「ブラック不足なメン・イン・ブラック」メン・イン・ブラック インターナショナル 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
ブラック不足なメン・イン・ブラック
ウィル・スミス&トミー・リー・ジョーンズ主演で
大ヒットしたSFコメディシリーズのスピンオフ作が登場。
主演は雷神ソーでおなじみの爽やかマッチョ、
クリス・ヘムズワース&『クリード』以降
大作出演が続くテッサ・トンプソン。
監督は『交渉人』『完全なる報復』等の硬派サスペンス
を経てなぜか脳筋ハッチャケ映画『ワイルドスピード
ICE BREAK』に抜擢されていたF・ゲイリー・グレイ。
過去作では人種の“るつぼ”とも呼ばれるNYに多様な
エイリアンが生息しているという設定が妙味だったが、
今回はインターナショナル(国際的)の名の通り、
NY、ロンドン、パリ、マラケシュ、イタリアの孤島と
世界中を飛び回ってMIBが活躍する展開で、『007』の
SFバディムービーVer.とでも呼べそうな趣。
ま、色んな人種と共生してるのは今やNYに限った話では
無くなってきてる訳で、『世界規模でMIBを描く』
ってのは割と今日的なアップグレードなのかもですね。
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今回の主人公コンビはどちらも若手。
イケメンで優秀だがお気楽だったり女難の相も濃いめのH。
腕はあるが自信過剰が祟って面倒を呼び込むことがあるM。
Kに代わるベテランポジションも欲しいという所で
若手を支える支部長役にリーアム・ニーソン、そして
『MIB3』から続投のエマ・トンプソンという布陣。
相変わらずおっかないんだか笑えるんだか分からない
おかしな風貌のエイリアンがワチャワチャ登場するのは
楽しいし、ピカピカ奇妙なガジェットも次々に出てくる。
ヘムズワースがハンマー(小っちゃい)を掲げたり
リーアム兄さんが「パリは嫌いだ」とぼやいたり、
内輪ネタもちょいちょい盛り込んで笑わせる。
一方、バイクチェイスや敵宇宙人とのバトルなどの
アクション面やHの記憶を巡るサスペンス要素など、
アクションエンタメとしての作りは過去シリーズの
ユル~い感じではなくて割とガッチリしている感じ。
これまでのギャグ寄り路線から、“コメディ要素のある
アクション”へと、微妙にジャンルがシフトした印象。
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ただね……
全体を眺めれば過去作よりスケールは大きくなったし
エンタメとしてもよりバランスの取れた作りになって
いるはずなのだけど……どうもインパクトに欠ける。
万年仏頂面だが不意打ちでボケをかますKと
エイリアンに振り回されてぼやきまくるJの
夫婦漫才のようなやりとりには大いに笑わされ、
ちょっとだけホロリともさせられたものだが、
今回のH&Mコンビは、記憶に残るような笑い
に乏しく、感情移入もなんだかしづらかった。
Hのお調子者ぶりはそこそこ笑えるがステレオタイプに
思えるし、Mは自分を売り込もうという圧が強過ぎる上に
そのせいで危機を招いたりもするのでちょっとイライラ。
歩兵のポーニィも、口の悪いパグ犬くんやコーヒー好き
細長ムシ軍団と比べるとあまり印象に残るキャラ
では無かったかなあ。愛らしい風貌なだけで笑いにも
つながらず、かといってドラマにもつながらず。
リーアム・ニーソンが裏切り者という展開も、そもそも
登場人物が少ないのでそこまで意外性は無い。まあ、
彼がカッチリとした悪役を演じるのは珍しいので
そこも見所と言えば見所かもだが……。
彼とHの父子のような関係を掘り下げられれば
もう少し笑いとシリアスのバランスが取れたのかも。
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何より、なんだろな、ギャグにごっそり毒気が無くて、
イマイチ締まらない笑いになっている気がする。
過去作が「語り口は粗いし毒舌だがドカンドカン
笑いを取れる漫才」だったとするなら、今回は
「語りの技術はそこそこだが、客をドッと
沸かせる笑いには乏しい漫才」って印象かね。
過去シリーズを知らない人なら「ヘンな宇宙人が
わんさか登場するSFアクション」くらいの感じで
あまり不満は感じないのかもしれないが……
過去作並みの笑いを期待してた自分としては、
ブラックユーモアが減り、キモカワエイリアンも減り、
主人公コンビもパンチ不足で、最終的な印象として
『小奇麗にまとまったそれなりのSFアクション』で
終わっちゃったかな。判定2.5~3.0といった所。
やや高めに、まあまあの3.0判定で。
<2019.06.14鑑賞>