劇場公開日 2019年9月13日

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「ただただ残念」人間失格 太宰治と3人の女たち おでんさんの映画レビュー(感想・評価)

0.5ただただ残念

2019年9月17日
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映画を観る時はなるべく鑑賞前に作品の批評は見ないようにしているけれど、それでも目に入ってしまったときは、先入観を持たないようにと努めて鑑賞しているつもりです。今作に関しても同様で、「低評価が比較的多いな」とは思いつつも、それなりに期待感を抱きつつ席に着きました。結果的には本編に集中できずに、演出やストーリーの展開に対する不満や疑問がいくつも頭に浮かんでしまう状況で、鑑賞後に後悔の念が残るという非常に残念な時間を過ごしてしまいました。

僕自身、太宰治の作品はウィキペディアで代表作といわれるものぐらいしか読んでいないので特別にファンというわけでもないし、彼の経歴も詳しくは知りません。なので、作中における太宰治の人間性やら関係性やらにケチをつけるつもりは全く無いです。
ただひとつ、仮にも物書きを主人公として1960年代という時代を描くのであれば、もっと台詞に気を遣って欲しかった。あまりに現代的な話し言葉で、口調も軽く、内容もどこか薄っぺらくて文学的要素は著しく少ない。これが、太宰治の半生をテーマにして現代に落とし込んだ完全なフィクションであれば、多少は観続けられたかなとは思いますが…

映像作品という括りにおいては高い評価をされる分野もあるのかもしれません。色彩美や装飾に対するこだわりは、嫌というほど感じられました。女性陣の衣装や背景の色彩はそれなりに良かった。あとはひたすら出てくる花。花。花。しかし"映画"とは、伝えたいメッセージをあらゆる演出によって観ている人に届けるものだと思うので、そういう面で評価され得るところは少ないのかなと。物語の展開や音楽の使い方など、わざと気を散らそうとしてるのかと思うくらい粗が多い。
蜷川実花監督の前作の『Diner』でも同じような感想を持ってしまったので、個人的に監督との相性が悪いのでしょうね。ただやはり、蜷川幸雄さんを父に持つだけあって実力派の役者さんが数多く出演されているので、どうしても微々たる期待が抑えきれず、映画館に足を運んでしまいます。それ故に毎回思うのが、「ただただ残念」ということです。

綺麗な映像と豪華な出演陣、そして映画の大まかなあらすじ。これらが全て楽しめる予告編を観た直後が作品におけるピークですね。

おでん