「【テリー・ギリアム御大 30年という積年の想いを炸裂させたファンタジー大作。アダム・ドライバーのコメディアンとしての資質に驚いた作品でもある。】」テリー・ギリアムのドン・キホーテ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【テリー・ギリアム御大 30年という積年の想いを炸裂させたファンタジー大作。アダム・ドライバーのコメディアンとしての資質に驚いた作品でもある。】
- 冒頭、流れるテロップが少し笑える。-
テリー・ギリアム御大の今作品に対する複雑な思いが容易に伺えるからである。
スペインで映画制作中、スランプに嵌まった映画監督トビー(アダム・ドライバー)は学生時代に撮った作品の舞台が近くにある事を知り、バイクでその田舎村を訪ねるが・・・・。
靴職人で、トビーが口説いてドン・キホーテを演じたハビエル(ジョナサン・プライス)は、今や自分をドン・キホーテと信じ込んでいた・・。
又、可憐な少女アンジェリカ(ジョアナ・リベイロ)はかつてのトビーの言葉を信じ都会に出たが、今は強欲で、サディストのウォッカ王の情婦になっていた。
後悔の念に駆られるトビーがドン・キホーテに取り付かれたハビエルに”業者”サンチョと勘違いされ、摩訶不思議な冒険の旅に出る事に。
前半は、荒涼としたスペインの田舎の広大な風景を背景にドン・キホーテとと”業者”サンチョのアドベンチャー要素も少し盛り込まれた行脚シーン
そして後半は、アルハンブラ宮殿か!と思うような豪華絢爛な宮殿の中で繰り広げられる可笑しくも恐ろしくもある不可思議なシーンの数々に
呆けた表情でついつい引き込まれてしまう・・。
アダム・ドライバーのコメディアンとしての資質に驚き、
ジョナサン・プライスの虚構の夢を生きる老人の姿に敬服し、
強かなスポンサー、ボスを演じるステラン・スカルスガルドと男好きジャッキを演じたオルガ・キュルリレンコの不思議カップルに呆れ、
サディストのウォッカ王を演じるジョルディ・モリャの悪人面に”納得”し
ロッシ・デ・パルマの見事な鷲鼻に惹きつけられる・・。
今作に対しては色々な意見が渦巻いているようであるが、
私はテリー・ギリアム御大ワールド満開で、破綻しかけながらもしっかりと繋がる荒唐無稽なストーリーの、”映画館の大スクリーンでの見応えある作品”を堪能した。
〈ドン・キホーテに取り付かれた二人の男の壮大なファンタジー世界に魅了される。この二人の男の姿がテリー・ギリアム御大の姿とだぶって見えた作品でもある。〉