「鑑賞記録」新聞記者 ハッピー・ホーガンさんの映画レビュー(感想・評価)
鑑賞記録
7月21日鑑賞。公開から約1ヶ月、しかも早朝回にも関わらず、そこそこの入り。
◯主演2人の熱演
我らが殿、松坂桃李は見てるだけで幸せになれるイケメンに違いないのだけれども、今回みたいな決してパーフェクトではない、人間臭い役が本当に上手いと思う(『彼女がその名を知らない鳥たち』の熱演も良かった)。無力さに涙し、一念発起して頑張るけど…スカッとした結末にならないのは、それが「現実味」なのかしら。ラスト付近で見せる「死んだ魚の目」は、この令和になってNo. 1の魂抜けっぷりでした。
『サニー永遠の仲間たち』で(自分にとって)お馴染みのシム・ウンギョンも、片言の日本語ながら表情、仕草など一級品の芝居を見せてくれた。泣きのシーンとか、凄すぎて笑ってしまいそうになりましたもの。
・我々観客が拾うべきもの
現代日本を生きる我々にとって記憶に新しい政治トピックがてんこ盛り状態の物語世界。原作者の望月さんとか加計問題でお馴染みの前川さんもカメオ出演してきて現実と虚構の世界の境界がハッキリとしない状態に。これに関しては、ごめんなさい、ノイズに感じてしまいました。アオイホノオの最終話に島本先生が出るのとは訳が違うと思うのです。明確な思想・メッセージを含む物語であるならば、せめて望月さんだけでも一歩引いていてほしかった…と思うのは、「出る杭は打たれる」的日本人の悪習でしょうか。僕たちは杉原と吉岡の葛藤で十分考えさせられてますから!
苦言めいたことを言ってしまいましたが、映画としての見せ所、面白さはなかなかだったと思います。新聞社と内調でのカメラワークと照明による空気感の違いの演出(新聞社はちょっと酔いそうになったけど)、娘を抱く姿勢と暖かな照明によって演出された本田翼の聖母感、緊張感を高める無音。テレビではできない、映画だからこそできる演出であったと思います。
圧力に屈することなく、事実を世に広めた吉岡。かたや、大義を果たそうとするも心折られた杉原。妻と娘とのささやかな幸せを、先輩の果たせなかった無念と天秤にかけてしまったのかなと思います。そしてそれを手放すことはできなかった。これを頭ごなしに批判できる人はいるのでしょうか。
巨大な力が小さな幸せを人質に取るような卑劣な行いを憎むべきであり、そのような不条理に対して、1人ではなく、力を合わせて向かっていく仲間が必要なのだと感じました。