「ゆっくりとページをめくる様に始まり終わる物語」マイ・ブックショップ bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
ゆっくりとページをめくる様に始まり終わる物語
好きな映画。良いとか悪いとか言う以前に大好きなヤツでした。
まずは画の話。予告編を見た時から、色使いは良いなぁと思っていましたが、冒頭のシーンで「線」の引き方(スクリーン上の)の美しさに目を奪われました。海岸の石垣、背後の林の上縁が作るライン、歩く人物の軌跡。左右に流れるラインが平行せず、角度を持たせて配置した上で色を塗る。そこから先は画面上に描かれる線と色を眺めるだけでウットリで。イヤぁ、めちゃくちゃ良い。
色も好き。煉瓦色に緑の屋根。フローレンスとクリスティンの衣装。海と海岸線の四季。特に、ダークシーグレーの海と暗色のフローレンス達の服装での心象表現とか、好き。書棚の宇宙感は言わずもがな。
次に台詞。話し言葉と言うより、文章を読んでる様な、ブランディッシュの語り言葉の美しさに惚れる。彼に取っては全てがSmall thingなのか。世捨て人の口から出て来るこの言葉は、一番大切なモノを指す時にも使われました。「美徳とは勇気」。
関わって来た者全員が、悪意の敵。歯向かう事もせず立ち去るだけのフローレンスと、少女の破壊工作。美徳が勇気なら、悪徳は悪意への非反抗。これヌーベルバーグっぽくないか、と思っているうちに時は流れて、マイ・ブックショップの種明かし。
本を破り捨てて火にくべていたブランディッシュに届けられるのが華氏451で、ロリータの箱を開けるのがブロンドの少女と言う、象徴性の分かりやすさはサービス。
エミリー・モーティマーが愛らしくて良かった。年齢には触れないけれど。
第二次大戦を空軍で戦ったと言うブランディッシュ。誇り高い戦士の最期が自宅前の発作ってのが、俺的には哀しかったりして。
東京でも劇場によって若干ズレることはありますが、この作品は結構ばらついているんですね。
風景がみられるシーンも若干はありますが、基本室内でジメッ、モサッ、マッタリですので過度な期待は禁物ですw
マッタリ作品も嫌いじゃないんですけどね…個人的にサスペンスフルな展開になっていくところに期待値が高まり物足りなく感じてしまいました。
最近だと「希望の灯り」とかはマッタリでも好きな部類ですね。