「胸を張って生きられるか?」新聞記者 taroさんの映画レビュー(感想・評価)
胸を張って生きられるか?
社会に積極的にコミットしようという意欲的な作品です。
国家権力と闘う映画は、韓国の場合だと〝この国を良くしたい〟〝権力を私物化する奴は許さん〟といった、ナショナリズムやヒロイズムが主人公のモチべーションとなっている事が多いように思いますが、この映画では〝娘にとって胸を張れる父でいられるか?〟〝父の無念を晴らせるのか?〟といった家族との絆が主人公のモチベーションとなっています。それだけに悲壮感が漂い爽快感は皆無ですし、作品全体も重苦しい雰囲気で終始しています。
それは、娯楽作品としては欠点ですが、日本社会の現状と真摯に向き合った結果だと思います。ナショナリズムが国家権力に独占され、政権を批判する者は疎まれて孤立してしまう現状では、権力との闘いは私的な人間関係によってしか支えられないという事なのでしょうか。
観る者に問い掛けるような結末は素晴らしかったです。
いつか、国家権力と闘う主人公が、悲壮感ばかりではなく、明るくカラッとした心性をも備えた人物として造形され、ハッピーエンドで終わる映画が創られる日が来る事を願います。
コメントする