ソニック・ザ・ムービー : 映画評論・批評
2020年6月16日更新
2020年6月26日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー
爽快感抜群の爆速アドベンチャー
速さ、というのはそれだけで魅力である。小学校低学年までは足が速いだけでクラスのヒーローになれるし、オリンピックの花形種目は100メートル走だ。「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」というゲームは、そのスピードという単純な魅力を極限まで追求した画期的なゲームだった。
だが、ソニックというキャラクターの魅力はスピードだけではない。イカした赤いスニーカーを履く青いハリネズミは、ちょっと生意気で、かわいくて、クール。本作は、そんなオリジナルの魅力を見事に映画に脚色してみせた。
映画のソニックは上記のような特徴に、さみしがり屋という要素が加わった。異星人として10年孤独に暮らして自慢の速度で一人遊びはお手の物。でも、いたずら好きで、人懐っこい。そんなところがどうにも庇護欲をそそられる。ジェームズ・マースデン演じるトムが大迷惑を被りながらも世話を焼いてしまうのも納得だ。
ゲームのシンプルな魅力を活かすために、物語も徹底してシンプルだ。ゲームでもお馴染みのリングを落としてしまい、はるばるモンタナの田舎町からサンフランシスコへ拾いに行く。その道中を、やはりゲームでお馴染みの悪役、エッグマンことドクター・ロボトニックが妨害する。さらには万里の長城やピラミッドなど、世界中を超音速で駆け抜け、全編に爽快感をみなぎらせる。
ロボトニックを演じるジム・キャリーの怪演も素晴らしい。「エース・ベンチュラ」や「マスク」の頃を彷彿とさせるテンションで、よく回る口とグニャグニャと変化する表情筋の柔らかさを生かし、水を得た魚のようにマッドサイエンティストを嬉々として演じている。演技派としても高く評価されるようになったが、彼本来の唯一無二のコメディセンスを本作ではいかんなく発揮している。ソロのダンスシーンは本作で最もエキサイティングなシーンと言っていい。
痛快で爽快。鑑賞中、世の中の暗いニュースを忘れることができた。娯楽映画はこうあってほしい。
(杉本穂高)