雪子さんの足音のレビュー・感想・評価
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イケメンの困り顔バリエーションを堪能
謎めいていて、いろいろと空想の捗る映画ですが…物語の語り手、薫くんを演じる寛一郎さんの演技力も見どころのひとつです!
寛一郎さんの表情の豊かなこと!特に、困惑した顔のバリエーションが素晴らしかったです。顔のアップが多い映画なので、たっぷり堪能できます。目に、眉に、気持ちが細かく表現されていて、セリフ以上に感情が伝わってきました。
初日の舞台挨拶で、吉行和子さんが「撮影で一番楽しかったこと」を聞かれて「寛一郎くんの困った顔を見るのが楽しかった」と仰っていたのもなるほど!と思えました。
じわじわと具現化される普通の人の欲望の様か?
静かな映像のなかに少しずつ泡立ち始める狂気と、寛一郎さんが呑み込まれるのかどうか、行きつ行かれつ、細やかな表情から伝わる戸惑いをゾクゾクしながら感じました。
普通の人の奥底に静かに眠っている欲望がじわじわ具現化される様は、まさに真綿で締め上げられていく感じで、寛一郎さんの眉の歪みがええ感じです。
終わったらごはんが食べたくなります。とくにうどん。
ちょっと怖い大家の雪子さん、その大家さんのアパートに入居した大学生の薫くん、同じく入居者の女の子の小野田さんのお話。
美味しそうな食べ物がたくさん出てきます。
主演の雪子さんを演じる吉行さんと浜野監督へのインタビューによると、地元の調理専門学校が協力しているとか。
https://cinema.co.jp/column/satori-ito/article/276
寛一郎さん演じる薫くんが料理をおいしそうに食べるので、終わったらごはんが食べたくなります。
私はうどんが食べたくなりました(笑)。
はっきりとは出てこないけど、大家さんの雪子さんは、主人公の薫くんに恋をしてるんじゃないかなと思います。
薫くんも薄々気づいてるけど、認めることは出来ないし、受け入れることもできない。
一方で薫くんは、おいしいご飯を出され、おこづかいももらって、胃袋と財布を掴まれてだんだん困惑していく。
薫くんは作品中、一貫して受け身で、多くの場面で眉毛八の字の困り顔。
薫くんがもっとちゃっかりした男子だったら、お互いうまくいっただろうにな…。
吉行和子さん、とてもきれいです。
原作の雪子さんは願望を叶えられなかったけど、映画では叶えられたのかも。
また、もう1人の登場人物である小野田さんも心に残ります。
どうしようもない深い孤独と長い苦しみ。
お金を出してでもすがりたいときってあるよね…と、原作からすると同年代の小野田さんに、ちくちく痛む胸で共感してました。
幸せになってほしいと心から思います。
私もこれから歳を重ねて、おせっかいおばさんになっていくのでしょう。
誰かにおせっかいをするたびに、自分のなかの雪子さんと出会い、自分を戒めたり、笑ったりするんだろうな。。
折に触れて思い出すことになるだろう、心に残る映画。
吉行和子さんが、エロ恐かわいい!
木村紅美の原作のもの悲しく胸がぞわぞわする感じはそのままだが、吉行和子、菜葉菜、寛一郎、大方斐紗子、野村万蔵といったチャーミングな俳優たちのおかげで、登場人物ひとりひとりは、ずっと人間味にあふれ、魅力的だ。
優柔不断でずるくて煮え切らない薫君も、寛一郎のせつない表情のせいで、ちっとも悪く思えない。
雪子さんは息子にも、おいしいご飯を食べさせて、結局彼を食べてしまったのかもしれない。恐いし、毒親なのかもしれないけれど、やっぱりすこしも憎めない。
雪子さんとお友達の高梨秋江さんを見て――祖母や母たち世代の女性の話を、もっともっと聞いておけばよかった、聞いておかなければと思った。
きれいな爪切りが、ほしくなった。
『雪子さんの足音』の続編が、ぜひ読みたいし、観てみたい。
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