「The Beatlesのアレンジの凄さ」イエスタデイ 森のエテコウさんの映画レビュー(感想・評価)
The Beatlesのアレンジの凄さ
日常がかけがえのないオンリーベストワンだという物語は、誰もが納得できる現代のおとぎ話。
どうして、ストーンズの存在は消えず、オアシスやハリー・ポッター、コークやシガレット、そしてビートルズの存在と記憶が、12秒間の世界規模の停電で消えてしまったのか。
そして、なぜビートルズの記憶が消えなかった人物が少なくとも三人残ったのか。
それらの説明は一切無いのだから、勝手に思いを巡らせるばかりだ。
きっと、世の中の時空が電気的なアクシデントでねじ曲がり、主人公のように神に選ばれ試練を経たものだけが、時空の歪みに落ちるのを免れ、もうひとつの世界で新たな使命を担ったのに違いない。
そう考えるとビートルズの音楽も、新たな息吹きを得て、新世界に大きな音楽的影響を与え続けるのだろう。
それがフリー(無料)でというところが、なんとも現代的である。
さて、既述の通り、日常を讃歌する物語に異論はなく、そこそこ共感して楽しめたが、もろ手を挙げて喝采できないのは、肝心のビートルズの楽曲の扱われ方が、一見主人公のように見えて、実は物語の引き立て役のように感じてしまったからだと思うのだ。
ビートルズの音楽をカセットテープがすり切れるほど聴いた第二世代としては、劇中に流れる楽曲のアレンジがさらっとし過ぎて、どうにもしっくりこない。
ビートルズの音楽の真髄は、カセットで聴いても耳と心が持っていかれるような、あの凄まじい情熱のこもったアレンジにあったことを、逆に認識させてもらった、反面教師のようなビートルズ映画であった。