「大人の陰険ないじめ映画」マイ・ブックショップ 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
大人の陰険ないじめ映画
イギリスの田舎町。のどかな景色の中に、まるで少女がそのまま大人になったような可憐な女性が書店を開かんとする。ジュリエット・ビノシュの「ショコラ」を書店に置き換えたような物語かしら?それは素敵な大人のためのお伽噺かしら?・・・と思いきや、いやはや大人の汚いところが描かれまくった胸糞悪いシビアな映画でした。うっかりフィールグッド・ムービーのつもりで観に来た人は愕然とするのではないか?もう本当「不快」とさえ言ってもいいかもしれない。
何しろ、大人の陰険ないじめが酷いこと。政治とかコネとかを利用した悪質ないじめ。田舎の小さな村の閉鎖的な文化と価値観の怖さが剥き出しになったような感じ。それに対し、ヒロインが立ち向かって闘っていくという物語でもなく、ヒロインはとにかく耐えて我慢しているだけ。彼女自身何も行動を起こさないので、苦境に立ち向かっているだとか、困難と闘っていると思わせてくれない。だから余計にガマート夫人のやっていることがただのいじめにしか見えてこない。結局、ヒロインはどんどん追い詰められて行き場を亡くしていじめに屈して逃げるしかできなくなる。でもそりゃそうでしょうよ、あなた何もしないんですもの。あぁすっきりしない。
年齢を重ねても可憐さを失わない少女のようなエミリー・モーティマーと、ますます存在感を増すビル・ナイに加え、絢爛なドレスをまとった姿が絵画のように美しいパトリシア・クラークソンという、俗にいう「俺得」なキャスティングだったというのに、この内容は残念。
とにかく美しい街並みと美術と衣装と建築を眺めることで後味の悪さを紛らわせました。でも本当、映像はとても綺麗。セットも可愛くてお洒落だし、モーティマーが着ている衣装も本当に素敵だった。