「あなたも導いてくださるわ」ある少年の告白 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
あなたも導いてくださるわ
僕は、こういう音楽で始まる映画が好きで、冒頭5分ですでに中身に対する信頼が出来上がっている。それは単に思い込みかも知れないが、結果として、その思い込みは間違いでなかったと思えた。
価値観の強制と、虚栄に満ちた嘘っぱちの現実にうんざりの少年。彼が押し込められた矯正施設では、彼の中の良心や良識を次から次へとぶち壊しにかかってくる。まるで、一番初めから人格の構成を作り直すかのように。
それほど、同性愛嗜好を心に宿すことは悪なのか?
彼らをあれほど追い詰めることが善なのか?
「自分が間違っていた」「アーメンと言え」と迫る矯正施設の実態のなか、「フリをしろ」と乗り切り方を伝授してくるクラスメートの助言は、まさしく、痛みの共有者からの助け舟だ。最後の最後、どうしようもなく逃げ出した彼に対して、「こんな苦痛は間違いだと気づいたわ」と母が遅ればせながら言ってくれたことがせめてもの救いだった。
ルーカス・ヘッジスは、『マンチェスターバイザシー』の時と同じく、繊細なハートの持ち主の役を見事にこなしていた。
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