ガルヴェストンのレビュー・感想・評価
全52件中、1~20件目を表示
仏の才女メラニー・ロランが米犯罪映画の定型から抽出した妙味
第二次大戦中に製作された米犯罪映画を「フィルム・ノワール」とカテゴライズしたのは仏映画業界の人だった。フランス人は米映画への独特な批評眼を持つのか――メラニー・ロランが監督として米脚本家・作家ニック・ピゾラットの原作を映画化した本作を観て、そんなことを思う。
非情な裏社会、乾いた暴力、絶望的な逃避行、破滅の予感…。アメリカンニューシネマを経た米犯罪映画の定型をなぞる話だが、人物描写、ビーチの場面での印象的な映像、余韻を残すラストなど、フランス人でしかも女性の監督であるロランが、敢えて起用した製作者たちの期待に応え特別な味を引き出した。ピゾラットの脚本がロランによる大幅な改稿のため偽名の名義になったが、彼女が自分を貫く姿勢も格好良い。
エル・ファニングとベン・フォスターもかつてないほど役作りに集中できたのでは。2人の演技をいつまでも見ていたいと思わせる…それが叶わないとわかっていても。
女優でもあるロラン監督が二人の俳優の旨味を誠心誠意、引き出した一作
驚くほどシンプルだし、捻りのない映画だ。最後に訪れる運命もある程度は予測がつく。観る人によっては凡作として切り捨てる可能性も大だ。だが、このありふれた設定や土壌が、あらゆる無駄なものをそぎ落とし、二人の俳優としての魅力をかつてないほど香り立たせることに繋がった。
ベン・フォスターとエル・ファニング。二人とも普段の出演作ではあまり喋らず、空気感に多くを託するタイプにも思えるが、さすが女優メラニー・ロランがメガホンを取っているだけあり、彼らの俳優としての旨味を、同業者の彼女が彼女にしかなしえないやり方で巧みに焙煎し、抽出している。
また、ロランにこのようなハードボイルドや長回しのアクションが撮れるとは恐れ入った。全てが成功しているわけではないし、本作の製作規模もそれほど大きいわけではないが、しかしその中で彼女なりの精一杯の「答え」が導き出されている。しっとりとしたラストの余韻もたまらない。
夢が叶ったのでそれをお知らせしたく、またお目にかかりたいと。今度はずっと一緒にいて頂ければと。
宣材にあった、二人の想いを表した言葉。
キレイに逆転したんだなあ、と思っていた。
いやしかし、二人の真ん中に娘がいた。
なんだ、二人の想いは叶ったんじゃないか。
強そうだけど実はどうしようもないオッサンと
ヒトのために生きた可愛い女の子の話。
束の間の夢から、オッサンはどうしても覚めきれずに
また可愛い女の子に逢いに行きたくなったとさ。
大嵐の日に、オッサンの心は
綺麗に晴れ渡っていたんだろうな。
やっぱり、どうしようもなく美しい。
【裏社会】哀しいお話( ノД`)
<<あらすじ>>
原作はニック・ピゾラットのハードボイルド小説『逃亡のガルヴェストン』。
死期を悟った殺し屋と娼婦に身を落とした若い家出娘が繰り広げる逃避行劇。
■伏線あり
冒頭の窓から見える嵐とか、最初にちょこっと出演してる何も思わなかった女性が最後に出てきます。正直この女性誰??って思うくらい忘れてたよww
■お医者さんの話は最後まで聞きましょう
勝手に肺癌と思い込んで現実逃避する主人公ロイ。
そのせいで人生投げやりモードに入ってた気がしますw
■ロッキーが不憫でならない
19歳の少女ロッキー。彼女の人生が壮絶すぎました。
義父に暴行されてできた子がティファニーちゃんだとカミングアウトします。
そういう事で撃ったのか・・と納得。
■泣いた・・・
個人的には追手に捕まる前の最後のデートが、
2人とも本当に楽しそうで泣けました。
なんというかそこだけ希望が見えたんですよね。
人生やり直せるという会話も過去にあったからね。
高卒認定受けて、希望の未来が広がっていると思ったのよね。
だからラストは救われないし、絶望しかなかった。残念です。
■結局ボスには絶対服従なのね
結局、刑務所行きになったロイに面会にきた元ボスの顧問弁護士。
告発したらティファニーちゃんを守ってくれてるモーテルの人たちにも危害が加える恐れがあるという事で黙って20年間刑務所で過ごすことになりました。
このボスってそんなに絶大な力持ってるのかね??私だったら警察の偉い人に話して守るべき人を守ってもらう約束をして告発するけどね。
■映画【レオン】を彷彿させる
こういうプラトニックな愛がLEONを彷彿させますね。
■ラストは・・
ティファニーちゃんが幸せだと確信したので、安心しての行動かな?
そのラストしかなかったのかな?・・と腑に落ちないとこはあるけど
最後はティファニーちゃんという希望で締めくくってくれて、ありがとう。
派手なアクションもないし、暗い内容のストーリーだし
ラブロマンスもないし、絶望的な内容の映画ですけど
個人的には惹かれましたね。
悪くないと思います。
地獄の中でも輝くエル・ファニング
終盤の長回しや、エル・ファニングのラストショットに、監督誰だっけ?ちょっと好みかもとか考えて調べたらメラニー・ロランでした。
そうでした。知ってたはずなのに完全に忘れてました。だってメラニー・ロランがこんな才能を発揮するとは微塵も考えなかったもの。
フランスから撮影監督を連れてきたらしく、それが作品の質感にもろに出ていて良かった。雰囲気はフランス映画、内容はアメリカの暗黒映画という奇跡的なエマルジョン。
自分に死が迫っていると思ったロイは、ほんの気まぐれでロッキーと名乗る少女を助ける。
彼女の境遇を聞き、次第に助けようと考えて始める。
もう自分は人生をやり直せない。せめて今までの人生が全くの無価値ではないと思えるように、ロッキーを救おうとする。
地獄は本当にあるの看板が示すように、ロイとロッキーの現状は地獄だ。
地獄の中にあっても救える魂はあると信じて、ロイはロッキーを上の世界へ押し上げようとし、ロッキーはティファニーを押し上げようとした。
そして、ズブズブと沈んでいくしかない中でも二人はわずかな幸せを見出だそうと足掻くが、地獄の亡者は二人を掴んで離さない。
主演のベン・フォスターは最高の演技を見せたと思う。
エル・ファニングもまた、殺伐とした地獄の中で、笑っていても泣いていても凄まじい輝きを見せた。
演技とノワールとフレンチのアンサンブルは極上の映画体験を生み出したと思う。
20年後、事情を知りたいとティファニーが訪ねてくる。
ロッキーが守ろうとした娘が何も知らないというのは、ロイがロッキーの代わりにティファニーを守れた、地獄から上の世界に押し上げることができた事を意味する。
話を聞いたら嵐(地獄)がくる前に町を出なさい。恋人がいて真っ当な仕事をしている地獄ではない世界に住むティファニーを守り続けるために。
もう地獄ではない世界にいるであろうロッキーと、嵐の中、海辺に出ていくロイのラストシーンは、墓前に報告にいく姿のようだった。
ティファニーは守れたぞ。君の娘は美しい世界で生きているぞと。
そして、ロイはロッキーの元へは行かず、ティファニーを希望に人生をやり直し地獄から這い上がれる事を願う。
このクソみたいな人生
1988年、ニューオリンズ。裏社会で生きてきたロイは、診療所で白いモヤのかかった肺のレントゲン写真を見せられる。咳ばかりしてるし、血痰もある。完全に肺ガンだと思い込んだロイは自暴自棄になり、いつもの仕事を頼まれるが、そこで何者かに襲われ、反撃して相手を殺してしまう。そして拘束された少女ロッキーと出会う。
テキサス州オレンジ郡から来たというロッキーは金は一銭も持たない。とりあえず逃げることを選択した二人だったが、彼女は実家に立ち寄って衣服を持ってくると言う。そこで銃声。ロッキーは3歳の少女を一緒に連れてきて、仕方なく懐かしのガルヴェストンのモーテルまでやって来る。
ロイもロッキーも人を殺して逃亡しているという悪の共通項によって縛られている。しかしロッキーはまだ19歳。身を売って生計を立てると言うが、「人生は何度もやり直せる」と諭す40歳のロイ。3歳のティファニーは妹だと言ってるが、ロイにとってはどうでもいいことだ。ただ、二人に海を見せてやりたい。それだけの関係・・・
途中、腐った野郎に強盗に誘われるが、最終的には殺してしまったロイ。クソみたいな人生だったけど、ロッキーだけには幸せになってもらいたいと願い、雇い主を脅迫しようと思い立ったが・・・という展開だ。
厭世的なロイと、彼についていこうとする少女。そして幼い子を大切にするモーテルの優しい住人たち。彼は人生に何かを残せるのか?と、最悪の展開を見せながら、その後の人生がまた渋い。
生かされてしまった20年。このまま贖罪だけで終わるのかと思いきや、あの時の3歳のティファニーが大人になって彼のもとを訪ねてくる。もう涙なしでは見られない真実。そういえば、アメリカ南部であってもかなり気候の違う都市が描かれ、彼らの心をそのまま表しているかのようだった。残りの人生を価値あるものにできるのか・・・自分に置き換えて見てしまい、どこかで善行を積まねばと、ちょっとだけ希望を与えてくれる作品でした。
逃避行のロードムービーを、何とも心地良く仕上げている。
良い意味でシンプル、大きな伏線や起承転結はほぼ無い。''追われる''というより''逃げる''事にフォーカスを当てた視点が新鮮で、追手はほとんど登場しない。
その進展のみで''緩急''を表現しており、特筆すべきは逃亡シーンが''緩''、日常シーンが''急''というのが面白い。
ありがちな銃撃戦やカーチェイス、、、はほとんど無い。身を隠しつつ新しい生活を模索し、日常という小さな幸せを渇望する。その人間関係とギクシャクした愛情、何気ない日常の脚本が絶妙で、単純な内容を心地良いサスペンスにして90分に纏めている。
『人生を悲観してしまう』とはこういう事なのだろうと思いながら、主人公ロイ役ベン・フォスターに自分を重ねてしまった。
そして酷い境遇のヒロイン、ロッキーに出逢うのだが、このエル・ファニングの物凄いナチュラルな迫真の演技に魅了された。
明らかにバッドエンドを想像してしまうストーリー展開にも拘らず、ラストのロイ、ロッキーの描写に心を癒された。いや、もしかしたら心を救われたのかも知れない。
最後の衝撃の告白を是非。
タイトルなし(ネタバレ)
どこかで見たことあるようなありがちな設定。
けど内容はアクションやカーチェイスも無ければまさかのヒロイン呆気なく死亡。
そこは普通は無事に助けだす場面じゃないのか。
不治の病かと思いきや早とちりだったなんてある意味衝撃の結末だった。
ハッピーエンドではないはずなのに何故か心温まるような少しだけ光が見えるような、そんな映画。
HELL IS REAL
地味ですが・・・とても丁寧に作られた作品だと思います。
病気に冒された殺し屋が、囚われの少女と逃避行を繰り広げる物語。
ありがちな設定で、余り興味を惹かれませんでしが・・・結果として、鑑賞して良かったと思える作品でした。
少女の描き方が秀逸です。
不幸な生い立ちの少女。突然現れた庇護者に頼り、見捨てられることに恐怖します。彼女の悲鳴にも似た叫びと、過呼吸のような息遣いが耳に残り、胸が押しつぶされそうになります。
ラストへの展開は賛否両論だと思いますが、少女の不幸をリアルに描いたこの映画なら「あり」なんでしょうね。その展開だから導き出せた薄日差すような終わり方は、私好みではありました。
極めて地味ですし鑑賞者を選ぶ作品だと思いますので、最高評価は控えましたが、それでも評点4は過大ではないと思える、そんな作品です。
Hell is real
期待以上のいい映画だった
現実から逃避行して、人間味を取り戻す
内容盛り沢山で書きたい事は山ほどありますが
このお話しは自分勝手で、仕事も人を殺したりするようなダメな男が人間味と愛を取り戻すお話しだと思います。
ロイがロッキーを探しに車で町をグルグルさまようシーンや、ティファニーがロイのお尻をペシペシするシーンなど、そこには組織に属してた自分勝手な男というより、家族思いのお父さんそのものです。
ロッキーもロイを頼りきっていて、ロイがいなくなると絶望を感じてしまって以前の生活に逆戻り。
でもロイが戻ってくると、自分を取り戻します。
現実は地獄のようですが、ロイ、ロッキー、ティファニーの3人でいるときには人間味を愛を取り戻す。
映像もとても綺麗ですし、ストーリーの展開も素晴らしく、そしてベンフォスターとエルファニングの演技が素晴らしいです。
良作です。
ぜひ見て欲しい作品です。
全52件中、1~20件目を表示