劇場公開日 2019年6月28日

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「この映画を今評価できるのか」新聞記者 andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5この映画を今評価できるのか

2019年7月8日
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鑑賞方法:映画館

評価しにくい映画だ。
別に政権批判がどうこうとかそれ以前に、フィクションと明らかに事実から取った題材が混在しているからだ。
単純にこれを観て今の日本は恐ろしいとも言えないし、逆にこんなの嘘だ!とも言えないのだ。巧妙な作りだ。
完全なフィクションとしてみた場合、善悪があまりに綺麗に二極化していて、微妙。悪の書き方が薄すぎるのだ(新聞記者の話だからしかたないといえばそうだが)。じゃあノンフィクションとしてみようとすると、やはり内調の描き方が疑問に思える...。分からないから。報道で分かる事とその裏側を映画で表現することは別なのに、事象が現在進行形過ぎるせいで疑り深い私には迫ってこない。
あと、演出の意図が分かり易過ぎる。例えば、明らかに内調のシーンが暗いでしょう。あれなんてものすごく巧妙だよね。田中哲司にあまりに型通りの役を割り振っている点(人間臭さが全くないのでフィクション性が高い)、逆にあれだけの表現性を持つシム・ウンギョンを活かしきれていない点はどうかなあと思った。日本人は割と演技の善し悪しを台詞回しで判断していることは分かっていたと思うのだが...。
この映画を今製作して公開した勇気、が讃えられているように思う。しかし、これくらいの映画公開できないなら逆にもう日本終わりなのでは?とも思う。それが勇気になる時代に生きていたくはない。
むしろ私はこの映画を今でなく、数年後に検証して振り返るものとして捉えるべきではないかと思う。「誰よりも自分を信じ、疑え」とはそういうことなのではないだろうか。

andhyphen