「画が綺麗なだけの作品と思ったら違った」人間失格 太宰治と3人の女たち Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
画が綺麗なだけの作品と思ったら違った
監督が蜷川実花だから、また画が綺麗なだけの映画だと思ったの。そしたら違った。
前半は画が綺麗なだけなの。でも本当に綺麗だから「画とBGMだけで観たい!」とか「ビジュアルブック出してくれ買うから!」と思ってたの。
でも小栗旬の才能あるダメ人間ブリがはまってて上手いし、ちょっと面白いかなと思った辺りで『書いて下さい。《人間失格》』がくるのね。
ここが全然駄目で冷めた。ここまでの話から浮いてんだよね。突然くる感じで「作り手はこのシーンだけは絶対にやりたかったから、話の流れ無視して入れたんだな」って感じなの。
そして、そうまでして入れたシーンで、気持ちが高ぶっていくところが祭囃子なのね。いまどき、テンション上がったーって示すのに、祭囃子はなあって、ちょっとヒイた。心象風景描写で紅い風車が一斉に回るのもあったけど、ここもヒイた。
そのシーンが終わったら、通常モードに戻ってね、ここからは面白いの。
三人の女が太宰の【才能】とどう付き合うかって話になんのね。
蜷川実花は写真家である種の天才だから【才能】のことは良く解るんだろうと思ったね。と、そこまで考えて、映画製作に関わってる人は、【才能】を日常的に目にしてるだろうから、スタッフもみんな良く解るんだ。俳優も。
三人三様を観てて「正妻って強いな」って思った。太宰がメチャクチャやったって、結局最後は正妻のとこに戻るもんね。
あと、みんな結局、太宰の【才能】が好きなんであって、太宰が好きなわけじゃないんだろうな。そりゃ太宰も『死んでやる』みたいになっちゃうよね。
全編通じて画は予想通り綺麗。ヴェンダースとためはれる作品じゃないかと思ったもん。
三人の女に赤・青・緑とテーマカラーがあるのも解りやすくていい。一つ一つのカットがいちいち綺麗で、さすがニナミカ、木村伊兵衛賞受賞者と思ったよ。