「リアルとフィクション、信念と葛藤、賛と否の間で」新聞記者 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
リアルとフィクション、信念と葛藤、賛と否の間で
日本でもこれほど論争を起こすダークで衝撃の社会派サスペンスを作った事にまず感心。
もしも、日本の裏で、本当にこんな事があったら…。
日本人の父と韓国人の母の娘である吉岡は、記者だった亡き父と同じ世界に入り、記者として信念を貫いていた。
ある日、匿名の情報が。それは、大学新設に関する極秘文書。
そこに政府の不審な思惑を感じた吉岡は調査を始めるが…。
情報をリークしたと思われる内閣府の官僚が自殺。
かつての部下・杉原は死の直前に会っており、激しく動揺。今自分が在籍している組織と何かしら関与があるのでは、と。
と言うのも、杉原が在籍しているのが…、
内閣情報調査室、通称“内調”。杉原はそこの若きエリート官僚。
内閣情報調査室とは、内閣の重要政策に関する情報を収集・分析し、内閣に報告する、官邸直属の情報機関。
知ってるようで知らなかった、日本にもこんな極秘機関がある事に驚きだが、さらに驚きなのは、その実態。先の概要はあくまで表向き。実際は…、
政府の障害になるような情報を歪曲し、時には捏造・改ざん。
劇中でも、レイプ被害を受け、現政権を訴える女性の立場が不利になるような証拠をでっち上げようとする。
本作はあくまでフィクション。
が、ほとんど知られていない内調という極秘機関。
ひょっとしたら…と、何度も思ってしまう。
杉原は国民を騙すような今の職務に激しい疑問を抱えていた。
自殺した官僚の身辺を洗う内、吉岡は杉原と接触。協力を乞う。
吉岡は記者として真実を明らかに。
杉原は正義と職務の間で揺れ動き…。妻と生まれたばかりの娘をこの国に託していいのか…?
各々の信念と、葛藤…。
疑惑の大学新設と官僚の自殺。しかしそれは、氷山の一角に過ぎなかった。
やがて二人は、衝撃どころではない政府の闇に辿り着く事になる…!
小難しい用語などあるものの、作品的にはスリリングで話に面白味あり、最後まで飽きさせない。
明らかに○○学園問題を下敷きにした劇中の大学新設問題、女性軽視など、よくぞここまで近年国内のニュースを賑わせた政府絡みの問題に斬り込んだものだ。
それらは評価されるべき点だが…、話が進むにつれ、とんでもない展開に。
主人公二人が辿り着いた政府のある闇。大学新設の本当の目的。それは…。
敢えて伏せるが、それは本当に衝撃的ではあるが、余りにも衝撃的過ぎて、突飛し過ぎ…。
幾ら何でも、現在の日本でそんな事は…。(本当は本当は分からないが…)
リアルなような、フィクションのような…。
例えばこれが、『相棒』などの題材だったら、単にフィクションのサスペンス・エンターテイメントだろう。
しかし何故か引っ掛かるのは、実際に記者である望月衣塑子の原案。
よく女史を知らぬので調べてみたら、現政権問題をとことん追及する敏腕記者。
彼女のジャーナリスト魂は称賛モノだが、彼女の現政権への憎々しさ、トゲトゲしいメッセージの政治色が良くも悪くも反映された感が。
主演二人は熱演。
が、吉岡の役を日本人と韓国人のハーフにし、韓国女優のシム・ウンギョンが演じる必要性はあったのだろうか…?
松坂桃李はもはや安定の仕事ぶりだが、内調の職務に疑問を感じ、正義に目覚めるという設定が、ちょっと作られた感が。
その他キャストはシリアスなアンサンブルを魅せるが、松坂クンの妻役の本田翼だけ何かファンタジー…。
こういうジャーナリズム映画は、主人公たちが圧力に屈せず、最後は追い掛けた真相が晴れて世に公表され、正義が果たされる。
本作も一応そうではあるが、後味悪い終幕。
この国で、正義が貫かれ、権力に阻まれずに立ち向かえる事は、不可能なのか…?
本作のレビューは賛否両論。中には、作品と関係ない私的な政治意見や悪質極まりないレビューも。(今年本サイトでは、そんなレビューの作品が異常に多かった気がする)
そんなのは例外として、見た人それぞれ作品への感想や意見を闘わせる賛否両論レビューは寧ろ歓迎!
甘っちょろい作品や低レベルの作品氾濫する昨今の日本映画界に於いて、色んな意味で問い掛ける社会派映画を見た!…と思わせてくれる。
リアルとフィクション、信念と葛藤、賛と否の間で。
みかずきです。
そうですね。
映画は感性で観るものなので、作品評価が賛否両論になるのは当然だと思いますが、賛否が異なっていても、主張に説得力があるレビューには納得できます。
さて、本作ですが、
杉原の姿を観ていると、学生から社会人になった時、己の正義と企業という組織の正義の差に戸惑い葛藤した記憶が蘇ってきました。時が経って、いつの間にか眠ってしまった己の正義が目覚めた気がしました。
ラストシーンは確かにスッキリしませんでした。時の権力に抗って真実を究明する難しさを感じました。同時に、継続は力なりという言葉が頭を過りました。諦めずに粘り強く真実を究明する行動を継続していけば、必ず道が開ける時は来ると感じました。
本作のような作品を、もっと沢山作って、己の正義と組織の正義について考える機会を作って欲しいです。
では、また共感作で交流しましょう。
-以上-
確かにこの手の映画を見ると政治思想論になりがちですよね。
確かに映画には音楽同様メッセージ性がありますが、見方は千差万別。
私は楽しく鑑賞出来たって感じです。
そうそう✨
賛否両論レビューでいいと思うんです。1番タチが悪いのが嘘が混じり誘導する感想など。お前(アカウント複数取り)何人いるんだ?とか、おまえさんホントその歳かい?とか。レビュー後のコメントやり取りで大体わかりますし。捨て垢が多くなるのが残念でございます。