「地獄の中でも輝くエル・ファニング」ガルヴェストン つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
地獄の中でも輝くエル・ファニング
終盤の長回しや、エル・ファニングのラストショットに、監督誰だっけ?ちょっと好みかもとか考えて調べたらメラニー・ロランでした。
そうでした。知ってたはずなのに完全に忘れてました。だってメラニー・ロランがこんな才能を発揮するとは微塵も考えなかったもの。
フランスから撮影監督を連れてきたらしく、それが作品の質感にもろに出ていて良かった。雰囲気はフランス映画、内容はアメリカの暗黒映画という奇跡的なエマルジョン。
自分に死が迫っていると思ったロイは、ほんの気まぐれでロッキーと名乗る少女を助ける。
彼女の境遇を聞き、次第に助けようと考えて始める。
もう自分は人生をやり直せない。せめて今までの人生が全くの無価値ではないと思えるように、ロッキーを救おうとする。
地獄は本当にあるの看板が示すように、ロイとロッキーの現状は地獄だ。
地獄の中にあっても救える魂はあると信じて、ロイはロッキーを上の世界へ押し上げようとし、ロッキーはティファニーを押し上げようとした。
そして、ズブズブと沈んでいくしかない中でも二人はわずかな幸せを見出だそうと足掻くが、地獄の亡者は二人を掴んで離さない。
主演のベン・フォスターは最高の演技を見せたと思う。
エル・ファニングもまた、殺伐とした地獄の中で、笑っていても泣いていても凄まじい輝きを見せた。
演技とノワールとフレンチのアンサンブルは極上の映画体験を生み出したと思う。
20年後、事情を知りたいとティファニーが訪ねてくる。
ロッキーが守ろうとした娘が何も知らないというのは、ロイがロッキーの代わりにティファニーを守れた、地獄から上の世界に押し上げることができた事を意味する。
話を聞いたら嵐(地獄)がくる前に町を出なさい。恋人がいて真っ当な仕事をしている地獄ではない世界に住むティファニーを守り続けるために。
もう地獄ではない世界にいるであろうロッキーと、嵐の中、海辺に出ていくロイのラストシーンは、墓前に報告にいく姿のようだった。
ティファニーは守れたぞ。君の娘は美しい世界で生きているぞと。
そして、ロイはロッキーの元へは行かず、ティファニーを希望に人生をやり直し地獄から這い上がれる事を願う。