。
ストーリーそのものが、小説“ドンキホーテ”自体の世界観をトレースしているので、こういう境界線が溶け合ってるような話が好事家は堪らない展開だと思う。後半は破綻状態になっている流れでも、小説からの引用シーンを繫ぎ合せたようなDJMIXだと思えば面白さも感じる。現実がどんどん小説に喰われ始める展開は監督の十八番通りの作りで、その脳内“ユワンユワン”感に浸れればシメたものである。女性登場人物二人も、そのファムファタール振りが妖艶で、狂言回しとしての機能もしっかり果たしている。
虚実入り交じった世界観、まるで白日夢を浴びせられたような構築は、もしかしたら昔の映画作品のパターンの一つとして、ノスタルジックに語られることがありこそすれ、評価的には薄い印象を与えるかも知れない。証拠に後半の失速感は、自分も疲労感を感じてしまった程である。ラストのオチも、侵蝕されてしまったCMディレクターが終わらない小説の続きを受け継いでしまうという流れに、ある種の“逃げ”を思わすのも理解出来る。しかしこういう“巻き込まれ劇・偶然のアクシデント展開コント”をベースにした、曖昧模糊とした物語の映画も又総合芸術としての使命なのだと思う。これだけのビッグバジェットな“世にも奇妙な物語”は、避けず腐らずに脈々と受け継いでいって欲しい、それはラストのオチのように誰かがそれを引き継ぐように・・・。
テリー・ギリアムにしては陳腐
なかなか愉快なオチはつけている。
また、狂気のなせる喜劇にして、かつ、悲哀の「ドン・キホーテ」像を描いたという点でも成功していると思う。
もともとテンプル騎士団の要塞だったというトマールの修道院をはじめ、ピエドラ修道院、ガリピエンソ村といったロケ地も素晴らしい。
だが、それだけだ。
テリー・ギリアムは、アート指向の強い作家だと思う。
ストーリーより先に、撮りたい「画」があって、そこに強引にストーリーをくっ付けることも少なくないというのが、自分の印象だ。
ただ、その「唯一無二の世界観」(公式サイト)が素晴らしいので、仮にストーリー的に「?」となっても、十分楽しめた。
しかし、本作品は、テリー・ギリアムにしては“陳腐”だ。
始まってすぐ、いくつかのシーンで“映像美”にゾクゾクしたが、それも最初だけだった。
「仮面舞踏会」という、金さえかければ誰でもそれなりの「画」が撮れてしまう、ありきたりな展開にもっていったのは、とても残念だ。
とりあえず、「企画頓挫9回」の作品を完成させ、ギリアム自身が「本物のドン・キホーテ」にならずに済んだ。
とはいえ、彼の代表作にならないのは確実だろう。
タイトルなし
テリー・ギリアム作品は
「12モンキーズ」しか観たことないし
小説の「ドンキホーテ」も読んだことないし観るかどうかずっと迷っていたけど
予告で流れていた
「欧州絶賛」「北米酷評」が気になって先週鑑賞。
想像していたより
お話しのベースはシンプルで
奇想天外なロードムービーになるのかな?
面白いシーンはちょいちょい出て来て
それなりに笑かしてもらったし
特にアダム・ドライバーと山羊の
シーンは凄く可笑しかったし
アダムとジョナサン・プライスの
掛け合いや演技は凄く良かったけど
うーーん、作品としては僕には合わんかったです
映画の鑑賞後、
テリー・ギリアム監督が2000年に撮影を開始しジョニー・デップ、
故ジャン・ロシュフォールが参加するも
頓挫してしまった時のドキュメンタリー
「ロストインラマンチャ 」が
Amazonプライムにあったので観てみました。
不運に不運が重なり思いもしない
状況下で泣く泣く中止になった
経緯と撮影の裏事情がなかなか興味深い内容。
先にこちらを観てたらもしかしたら
本編にもっと感情移入できたかも??
いや、それだと純粋に作品を観られないか🤔
まぁいいか。
完成した本作は個人的に
好みじゃなかったけど
企画が何度頓挫しても
諦めずに最終的に映画を完成させた
テリー・ギリアム監督の
情熱と執念には心から拍手を贈ります👏
近年稀にみる駄作だった♥
敢えて愛情込めたタイトルです笑 多分自分が欧州の古文化や古典物に疎いのも要因ではあるけど、それにしてもストーリーが…難解と美化出来んレベルでチグハグだった。映画館で初めてうたた寝した気がする。もう最後のギリアム作品出演であろうジョナサンプライスを観守った映画だった。ローズ・イン・タイドランドと同じくらい混沌。それとアダム・ドライバーの存在感が苦手。下手ウマに見えてしまう。SWもそうだけど、この役者を通して役柄の機微をどうしても感じ取れない。
カイロレンの中の悪夢
まだ少年だった頃に映画館で観た「バンデットQ」。…衝撃的に魅了されました。そして「未来世紀ブラジル」「フィッシャー・キング」「12モンキーズ」等々、ギリアムエキスを摂取してきて辿り着いたコレ。観終わった後は、原題が良かったなぁ…なんて思ったりもしましたが、まぁそんな事は些末な事。展開のわりに何だか優しくゆったりした時間を味わえました。
皮肉めいた虚実がない交ぜになりながら、各々の心のなかの旅路にそっと手を差し伸べてくる感じ、「仕方がないじゃない」と生きてきた人に「仕方がない事はない」と放たれてる様に、気が付けば落涙しておりました。
そしてアダム・ドライバーであることの奇跡。ふと思って、カイロレンの心象風景を体験する様な見方をしていたら、笑える位にシンクロしてたのですよ(笑)。まぁ、それも個人的には涙を助長するネタになりましたけどね。ドン・キホーテとその作者については知っておくと良いのかもしれません。ギリアムさんは、これが入り口でも良いんじゃないかな?なんて思いました。
"業者"
異国の地での映画撮影、そして住む民の人生が狂い、主人公は現実が幻日?となり、映画の世界から抜け出せなくなるような!?
D・ホッパーの「ラストムービー」と近いものを感じてしまう、T・ギリアムが撮りたかったドン・キホーテはラストを含め堂々巡り?全然、ドン・キホーテは終わらない?
自分が観てきたT・ギリアムの作品はドン・キホーテ要素が必ずチラホラと、撮りたかった情熱は理解出来るが、まだまだ?次の作品もドン・キホーテを撮りたいのだろう?と、思わせるエンディングのオチが!??
そして、救いようがない哀しき男の末路が描かれる印象が強いT・ギリアム、彼の作ってきた映画自体がドン・キホーテそのまんまなのでワ?
突飛な描写がメチャクチャに繰り広げられるファンタジー要素を含めたブラックな展開、突き抜けた感じが足りないようにも思えたが、J・プライスの滑稽さの中にある爺さん特有な可愛さに癒され悲しくもあり、でも笑えたり老体に鞭打った演技にアッパレ!!
現実と虚構の間に輝くもの
やっと完成したのか位にしか前情報なく観たけど、
いやぁテリー・ギリアムにやられた!
嘘かホントか行ったり来たり、トビーと一緒にドン・キホーテの世界に迷い込む。
過去も混ざりながら、ドン・キホーテと荒涼な土地を旅していくうちに、自分も一緒にいるような熱く乾いた風と土埃を感じる。
どのシーンも美しくて、大きなスクリーンで観られてよかったとうっとりしながら観てました。
ちなみに原題は『ドン・キホーテを殺した男』。いろんな意味でそのとおりのお話でした。
ユニークでシリアス一辺倒にならない、そして声も素敵でアダム・ドライバーがとても良かった。『ブラック・クランズマン』も良かったし、カイロ・レンだけじゃない、今後楽しみな俳優さんになったね。
頓挫したジョニー・デップ(嫌いじゃない、むしろ好きだけど)版よりもずっと良くなったかも。
虚構がモザイクのように入り交じるテリー・ギリアムの世界が苦手な人は退屈で長い時間に、
『未来世紀ブラジル』好きな人は最高の2時間半が過ごせるはず!
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