「最初っから終わりまでずっと不穏」ハウス・ジャック・ビルト 白波さんの映画レビュー(感想・評価)
最初っから終わりまでずっと不穏
トリアーの狂気性がびっくりするくらい描かれている作品。
マットデュロンがこういった役なのは意外だったけど、観るとすっごいハマっていた。新境地でしょう。
最初っから終わりまでずっと不穏な空気がへばりついており、救われる光はゼロでした。
緊張感がすごくて潔癖症というよりも異常な神経質。
度々流れる「フェイム」が彼の真理を色濃く物語っていました。
建築も殺人も芸術にみたて、全てその成功という名声を得たいが為。本当狂ってます。
遺体のポートレートを取り直すという発想がもう常軌を逸している。
特にその取り直した「怒りん坊」ですが、これが後半にも度々視界に入るのがキツイ。
こうしたシリアルキラーの深層や、その行動を描くのが巧みで、実に嫌な気分にさせてくれます。
そして死神?ヴァージの登場で頭が一瞬わからなくなるような展開を見せるんですね。
しかしこの天啓を受け、やっと完成する「家」。
トリアーが「タイトルは絶対に変えないでくれ」と言った意味がわかった気がしました。
本当変な邦題が無くて良かった、見たときストンと落ちた感じがしましたよ。
ここからのエピローグは一転し幻想的に演出されるんですが、この「旅」の情景が何とも言えない。耳にする音も終始不穏。
迎えた物語最後の「運試し」、それは抑えられない殺人衝動と同義のように感じました。
そして突然訪れる終焉とエンドロール、これは本当にハッとさせられました。
最後までその演出がうまいですね。
好みは分かれると思うのですが、ものすごい緻密で繊細な作りです。
最後まで全開で描き切った、ものすごい作品でした。
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