モンスターハンター : 特集
モンハン未プレイで鑑賞してみたら…すげえ楽しい!
異世界転移×ラッシュアワー!? 熱狂的に勧めたい一作
日本の大ヒットゲームが、ハリウッドで、ド肝を抜かれるほどの“超スケール”と“超迫力”で実写化された! 3月26日から公開される「モンスターハンター」は、誰彼かまわず熱狂的に勧めたいほど、めちゃめちゃに楽しい一作だ。
ちょっと興味はあるけど、でも、ゲームファンしか楽しめないのでは? そう思っている人は、ぜひこの記事を読んでいってほしい。
映画.com編集部の“モンスターハンター未プレイ”編集者が、実際に鑑賞してきたレビューをお届け。本作を激推しする7つの理由を紹介するので、鑑賞するかどうかの参考にしていただければと思う。
[激推しする理由①]とにかく気持ちいい! 大スクリーンで頭空っぽにして見て!
まず、筆者は30代の男性編集者だ。ゲーム版「モンスターハンター」は、高校時代に友人たちがPSPで遊ぶのを横目で見ていたくらいで、自分でプレイしてみたことはない。
映画版本編を鑑賞したのも、この特集記事を書くからだった。つまり「仕事だから見た」わけ。ところがそんな冷めた気持ちは、「新たな世界」という文字が躍るファーストシーンを目撃した瞬間に、遥か彼方へと吹き飛ばされていった。なんだこれ、絶対に楽しい映画じゃん……!
具体的にどこがどう良いのか、それは追って詳しく述べるとして……とにかく味わうことができたのは、体がバラバラになるんじゃないかと思うほどの快感。大迫力をこえる“超迫力”の映像と、興奮に次ぐ興奮の“超展開”を見る間、僕の脳内ではドーパミンがドバドバと出ていたと思う。
映画ファンならば、この迫力のひとときを大きなスクリーンで、細かいことは考えずに味わってほしい。きっと、破壊的に気持ちいい映画体験をもたらしてくれるだろう。DVD・ブルーレイや配信を待つのではなく、劇場公開されているうちに、ぜひ。
[激推しする理由②]物語はまさかの“異世界転移”もの! リセット不可能の緊迫展開
ではここからは、具体的にどこがどう良いのかに言及していこう。監督は、こちらも日本の大ヒットゲームを実写映画化した「バイオハザード」シリーズのポール・W・S・アンダーソン。彼の繰り出した本作は、想像していたものとはまるで別の物語だったから驚いた。
特殊部隊を率いる軍人アルテミス(ミラ・ジョボビッチ)は、謎の失踪を遂げた別部隊の捜索のため、砂漠を偵察していた。すると遠く地平線の向こうから、嵐が地表を吹き上げながらやってくる。いや、嵐というよりは、それは“黒い雲の津波”と表現したほうが近かった。あっという間に飲み込まれたアルテミスたちは、激しい衝撃の後、気がつくと見知らぬ砂丘に横たわっていた。
無線は通じずGPSも役に立たない。さまよい歩いていると、捜索していた別部隊の装甲車とバギーを発見した。何かと戦闘した形跡がある。しかし隊員の姿はなく、ガラスのように結晶化した砂の上に、不可解なほど黒焦げになった焼死体が転がっていた。
さらに前方には、クジラよりも大きい“生物”の白骨が砂に半分ほど埋もれている。恐竜か? ありえない……。何者かが「ディアブロス!」と絶叫した。アルテミスら軍人たちは地響きを感じ、弾かれたように後ろを振り向く。巨大な、あまりにも巨大な生物が、砂のなかを泳ぎこちらに迫ってきていた――。
物語はまさかの“異世界転移もの”だった。屈強な軍人たちは、突如として現れたモンスターを目撃し震え上がる。ゲームならばモンスターに踏み潰されても、セーブポイントなどに復活し再チャレンジできる。しかし彼らにとってこれは“現実”。命を落とせば、次はないのだ。半端ではない緊迫感がみなぎる展開に、爪が食い込むほど拳を固く握ってしまった。
[激推しする理由③]モンスターの迫力がそりゃもうとんでもない
最新技術で生命を注ぎ込まれたモンスターたちは、途方もなくリアルで、どこまでも恐ろしく具現化されている。異形のモンスター“ディアブロス”の皮膚は、ナイフなんて歯が立たないことが確信できる。感情の乏しい瞳を見れば、このモンスターとは絶対に分かり合えないと思い知らされる。
ディアブロスが咆哮し、そして火竜“リオレウス”が空高く舞い降りてくる様子を目撃したとき、観客は圧倒的な絶望感に苛まれる。ハントされるのは、自分たちのほうだ――。
それでもアルテミスたちは、生きるために立ち向かう。その運命や、いかに。
劇場公開時には、迫力の体験ができるIMAX 3Dや、MX4Dおよび4DXでの上映も行われるという。そんな環境で本作を鑑賞したら、観客は一体、どうなってしまうのか……心して映画館へ足を運んでみてほしい!
[激推しする理由④]前半はミラ×トニー・ジャーの新生「ラッシュアワー」の趣で良い
緊迫のシーンだけでないのが、この映画の優れているところ。極限状況の“緊張”と、笑いを誘う “弛緩”が連続するので、心はアップダウンを続け、飽きることなくエンドロールに突入する。
特に前半は、アルテミス役のミラ・ジョボビッチと、異世界のハンター役を担ったトニー・ジャー(アジアが誇る大スター!)の関係性がユニークで良い。彼女らはひょんなことから出会い、言葉が通じず互いの素性がわからないため、最初は普通に殺し合ったりする。両者は真剣に攻撃しているのに、なぜかその様子を見るとほっこりさせられる。
やがて2人は互いに敵ではないと理解し、モンスターという“より巨大な脅威”を退けるため協力する。アメリカ人とアジア系のバディを、軽快なコメディとアクションを交えて描いていくわけだが、それはクリス・タッカー&ジャッキー・チェンが共演した大人気シリーズ「ラッシュアワー」を彷彿させる。映画ファンにはとても嬉しい雰囲気が充満する。
ついでに、メインキャラクター2人について言及しておこう。ミラ・ジョボビッチ演じるアルテミスは、軍人ならではの体力と知識で異世界を生き抜いていく。消毒するため傷口の上に落とした火薬をさく裂させ、「ううーッ!」と叫ぶシーンもあり、「久々に見たなこれ」と妙にテンションが上がってしまった。めちゃ頑丈なタイプで、例えるなら「ミッション:インポッシブル」シリーズの主人公イーサン・ハントを5倍くらいタフにした感じだ。
そしてトニー・ジャー扮するハンターは、タテ・ヨコ・ナナメと回転を交えた “無重力アクション”が大きな見どころ。遠距離からは爆発する弓矢でモンスターを射抜き、近接では身の丈よりも大きい剣で一刀両断……アクションもすごいが人格の魅力もとてつもなく、物語終盤にはハンターのことが大好きになっている。見ればわかる、これは惚れてしまう。
[激推しする理由⑤]山崎紘菜らサブキャラクターも躍動! しかし油断は禁物…
映画「バイオハザード」シリーズでは、日本から中島美嘉とローラがそれぞれ出演したことでも大きな話題となった。本作「モンスターハンター」では、TOHOシネマズの幕間映像でおなじみの山崎紘菜が人気キャラクター・受付嬢役を担い、ハリウッド進出を果たしている。大団長役のロン・パールマンらとともに、最序盤と後半で大立ち回りを演じるので要注目だ。
さらに、アイルーというネコみたいな獣人も登場する。僕はてっきりマスコットキャラかなにかだと思っていたから、本作のビジュアルには大いに驚かされた。ゲームでもあんな感じなの……?
サブキャラもかなりの存在感を見せつけるが、油断は禁物。なにしろポール・W・S・アンダーソン監督は、主人公たちに降りかかる絶望を“パーティーの壊滅”で表現しがちなクリエイターだから……。
[激推しする理由⑥]共闘したり、肉を焼いたり 後半はしっかり「モンハン」的楽しさ満載
物語後半は、未プレイの筆者でも知っているくらい有名な「モンスターハンター」らしさが満載。例えば、アルテミスとハンターがモンスターの肉を焼き、かぶりつくシーンがある。本当においしそうなので、お腹の音が鳴らないよう気をつけて!
さらに超巨大なモンスターに対し、さまざまな武器を持ったキャラたちが協力して立ち向かっていく場面も。聞けば、モンスターの弱点を突いて狩るという、ゲームならではの要素が細かく盛り込まれているのだとか。製作陣の原作への愛を、まざまざと感じさせる完成度だった。
本作、ややこしいテーマ性はなく、あるのはただただ爽快でド迫力の映像世界のみ。誰しもが頭を空っぽにして見ることができるので、誰にでもオススメできる。特に学生さんは、春休みを利用して鑑賞してみると良い。きっと損はしないだろう。友だちやパートナー、さらには親子やファミリーで行き、不安なことも何もかも忘れて、ワイワイ楽しむのも◎だ。
[激推しする理由⑦]人間 VS モンスターの描き方が他作品と異なるので興味深い
最後に、個人的に最も感銘を受けた部分に言及し、この特集を締めくくろう。
人間とモンスターが対峙する作品は、古今東西、数多ある。例えば東宝が生んだ「ゴジラ」シリーズでは、巨大なゴジラに対して人間はほぼ無力であり、未来的な科学兵器で抗うか、あるいは別の怪獣との戦いを傍観するほかない。
さらに「ジュラシック・パーク」シリーズも、恐竜を前にした人間は“戦う”ではなく“逃げる”ことに専念する。「パシフィック・リム」は、人がイェーガーと呼ばれる巨大ロボットに乗り込み、襲来する怪獣と激闘を繰り広げる。マーベル・シネマティック・ユニバースのヒーローたちは、スーパーパワーを駆使して地球に迫る脅威と相対する……。
つまりこれまで、“スーパーパワーも巨大兵器も持たない普通の人間が、巨大なモンスターと生身でぶつかり合う映画”は、ほとんど例がないということだ。
しかしながら映画「モンスターハンター」は、違う。私たちと同じ“普通の人体構造”のアルテミスらが、ファンタジー世界の巨大モンスターに対し、剣や弓を軸とする前近代的な肉弾戦を仕掛けていくのだ。
彼女らは絶対に勝てないと確信できる戦力差を、無謀に無謀を重ねることで埋め、死の淵にタッチしながらも、やがて打開策を見出していく。絶望が濃ければ濃いほど、逆転したときの破壊的な快感を生む――このパワープレイとも思える筋書きが、本作の真骨頂である。
中盤のVSディアブロス、終盤のVSリオレウスはまさに、開いた口が塞がらないほどの衝撃をもって描かれる。そしてラストシーンは予想だにしない展開を見せる。最初から最後まで、ドーパミンが溢れ出て止まらない映画だった。映画館で体感し、僕と同じ気分を味わってほしいと強く願っている。