「斎藤工と齊藤工の多面性を体感する」MANRIKI nnetmさんの映画レビュー(感想・評価)
斎藤工と齊藤工の多面性を体感する
トレーラーのイメージから、スプラッター・ホラー・グロ要素割合予測は8割だったけれど、実際に観たら3割程。
上記のジャンルは怖くて、お金を払って見た事が無い自分としては、アイロニカルな人間ドラマがメインだったので、劇場に足を運んで良かったと、時間が経つ程思います。
何故全国で5館しか上映されていないのか、逆に不思議です。
謎のイメージコンプライアンスなんでしょうか。
社会へのアンチテーゼもあり、清濁併せ呑んだストーリーの最後には、斎藤さん自らの精神と肉体を捧げた演出とメッセージ。
韓国で受賞したのは、そういう事かと腑に落ちました。
前半 斎藤工氏が終始セクシー。
怖がらず観てください。
色々と得した気持ちになります。
中盤 よくいる感じ悪い男。
あなたの周りにも、こういうゲス野郎いますよねのテイ。
ラスト 落とし前をつけるが如く、身体を張った斎藤さんと永野さんからのダブルメッセージ。
今回は清水監督ですが、女優さんを撮る時に印象的だった風の使い方と、齊藤監督作品でもお約束な、レースカーテン使いの演出が好きです。
思わず笑ってしまったのは、彼氏の撮影時やSWAYさんの輩ぶり・各所で登場する、斎藤工とその仲間達、であるバイプレイヤーズの皆様。
スロー気味で神野さんを追いかけるシーンも、ついニヤッとしてしまいました。
齊藤作品と言えば、神野三鈴さんですが、次回作以降は、手塚とおるさんも出演してくれないかなと、個人的に楽しみにしています。
永野さんの、違和感の無い女装(ジェンダーレスな衣装と言うべきかしら)・数々の映画へのオマージュ・シュールレアリズム感は悪く無かったし、カラコンを付けた金子ノブアキさんのシーンも怖かったですが、音楽は評判通りでした。
群馬ナンバーのSWAYさんは、最終的にどうなったのか?だけはモヤッとしましたが、1時間半弱に凝縮出来た事に拍手したくなりました。
長々と見せておいて、無駄に疲れる大作もどきより、1時間半弱なのに、いい意味で2時間見た気にさせる、不思議な感覚の実験的映画。
エンドロールも、こういうのが観たかったという痒い所に手が届く仕様になっており、監督の自己満足に終わらず、プロデューサー齊藤流おもてなしが、相変わらず散りばめられていたような気がします。
日常に蔓延る不快な現象を、映画だからこそ炙り出してしまえという心意気、とても共感できました。
☆0.5はそのオマケです。
更にチームMANRIKIが、次回以降の作品も飛躍される事を祈念しております。
よくありがちな「トレーラーは面白かったのに映画つまんないじゃん」の珍しい逆バージョンになっていますので、最後に鑑賞を迷っていたり気になっている方へ。
『評価やイメージに囚われず、観て損は無い作品』
と記しておきます。