「変わるべきは僕じゃない。」ある少年の告白 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
変わるべきは僕じゃない。
よかったです。私の中でのジョエルエガートン株が急上昇…
監督して、自分は悪役演じて。ねぇ。
同性愛者にたいして、「治療できる」という考えがあることにガックリきます。昔の話ではなく今の話ってことにも。日本でも同性愛の治療だか矯正だかの発言をした政治家がいたので、想像力が欠落している人はごまんといるってことです。残念ながら。
監督最新作がなかなか公開しないグザヴィエドランが、だいぶ精神を病んでいる矯正施設の仲間として出演しています。久々に見たけど、やっぱいいわー。ちょっと体が分厚くなった感じしました。マチュアな魅力ですな。
ルーカスヘッジスもますますのご活躍で。私のみたい感じの映画にばっかり出てくれてありがたいよ。次回作のベンイズバックも楽しみ。
ジャレッドは牧師の息子で、優等生で、高校時代の彼女もいるけど、男女の性交渉に及び腰で、彼女の誘いを拒否し続けて結局卒業と同時に別れます。
入った大学で仲良くなった男子にドキドキしちゃって悩みます。で、相手男子も隠れゲイらしく、彼からレイプされてしまいます。
その事を黙っているのに、暴露を恐れたレイプヤローは実家に匿名の電話をいれる。
息子がキリスト教の教義の中に居場所がある子だったら、ラッセルクロウ演じる父は誠に尊敬すべき良い父なんだろうとも思った。
なんだけど、キリスト教に限らず宗教って古い考えだから、今の人間を包み込めない。性能が前時代的なのに、それを認められない。私はそれを思考停止だとして断罪してしまう。
傲慢だとは思うけど。
なので、ジャレッド!そんな父親も土地も捨てちゃえ!って気持ちでした。
ニコール・キッドマン演じる母が良かったです。
夫に従うだけだった妻から、息子への愛のために夫に背くことにしたわけで、かっこよかったです。
そして、多分ニューヨークに移り住んだジャレッドは、父母に入れられた矯正施設の告発記事をかいたんですね。で、帰省して父と向き合います。
ジャレッドが父に言いました。変わるべきは僕ではなくてあなただと。
わたしはスクリーンのこちら側からそうだ!と(心で)叫びました。
父と子の関係を続けたいならば、変わるべきはこの場合父です。同性愛者であることが愛せない理由としている、父の方が変わるべきです。
それ以外はないです。ジャレットはまったく変わる必要がないです。
ともすれば少数派を責め、弱者に変化を求めてしまうのが、多数派・強者の悪癖で、私自身も多数派に属する時、少数派を非難し、変化せよと思ってしまいます。
が、多数派が間違っていると思います。なので、自分が数の多い方にいる時の振る舞いは厳しくチェックしないとと思っています。
ジャレットの宣言に、高潔…尊い…と思い、ジャレットにスタオベしました(心の中で)。
字幕翻訳・松浦美奈