「なんと評価すべきか…」ハウス・ジャック・ビルト snagaiさんの映画レビュー(感想・評価)
なんと評価すべきか…
予告編だけは観ていたので、殺人鬼の話なのね、程度にしか思っていなかったが、色々な意味で裏切られた感はある。
スラッシャーホラーというと、謎の強い男(化け物)が人を切り刻み、手や首、目玉がコロコロ、血飛沫バジャーというある種の爽快感があるものだが、本作品はそうではない。確かに主人公ジャックは人を殺すのだが、その必死さやリアクションに、ともすればコミカルさを感じてしまう。なんとなれば、彼は死体を冷凍してしまうのだ。まったくジメジメしない話であり、例えば警察側との激しいチェイス、などを期待すると大いに失望することになるだろう。
ゴシックやバロックをテーマに、全体として地獄への繋がりを目指したものと思われるが、どうにも中途半端でまとまりに欠けた印象だ。あそこまでグールドをディスったのだから(クラシックファンとしては言っておきたい)、もう少し頑張れたのではないか。
殺害がだんだんと手馴れていくとともに、マット・ディロンもイケメンになって行くのに苦笑。しかし、いわゆるシリアルキラーとしての台本上の描写は浅薄で、あまり見るべきはない。
最後にジャックは死体で家を完成させるが(最初からそうしろ、と思わず突っ込んでしまった)、そこから煉獄〜地獄への穴が空いてしまう。このあたりが非常にシュールで、結局はゲヘナへ落下するジャックには蜘蛛の糸を感じさせた。キリスト教圏であればもっと共感できる何かがあったかもしれない。
2時間半を越える尺で、特に内容がない、となれば評価を悪くしたくなる所だが、どういうわけかそうはしたくならない不思議な印象だ。とりあえず、映画マニアとグロ好きな人にだけは推薦できる。一般的な感性の人を連れて行くのはやめた方が賢明である。
最後のテロップも苦笑。虐殺カットを入れておいて、人間は動物じゃないってか。ところで、邦題が覚えづらくないですか。