「男らしさって何」ある少年の告白 nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
男らしさって何
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幸せそうな幼少期から一転、不穏な音楽の中、青年となった主人公がとある施設に入って行く、というサスペンス調の冒頭部分から引き込まれました。
主人公が入ることになった同性愛者矯正施設の描写は嫌な圧迫感緊張感が漂い、自己否定させ救済を謳う人格無視の精神論的狂信的なプログラムはやはり理不尽で恐ろしいです。
いつの時代だよと思ってしまいますが、現在でもこのような施設が存在しているということで、更に恐ろしいです。
とは言え、日本でも公然とこういう偏見がまかり通っているようで、他国の話とも言い切れないような気もします。
従順な良き妻という価値観に縛られた女性への視点もあり、これもまた同様に。
不穏な施設の描写とともに、同性愛者であることを自覚する主人公やその両親の、戸惑い、葛藤などの丁寧な描写も印象的です。
やはり役者陣の演技がそれぞれに繊細で素晴らしかったです。
一定の価値観から外れた者を悪として扱う社会の理不尽さを見せるサスペンスと、社会の理不尽な価値観に抗う青年と家族の人間ドラマが、上手く組み合わされていたと思います。
自分自身を認め家族とも認め合える、希望の持てるラストは良かったです。
しかし、矯正施設での、男、男と連呼するけど男らしさって何だよという中で、言うなれば最も男気を見せた青年の結末は、なんとも辛いです。
家族から認めてもらえない絶望からか、主人公のように認めて受け入れてくれる家族の誰かがいれば違ったのかと、やるせなさが残ってしまいます。
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