「この監督は「見た目は同じだけど中身は違う」が好き」アス しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
この監督は「見た目は同じだけど中身は違う」が好き
ジョーダン・ピール監督が、前作「ゲットアウト」と同様、「外見は同じなのに、中身が違う人間は怖い」をモチーフに選んだ本作。
ジャンルとしては侵略ものとなるんだろう。
物語を引っ張るのは「彼らは何者で、なぜ人を襲うのか?」という謎なのだが、提示されている伏線が主人公の幼い頃の体験だけで、いまひとつ引っ張り切れていない。
それと、ホラーって、“彼らは太陽に弱い”とか“物理攻撃が効かない”などの「ルール」を観客と共有することが大事だと思うのだけれど、これも示されないので、主人公たちの行動が行き当たりばったりにしか見えず、演出が「ビックリ箱」でしかない。
ラストのどんでん返しが、なかなか唸らせるので星+0.5するけど。
母親は、いつか“彼女”が自分の立場を脅かしにくることを分かっていた。
その恨みと怒りの深さをよく分かっていたし、元が人間だから知恵を絞り、計画的な策を練ってくることも予測していた。
ゆえに彼女は彼らを殺すのに躊躇はなかったし、ラストは地下まで深追いした。
ただ、他の点でツッコミどころ満載。
赤いつなぎを着ているのはマイケル・ジャクソンのスリラーからだとしても。
なぜ植木バサミ?(「バーニング」のバンボロ?)
なぜ家の前でしばらく立っていた?
タイラー家を襲った“彼ら”のお父さんはなぜ歩くのが遅い?(ほかの個体は運動能力が高いのに)
なぜ“彼ら”は生きたウサギを食べる?
全人類と同じ数だけ“彼ら”がいる?(すごい数なんだけど…)
同じ外見の人間と同じ動作をするときと、そうではないときがあるのはなぜ?
前作には、人種差別に対する深い洞察があった。本作もまた、一種の階級闘争がテーマだとは言えなくはないが、そのゴールが「人間の鎖」となるのは疑問。
練り上げ不足で作ってしまった感があり、残念。