「少女が覗く、禁断の大人の世界。」第三夫人と髪飾り ガーコさんの映画レビュー(感想・評価)
少女が覗く、禁断の大人の世界。
ベトナムでは4日間で上映禁止された問題作。
日本で、いよいよ解禁となりました。
舞台は19世紀のベトナム。
一夫多妻制が許されていたこの時代、14歳の少女が大富豪の家の第三夫人として、嫁いできたところから始まります。
第一夫人は男の子1人。
第二夫人は女の子3人。
そして、次こそは男の子を産んでほしいと、一族の願いを一身に受けてやってきた第三夫人。
男の子を産めば妻として認められると分かっているものの、そのプレッシャーはとても重い…。
ライバル同士が同じ屋根の下で暮らすという、かなりシビアな世界に感じましたが、いざ始まってみれば、3人仲良くしているのがちょっと怖い…。
腹の底で何考えてるのか分からない。
優しいアドバイスも、実は流産させるための罠なんじゃないか?
そんな不安に陥るものの、実はこの映画は女通しのドロドロしたバトルが主体と立っている訳ではありません。
本質はもっと別の、もっと深い人間としての本能、さらにはベトナム文化や風習、習慣、制度などが複雑に絡んでくる、かなりディープな内容。
ベトナムでは未成年の性描写が問題視され、上映禁止となったみたいですが、でも当たり前のように未成年との結婚が許されていた時代があったことは事実。
何も分からない幼い子供が、突然大人の世界に足を踏み入れる…。
第三夫人の目線から見る大人の世界は、かなり濃厚で、緻密で、大胆で、見ているだけで刺激がいっぱい。
まるで覗いてはいけない禁断の世界を覗いているかのような気持ちにさせられました。
そして、その禁断の世界に広がるのは、ベトナムの美しい風景。
世界遺産にもなっている、美しい緑と岩山と川のせせらぎに魅了されます。
彼女たちの美しい黒髪が、小川にサラサラと流れる描写は、うっとりと見とれるほど…。
遠くに見える山々と澄み渡るような澄んだ空気の情景が、現実の濃厚な世界と対比して、いつのまにか、この世界の虜になっていました。
今作は、19世紀のベトナムをたっぷりと堪能できる、魅力的な作品となりました。
ベトナムでは、まだまだ社会的に娯楽という観点で規制が厳しいようですが、いつかこの映画が世界だけでなく、自国で認められれば良いなと思います(^^)
なかなかのマニアックで素敵な映画をありがとうございました(*´ω`*)