「我々は青い電気体」人間失格 太宰治と3人の女たち hanさんの映画レビュー(感想・評価)
我々は青い電気体
沢尻エリカさんが捕まったと聞き、しばらくスクリーンで観れなくなると思い、慌てて観に行った。平日夜だが満席だった。観終えての感想は、やはり彼女は唯一無二の素晴らしい役者さんであった。
私は人を裁いたり罰したりできる立場の人間ではないので罪や罰など何も言えない。ただ彼女の役者としての今を、この先数年にわたって観れなくなるのは残念。何というか、アンビバレンツな形で保つしかなかったかもしれないある種独特の魂の穢れのなさのような、放っている光を、どんな形であれ映像として何かしら録り続けて残せないものかと思ってしまう。
映画自体は、太宰と彼を囲む女性の青い火花を散らすような生き様を感じるもの。2時間の映画にするにあたり監督が何にフォーカスしたかったかがわかりやすく、それが嫌らしく前面に出過ぎることもなく、私は過不足感じない演出だった。
女には、というかわたしには、「壊れなさい」と言い放つ妻の葛藤の先の強さと、男の才能への圧倒的信頼、欲しいものは全て与えてもらったと笑顔で言える、子を産んだ愛人の満たされ方、最期に死という形で一緒であろうと苦しみ愛を求める女の切迫、全てわかるわかる、というか、それぞれがひとりの女の中にあり、出会う男によって引きずり出される要素のようにも感じる。
男と女、互いの身体に電流を走らせるように、引きずり出される感情を交歓し合いながら、書くことに血まみれな太宰。
最後、入水を避けられないと悟り、彼女の頭を抱くときの小栗旬の表情が、良かった。
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