「リア充に憧れる二人の悲しいダンス」ソニック・ザ・ムービー 傘さんの映画レビュー(感想・評価)
リア充に憧れる二人の悲しいダンス
酒場の下品なヤンキー系パーティで踊るソニック
トニースターク顔負けのクールなステージで一人踊るドクター
正反対のようで根本的な部分は楽しい時は踊りたいけど、
人前でそんなことをする資格が自分には無いと思い込んでいる孤独な天才そのもの。
ソニックは地球の人間社会というリア充の世界に憧れていた。
今まで独りでリア充のフリを何度も自然に練習してきた。
ドクターも学生時代運動音痴故、
人前で殴られてしまい笑われた事件がトラウマになっていた。
いつまでもそのことは根に持っている。
でも本当は楽しい時は踊りたくなるような明るい人間の本性を隠し持っていた。
純粋にリア充に憧れたソニックの踊りはクールで完璧だ。
トムを呆れさせながらも圧倒的な魅力がある。
ドクターもソニックの研究という人生最高の瞬間は思わず一人で踊ってしまうくらいウキウキしてしまう。
だからエージェントのストーンが一緒に踊っている事に気づいた時は素の表情で驚いてしまった。
一番見せたくなかった自分を見られたからだ。
本当はみんなと一緒に踊りたい。
でも、どれだけ酷いことを言っても自分に寄り添ってくれる唯一の親友ストーンには素直になれない。
「天才故に自分以外全員バカに見える」純粋かつ最低最悪な本音を何度も言えるくらい信頼してしている仲なのに。
人間不信故いつまでも心を開けない。
なんて悲しい性だろうか。
結局ドクターの気持ちは誰にも理解されないままだった。
サンフランシスコのビルに現れたドクターが本気で開発した武装衣装を見たトムとその彼女マディは「コミコン帰りか?」と彼を笑う。
コミコンとは日本でいうコミケだ。
彼にとって空力や耐熱を追求した理想のスーツは世間でいう恋人二人からみたら所詮「コミケ帰りか?」と笑われる程度にしか思われていなかった。
非リアの人生を送り続けた彼にとって最悪の侮辱だろう。
恋人の存在なんてこの世から認められない、だからドクターは彼女を愛人か?と罵った。
それがドクターにできる最大の口撃であり自心への防御でもあった。
ソニックとドクター、陰陽二人のリア充志望は本来共存すべきなのが本当の正しい世界かもしれない。
しかし実際の世の中はまだ不器用でそんなに優しくはない。
グリーンヒルの住人は善悪の基準を多数決という圧倒的な判断で下しドクターをキノコの世界に隔離した。
皆ソニックを英雄と讃え喜び、トムの親友が「今夜の出来事はもう忘れろ!」と呼びかけ解散した。
後日、警察のお偉いさんもトムに対しドクターの存在自体がそもそも無かったことに決めたと伝える。
トムもドクターを倒し特別な報酬を期待していたが、大したものはもらえず内心ガッカリしていた。
結局人間世界なんてそんなものだ。
自分にとって認められない存在はそもそもこの世から無かったことにしたらいい。
見て見ぬ振りをするのが一番だ。
おそらく制作サイドはドクターそのものなのだろう。
だからドクターにはしっかり救いの見せ場がある。
キノコの世界でもソニックのハリというドクターの技術力があれば世界を転覆できる可能性がまだ残っている。
そんなたった一つの希望にすがり、クリスマスまでに地球に戻れるぞ!とウキウキしている。
彼の心にはまだストーンが残っていたからだ。
ストーンをバカにすることが友達の証だと思い込みながら、今日も雑に扱い続ける。
外から見るとリア充に認められたい純粋な気持ちは既に執念の塊そのもので狂気にみえるかもしれない。
ドクター自身の素直な気持ちをストーンへ正直に伝えられた時、彼の魂は救われるだろう。
ソニックとドクター。
超越的な能力を手に入れた二人は正反対な存在だ。
でも
リア充になりたい、親友がほしい。
誰もが心に秘めている思い、叫びは二人とも一緒。
そんな二人のバケツリスト
つまり「死ぬ」までにやりたい事が続編で達成されたらいいな…