「アニメ版を好きすぎたせいですね」アラジン 腎臓さんの映画レビュー(感想・評価)
アニメ版を好きすぎたせいですね
アニメ版が大好きだったことに加え、「美女と野獣」の実写が良かったこともあって、自分の中のハードルが上がりすぎたいたようです。
私はこの映画をミュージカル映画として見に行きました。もちろん歌・ダンス共に素晴らしかったのですが、アニメを超えたとまでは言えません。
一番残念だったのがWhole New Worldのシーン。あのシーンは、王宮に閉じ込められていたジャスミンが初めて外の世界へ飛び込む、その開放感こそが重要なのです。見るもの全てが新しく、絨毯で進めば進むほど心がときめく…そんなジャスミンの感動があの曲に、そして彼女の表情や仕草全てに込められているのです。
アニメ版では、アラジンとジャスミンはエジプト、ギリシャ、中国まで旅をしています。描写されてないだけで、もっともっと遠くまで飛んでいったのかもしれません。雲の上まで飛べば、そこに広がる「ダイアモンド」のような空を見ます。この場面で初めてジャスミンは世界の広さ・美しさを知るのです。ですが実写版では、あまりこの「ジャスミンの感動」に主眼を置いているようには感じませんでした。ただ美しい景色の中を飛んだだけ、しかもその景色も、ずっと同じような眺めなんです。私の想像力・読解力が足りなかっただけという可能性は大いにありますが…。
その他の曲にもいろいろ思うところはありますが、全体的に「アクションに偏っていたために曲のシーンが盛り上がりに欠けた」という印象を受けました。たぶん、「美女と野獣」でミュージカル要素がかなりボリュームアップしていたから、こちらで物足りなくなってしまったんだと思います。
もう一つ気になったのはキャラクターの描き方でしょうか。特にジャファーですね。作中で彼は、己のコンプレックスを原動力として動いています。たぶん、それが彼に対して魅力を感じられない理由です。
アニメ版のジャファーは、ただただ権力のみに執着します。彼は権力が欲しいのであり、ある意味それは前向きな動機であり、彼は前進しているのです。
しかし、実写版のジャファーは、自己顕示欲を満たすために権力を欲しているのです。つまり、足りないものを満たすというのが彼の動機です。アニメ版に比べて、ずいぶんと消極的です。そのためにどうしても小悪党のような印象を受けてしまいます。悪役に人間性を加えたかったのでしょうか。ですが私はカリスマがある悪役が好きなので…笑
あと、イアーゴですね。これはちょっと、唖然としました。彼から人格が取り上げられてしまっています。それはイアーゴではなく、ただのオウムです。アニメ版2作目ではかなり重要な役になりますし、個人的にとても好きなキャラだったので非常に衝撃を受けました。
最後にジーニー。かなり人間味が加えられていましたが、私はそれは要らないかもなぁ…と思いました。アニメ版のジーニーの性格がどこか人間離れしているのは、彼の底抜けの明るさから来ていると思ってました。たしかにジーニーは怒りや悲しみもあらわにします。しかし、人間のような苦悩はしません(と、思っています)。だからどんなに絶望的な状況であっても、ジーニーの明るさにどこか救われていると思うのです。
ですが実写版のジーニーは、最終的に恋をし、人間になります。私達と同じ苦悩する存在になってしまったのです。ですから、ジーニーが人間になった時に感じたのは、あの明るさを失ってしまったという喪失感でした。(かなり個人的な感想ですが)
ここまで批判しかしていませんが、それでも製作陣が熱意をもってこの作品を作っていることは、十分画面から伝わってきました。歌も映像もとても美しく、魅了されること間違いなしです。見ていて楽しく、ハラハラする場面もたくさんあります。私はアニメ版への偏愛ゆえに評価を下げていますが、きっと大勢の方が楽しみ、感動できる作品だと信じております。
アニメ版ホールニューワールドは様々な国に行ったりするけど、実写版はアグラバーや周辺の海や砂漠で完結していて規模が小さくなってる。自由に世界を感じたいアニメ版ジャスミンは開放感を重視して前者を、国を治める者として民を考える実写版ジャスミンは後者の表現に落ち着いたのかな?と感じました!
すごく分かります、私もアニメ版よく見てました。
魔法の絨毯のシーンに違和感がありましたが、そっか、世界中を旅してたんだ!
参考になる感想ありがとうございました。
私は個人的にアラジンをもっと主役っぽく描いて欲しかったです。